第104話 嘲笑うものを笑うもの
ダンジョン前までついたので、ヒッポス達と馬車を守るために、メネスを留守番役の指揮者にして、タニアさんとモーラさんにシェリハが残った。
メネスとシェリハには新たに用意した、先輩人形の他に、ごっつ君五体、それにエルミィ男型の人形を交代でうまく入れ替え扱ってもらう。
突入するわたしたちの討ち漏らした魔物などがあまりにも多いようならば、ルエリア領まで撤退するように伝えておいた。
「ヒッポスにガレスとガルフにファルー達ももいるんだから、こっちの心配より王子様を助け出してあげてね」
タニアさんがわたしの頭にポンと手を置いた。魔物は来ないにしても、中へ入って一週間しても戻らないような場合もルエリア領まで向かうことになった。
偵察任務の多いメンバーだ。引き際も心得ちにているし、わたしたちが戻らなければ、誰に何を伝えるべきか自分たちで判断してくれるだろう。
「ヤムゥリさまも残ってもらいたいのよね」
「嫌よ。わたしだって戦えるもの」
わたし同様に、体力はないヤムゥリさまは、ごっつ君に武装や盾を目一杯運ばせて身軽になっていた。動かす魔力は貯め込んだ魔晶石を使う。無駄に要領いいのよね、この人。
ダンジョンは、以前に来た時と様子が変わったようには見えなかった。昔よりも影が色濃くなった感じがするのは、わたしの先入観が錯覚を起こしているのだろう。
先頭を歩くのはティアマトと元王妃様の人形だ。ティアマトには、先輩を攫った際に残した敵の成分を抽出し匂いを覚えさせた。
姿形は見えない。ティアマトが言うには、このダンジョン内は敵の匂いがプンプン漂うらしい。
「おかしいわね。他の冒険者が見当たらない」
違和感の理由はそれだ。田舎ながらも、ここのダンジョンはオーク系やリザード系が出るので、素材売却の収益が多くて人気のダンジョンだ。ノヴェルが一族のために作ったので、いくつか部屋もあって設営しやすい。
ダンジョンが出来た理由を知ったいま、なんでこんな僻地に魔力が集まっているのか納得出来た。
隣領の貴族が歯噛みして悔しがるほど大地の魔力に恵まれて、ダンジョン内も活性化しているものね。
希少なお宝があって危険過ぎるダンジョンよりも、生活必需品になる魔物が出るダンジョンは人気がある。狩人の仕事のようなもので、需要と供給の問題なのだ。
「ダンジョンの力が、吸収されているようだな」
フレミールがダンジョンの魔力の流れを調べて、そうみんなに告げた。訪れる冒険者は初心者から中堅までが圧倒的に多い。さすがに金級銀級冒険者のいる冒険者パーティのような探索者は滅多に来ないと思う。
「きな臭い空気を感じて、ロブルタ行きを躊躇う冒険者が多かったのはあるわよね。それとは別として、行き交う人の少なかったのは偶然ではなかったのね」
残して来たメネスやタニアさん達が心配だ。でもここまで来て今更引き返せない。美声君の伝声で、一応状況は伝えてはいる。王都のダンジョンの時と違って、伝わったのかどうか難しいかもしれない。それを踏まえて、撤退指示は残したのよね。
ヘレナの実家の領主さまは、近くの領主様とも比較的に仲も良い。だから襲われても持ちこたえてこれたのだろう。
でもわたしの暮らしていた田舎領主様はいじめられていた。御自身もあまり褒められた性格じゃなかったから、ぼっちだったのよ。応援を頼んでもざまぁって言われるだけ。
そんな状況下‥‥悪い時期に悪いやつらが現れた。そんな領主同士の仲間割れのせいで、街は闇の住人達や先日の魔物や不死者のせいで滅んでるかも。
貧乏だからケチだったし、馬鹿にされてばかりだったけどさ‥‥真面目な街の人たち仇も討ってあげないとね。
「──まだ亡くなったって、決まったわけじゃないのに」
後ろからエルミィが呟く。うっさいのよ。こういうのは気分を盛り上げて、まとめてぶっ飛ばすに限るの。それには高揚を保つ大義名分が必要なのよ。
