どこに籠城する?
斉藤さんに迫っていたオークを弾き飛ばし、車を停める。唖然としていた晴人達だが車を降りた俺達を見ると安心したように一息ついた。
「薫ちゃん!」
車から降りた北條が斉藤さんに抱きつく。キマシタワー。
「ありがとう悠眞、助かったよ」
百合ってる二人をよそに晴人が話しかけてくる。
「気にするな。張り倒されてたけど無事か?」
「うん、大丈夫だよ。少し打撲になったくらい。そういえば悠眞って車の運転できたんだね」
「今日初めてした」
なにやら戦慄した目を晴人が向けてくるが無視。それよりこれからどうするか。それなりの数のオークを殺したが、結局レベルは上がらなかった。そろそろ諦めるべきか…。
「あの、篠崎?先輩、助けてくれてありがとうございました…」
俺が今後について考えてると斉藤さんが話しかけてきた。
「どういたしまして。怪我はないか?」
「は、はい、大丈夫です…」
「私からも。せんぱい、ありがとうございました。それで?まださっきの続きをするんですか?もうやめて欲しいんですけど…」
疲れた表情で北條が言ってくるがもうそのつもりはない。
「いや、レベルも上がらないし、どこか安全な場所を探すべきじゃないか?」
レベル?と斉藤さんが首を傾げているが放置。
「そうだね、どこか安全な場所を探さないと。出来れば篭城出来るような場所で食料があるといいんだけど…」
「食料を考えると学食の近くだが、寝泊まりできるようなとこはないよなぁ」
「寮だと人が多そうで安心できなさそうだしねぇ」
俺達が悩んでいると斉藤さんがおずおずと話しかけてくる。
「あ、あの、図書館の司書室なら篭城出来るかと。この学校の図書館は大きすぎて仕事が終わらず、司書さんが寝泊まりする部屋が欲しいって言って、学校に作ってもらったそうです…」
この学校の最大の特徴は大学の図書館に負けないような広さの図書館だが、そんなとこがあったのか。
「そこには司書じゃなくても入れるのか?」
「すでに誰かが篭城したりしてない?」
俺と晴人が気になったところを聞く。
「は、はい。私は図書委員で司書さんとも仲が良く、合鍵ももらいました。部屋の存在は図書委員なら知っていますが、他にカギを持っているのは司書さんだけで、司書さんも今日はお休みです…」
ならそこにするかと晴人と話していると斉藤さんが意を決したかのように話しかけてきた。
「あ、あの、篭城するのはいいのですが、他の襲われている人達を助けないんですか?それに他の人達と合流しないんですか?」
俺と晴人は目を合わせた後に斉藤さんに向き直り言った。
「目の前で襲われてるかつ、安全に助けれるなら助けるが、わざわざ探してまで他人を助ける気はしないなぁ」
「食料の奪い合いなんかも起きるだろうし、他人が多いとこには行きたくないよ」
そう答えると斉藤さんの顔が強張った。
「せ、せんぱい達って結構ドライなんですね…」
「優先順位がはっきりしているだけだ。…失望したか?」
「い、いえ、そんなことは…」
言葉を濁す北條に溜め息を吐いてから向き合う。
「別行動するならそれでもいい。寮にでも行けば大勢の人がいるんじゃないか?さっき言った司書室を二人で使いたいって言うなら俺達は別の場所に行く。晴人もそれでいいか?」
「うん、それでいいよ。まだ出会ったばかりだしね。お互いを信じられないのも無理はないよ」
「相談したいなら俺達は離れるからするといい」
サバイバル物の作品だと必ずと言っていいほど人間同士の争いがある。誰だって他人より自分や家族、友人のほうが大事だろう。ましてや女子二人が男子二人と籠城するとなると身の危険を感じるだろう。
話し合っている二人を眺めていると意外にもすぐに結論が出たのかこちらに寄ってきた。
「私達はお二人と一緒に行動したいです。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします…」