ダンジョンを進んで来たおかげか、ルーネが先輩を励ます声と、先輩の声にならない息遣いが伝わって来た。あちらの思惑もあって、ダンジョン内なら美声君は大丈夫みたいね。
闇の住人達は魔物も冒険者も、全て片付けてしまったみたいね。妨害して来るのは全部、闇の住人だった。
「まだ引きずり込まれる前のようね。急ぐわよ」
悪意あるものは、わたしたちが近づくのを感じて先輩を痛めつけるか、闇の世界へ連れ去ろうとして失敗している感じだ。魔女さんの魔法の力かな。
「カルミア‥‥まだルーネヤレルョ」
ルーネがなんとかわたしたちに、いまの状況を伝えようとしている。本当に悪趣味で嫌なやつよね、悪意ある輩って。ルーネに枯渇するまで魔力を使わせて絶望を味合わせようとしているのだから。
元王妃様が駆け出した。先輩が大嫌いなのもある。でもいまは裏切られて見捨てられて、激しい怒りをぶつけたい相手を見つけて捉えたみたいだ。
現王妃様への怒りや恨みも相当あるのだろう。ただ‥‥そこは貴族だったものとして多少の理解はあったみたい。
でも悪意あるものには、呪詛しか湧かないようね。凄まじい怒りが先輩たちのいる方へ向けられた。
ダンジョンの最奥で闇の渦に取り込まれようとする素っ裸の先輩と、ダンジョンに根を生やして先輩に巻き付いて行かせまいと、必死で抵抗しているルーネの姿があった。
……なんであの先輩は裸なわけ?
元王妃様がごっつちゃん人形ごと闇にぶつかってゆく。その身体にはフレミールに無理矢理開発させた、陽光の魔法が組み込まれているのだ。
元王妃様が苦しいのは先輩だけのせいじゃなく、その魔法の源のせいでもあった。それで苦しむってなると、闇の住人と変わらないんだけどさ。
「────アスト先輩! 間に合って良かった」
わたしが気分を盛り上げたせいか、ティアマトやヘレナ達が闇を払うように飛びかかり、エルミィはルーネを助け出そうと動く。
わたしは目の前で殺される絶望の演出を仕組んだ、悪意あるものの趣味の悪さに苛ついた。
わかっていても、優しいこの娘たちを欺く真似をさせた事を絶対に後悔させてやるわ。
招霊君たちの魂が守り続けてくれたのね。先輩の表情が、ニヤッと笑う。そうよね、薄汚い偽神の残骸に殺されるくらいなら、先輩は、わたしに殺されたいのよね。
誰よりもわたしがわかっている。救えないというなら────わたしが先輩を殺すわ。
悪しきものが、性格がねじ曲がりまくったやつだと感じていた。はじめっから希望なんか持たせる気はないのだとわかっていた。
ごめんね、ルーネ。あいつはあなたが小さな身体で必死に頑張ってる姿を見て嘲笑うようなやつなのよ。希望を持たせて‥‥わたしたちが間に合った瞬間、絶望させるために。
ルーネには説明していない。だから‥‥必死になって先輩を守ってくれた。
ルーネの必死な様子を見て、悪意が嘲笑う。影のくせに、悪感情だけはあるのね。
ロブルタ王国は、この残酷な異界神に魅入られてしまった時点で、滅ぶ運命だったのかもしれない。
「────わたしがいなければ、ね」
先輩を殺すのはわたしだ。この役割だけは誰にも譲らないわよ。何度もこうして死にかける、厄介な性質を持つ先輩への答えが‥‥これよ。
わたしは先輩の露出した胸に、先輩の魔銃を使って弾丸を放った。素っ裸なので狙いが絞りやすいわ。うごめく闇の靄に邪魔されて、動きの鈍いティアマトたちの間をすり抜けて、殺意の籠もった弾丸は先輩を貫く────。
悪意あるものだからこそ、殺す気満々の弾丸は止められない。信じたものたちによる同士討ちのような殺し方。そんなつもりではなかったのに、殺してしまう‥‥そんな不愉快な殺し方が大好物だからね。
あんたの一時の愉悦さえ、不快だわ。だから‥‥一番楽しい瞬間をわたしが奪ってやった。悔しがるわたしたちの失望と絶望という最高の一幕をわたしがいただいてやったわ。
嘲笑う気で一杯の悪意ある靄が、怒りでブルブルしてる。悪感情しかない影の情けなさを、わたしは大いに笑ってやったわ。
わたしたちを捕らえる影に悪意とは別の怒りの感情が湧き上がり、正体不明の靄ではいられなくなった。
「────フレミール、陽炎で焼き払いなさい。全力でいくのよ」
わたしは動けない仲間ごと焼き払うように、フレミールに叫んだ。
「ば、バカな。自分と仲間ごと焼き払うなどあり得ぬ!?」
わたしが何をするのかわからず、後手に回る悪意ある影。
最大に強化しまくった今のフレミールなら、わたしたちを取り込んで動けない悪意の存在ごと消し炭に出来る。
わたしたちが駆けつけようとも、絶対に間に合わない理由は影だからじゃない。捉えられなかったのは予測でしかないけど、時間軸が違うため。次元の違う世界が問題だった。
だからその場の時間ごと、消し飛ばす。フレミールは強力な古竜のブレスでわたしたちごと消し飛ばした。ティアマトに匂いが探れないのも、次元の違う隙間からやってくるからだったわけね。
悪意ある存在の残滓は、先輩をさらう時にミスを侵した。先輩の纏う魔女さんの魔法を気づかずに触れてしまったのだ。
魔法の守りはおまけだ。通じないのをわかって贈ったのだ。あの魔女さんは、性格も魔法もねじ曲がり具合では悪意あるものなんかの数段上を行くからね。
正体不明の闇だから捕まえる事は出来なかった。でも成分が残されていれば、ティアマトは追えるしフレミールだって滅せられる。わたしも招霊君たちに追跡させられる。
時間の概念を変えて闇の世界に逃げ込もうとする悪意を、時間から解放された先輩が防ぐ。
この面倒臭い先輩はね、殺したって死なないのよ。だって‥‥先輩の魂はわたしのものになっているのだから。
フレミールが全力を込めた聖なる光を放つ炎。その強力なブレスは、わたしたちを取り巻く闇の靄の全てを浄化する。残滓など、もう塵ほど残さない。
────あんたの最後は、ちっぽけな力しかない庶民のわたしに、最大の愉悦を奪われて、笑われただけの情けない己の姿で終わるのよ。
────悔しい?
────そうやって何人もの人々の魂を弄んで嘲笑って来たのでしょう?
‥‥先輩の中に詰められた招霊君の魂たちも、一斉にあんたに向けて高笑いしてるわよ。
‥‥わたしよりも、スッキリとした楽しそうな笑いで。
ロブルタ王国を取り巻く狂気と悪意ある存在の闇は、フレミールの浄化の炎により完全に消え去った。
こんなのが、いくつこの世界に入り込んで来ているのかわたしは知らない。あとは魔女さん達がやればいいと思うわ。
フレミールの炎で、フレミール以外みんな酷い火傷を負った。浄化がメインになっているから死なないと思ったのよね。でも、早く処置しないとフレミールが泣く。
「──オマエ、ワレまで騙したのか」
この火竜、ボケてるのかしら。あなたの炎のブレスがどれくらいの威力あるのか、自分自身が覚えてないの問題よね。
「当たり前じゃない。あいつは殺意が好物だもの。死なない攻撃なんかしたら、防がれちゃうでしょう?」
蘇生薬にまで達したヘレナの成分薬を、フレミールが泣きながらみんなにふりかけて回る。
酷い火傷で動けないみんなに、わたしが悪いんだ、騙されたんだと、連呼するのはやめてほしい。やった罪は消えないのよ。
「うぅ……説明は欲しかった、ぞ」
「──生命は預けてる····けどさ」
ティアマトとエルミィが回復し、ジトっとした目でわたしを見る。何も知らないまま殺されかけてるのに、それで済むのね。むしろそれならもっとやれるわね。エルミィはおあいこだけどさ。
「──ルーネとアストが動かないだよ」
回復したばかりのヘレナとノヴェルが、二人の側まで行き泣きながらうなだれていた。
「ルーネは限界だったの。先輩はわたしが殺したから死んでるわ」
みんな、エッ? って顔してるけど、見ていたよね。なんで生きてるって思ったのか、こっちが聞きたいくらいよ。
「か、カルミア? 本当にアスト先輩って死んじゃったの? なんでそんなに平気な顔なの?」
ヘレナがパニックになったので、ティアマトが引き離してくれた。回復したとはいえ、みんなタフね。わたしはまだ動けないのよ。襟首を捕まれたら死ぬからね?
「招霊君の魂の詰まった宝珠もあいつにやられまくって、最後の一人だったのよ。それを壊せば先輩は死ぬのは当然だわ」
時間が惜しいのでわたしは疑惑の目で見る仲間を無視して、先輩の亡骸の頭を持ち上げる。仮死ではなく完全に死の状態だ。体液が流れ出て、少し匂うけれど、先輩の口にわたしは唇を重ねた。
「────はぁ?」
エルミィがバカな声を上げた。言ったでしょう? 先輩の魂はわたしのものだって。こんな方法、よほど魔法に精通していても頭がおかしくないと出来ないよね。
魔女さんが助言をくれたから理屈ではわかっている。わたしなら出来る確信があったとしても‥‥実際に試していないし不安だった。
死んだはずの先輩の顔に赤みが差す。急いで蘇生薬を口に含み、咽ないように少しずつ流し込む。
端から見ると死体に唇を重ねるヤバいやつよね。先輩の表情に輝きが戻るのを見て、ヘレナもエルミィも歓喜の声を上げた。なんだ‥‥結構好かれてるじゃない、先輩。ぼっちは学園を卒業する前に卒業ね。
残っている薬から浄化薬を取り出し、先輩の身体を清める。もちろん体液はスマイリー君でいただくわよ。
「────おかえり、先輩」
本当はかっこよく抱きかかえてあげたかった。わたしも少し動くのがやっとで、ない筋力がさらに力が出ない状態だ。だから横になる先輩に覆い被さる形になってしまった。
わたしも影にめった刺しにされて、フレミールの側でブレスを一番に浴びて死にかけて‥‥ヘレナたちにとどめを刺されそうになったんだよね。
「僕を──あんなに嬉しそうに殺すのは、君くらいだよ。それに‥‥また実験‥‥したな」
先輩もまだ力が入らないのかわたしの首に腕を回し、わたしの顔を自分の顔へ近づけるのが精一杯だった。
「君と一時とはいえ魂を同化させたせいで、変な気分だよ。妙な性癖に目覚めていたら君が責任をもちたまえよ」
────あぁ、いつもの先輩だ。素っ裸で、自分の体液に塗れて。普通なら恥ずかしいとか情けないはずなのに、凄く堂々として誇らしげで。何でこの人は、こんな姿でかっこいいのだろうか。こんなの、わたしの方が惚れてしまうわよ。
「カルミア〜、ルーネが灰になっちゃった」
ルーネが鉢植君から飛び出して、ダンジョンに根を張り先輩を引き止めてくれたおかげで、先輩の身体は汚されずに済んだ。
先輩の魂がないのに、鉢植君の外へ出て魔力を振るえばいくら魔力の豊富なルーネでも、身体は持たないと‥‥本人が一番わかっていたはずだった。
悪意の思惑はあるにしても、間に合ったのはルーネのおかげよ。ありがとうね。
「ねぇ、あの人もいないんだけど」
わたしと同じくあまり動けていないヤムゥリさまが、あたりを見回していた。
元王妃様の姿は先輩ごっつちゃん人形から消えていた。禍々しい魔晶石は惜しいけれど、彼女との約束は約束だ。
「元王妃様は、闇の世界へ殴り込みに行ったわ。あの方、ヤムゥリ王女さまの身内だったのよね」
気が合うというか、王女さまが陰謀に利用された理由がわかった。
「あの人は‥‥私の叔母にあたる方よ。殴り込みって、戻って来られるの?」
「さあ、流石に知らないわよ。闇とか怒りの精霊にでもなれば、こちらに顔を出す事もあるでしょうけど」
悪意ある存在のかわりに元王妃様が成り変わる可能性は十分にある。成分があるので、わたしたちを襲うのは無理なのが救いね。
何よりあまり出てきてほしくない精霊でもある。闇の世界なんてどうなっているかわからないけれど、繋がってしまったこの入口は、ノヴェルが責任持って潰していた。
「先輩が捕まったせいで探索どころじゃなくて、わたしは大赤字だわ」
王都に戻ったら、国王陛下にたっぷり護衛料を請求しないと。魔力をものすごく使うから、あまり見なかったけれど時間対策や、闇への対抗力を上げる必要があるわね。
わたしはティアマトに、先輩はフレミールが背負ってダンジョンを後にする。
ヘレナがずっと無言で怖いんだけど、なんで?
「あっ、戻って来た」
メネスの声が聞こえた。ガレスとガルフが駆け寄って尻尾をフリフリする。撫でてやりたい所だけど、動けないからまたね。
「変わりはなかった?」
「うん。今の所はね。シェリハとタニアさんが中で休んで、モーラさんが馬車の上で見張ってる。アスト様、無事で良かったよ」
「あぁ、君達のおかげだよ。悪いが救出チームはダメージが残っているから先に休ませてくれるか」
回復はしたけれど、フレミールのブレスのダメージが抜けていない。元気なのは、フレミールと魔法耐性の強かったノヴェルくらいね。
あまり話しを振ると、フレミールがいじけて面倒臭いので聞かないであげてね。
わたしたちは、モーラさんに挨拶し馬車の中に入る。ごっつ君がいたの忘れていたから少し驚いたよ。
倉庫内に入るとシェリハとタニアさんが休んでいたので、起こさないように奥の部屋へ行く。
「オカエリ、ミンナ」
ふよ‥‥ふよ‥‥ふよっと、鉢植君に乗ったルーネがやって来た。
「あれ? なんでルーネがここにいるの」
ヘレナがベッドに降ろされたわたしを見る。怖い顔ではなくなって良かったわ。
「ダンジョンにいたのはルーネの分体よ。本体みたいに作用するんだっけ? よくわからない、種族よねルーネも」
「ルーネ、アスト守った」
ルーネが嬉しいのか、先輩の周りでふよふよしながらはしゃぐ。先輩も小さな頭を撫でて報いていた。
「ねぇ、カルミア、どういうこと?」
「意思を共通しているから、一株でも残っていればルーネは死なないのよ」
あれ、言ってなかったかな? まあそういうわけだからルーネも無事よ。だからヘレナさん、わたしの首に両手を添えて締めるのはやめようか。
先輩に魂を返したから、いまのわたしの体力では本当に死んじゃうって!
ついにヘレナにまで殺されかけたわよ、わたし。ヘレナだけは天使のはずだったのに、あの悪意のやつのせいで堕天したのかもね。
フレミールのは、わたしがやれと言ったので数えないであげましょう。
死んだように眠る、というか死にかけたわたしの眠るベッドには先輩と、謝り泣きじゃくるヘレナが泣きつかれて眠っていた。ごめんね、ヘレナ。あなたの純真さは、貴重なので変わらないでほしいわ。
先輩の服‥‥新しいの作らないとね。ようやく日常を取り戻せたけれど、この仲間たちのことだから、またすぐにトラブルを呼び込むんだろうな。
敵よりも味方に殺されかける回数が圧倒的な件についても、そろそろ真剣に検討したいと思った。
お読みいただきありがとうございます。2024年8月の改稿で、この百四話の文字数が二千文字ほど増えました。




