スタ〇使用中
時間は少し遡り、悠眞SIDE
悠眞は職員室で教師の私物を漁っていた。
「せんぱい、何を探しているんですか?というか私物を漁るって犯罪なのでは?」
「緊急事態だから先生たちも許してくれるさ。多分、おそらく、きっと」
ジト目を向けてくる北條を視界から外し、さらに私物を漁る。そうして目的の物を見つけた。
「車のカギ?そんなものをどうするんですか?」
「車のカギの使い方なんか決まりきっているだろう」
見つけた車のカギに対応した車を駐車場で探して乗り込む。エンジンをかけてギアをドライブに入れる。
「せんぱい、車の運転できるんですね。免許持ってるんですか?というか車でどこ行くんですか?山に囲まれてて道は無さそうですけど」
「免許なんか持ってるわけないだろう。まだ17歳だぞ。オートマならエンジンかけて、ドライブにギアを入れて、アクセル踏めば走る。実際に運転するのは初めてだが」
「は?」
「そしてどこに行くかと言えば校庭だ。生身じゃ勝てる気しないが、車で轢けばオークも死ぬだろ」
「えっ…、ちょっ…、何を言って…」
俺が言ったことに混乱している北條に構わず、アクセルを踏む。踏み過ぎて一気に加速してちょっとビビった。
「やっ、お、おろして、おろしてください!怖い!」
ようやく現状を把握して騒ぐ北條を安心させるべく口を開く。
「案ずるな。マリ〇ーで鍛えた俺の腕前なら楽勝だ」
「何がですか!というかゲームと現実をいっしょにしないでしないでください!」
騒ぐ北條をよそにハンドルを切る。急に曲がったせいかタイヤが少し浮く。
「浮いた!今タイヤ浮いた!おろしてください!それかせめて安全運転してください!何でもしますから!」
ん?今何でもするって…
冗談はさておき、校庭に出る。とりあえず何事かとこちらを見ているオークの一体を跳ね飛ばす。
「きゃああああ!ほんとに轢いた!何の躊躇いもなく轢いた!」
さっきから北條がやかましい。非日常を現在進行系で体験しているせいか、ゲーム感覚なのか、魔物を殺すのに躊躇いが無くなってきている。今回は直接的な感触がないからかもしれないが。
そこは置いておき大事なことが一つ。
「レベルが上がらねぇ!オーク一体じゃダメなのかよ!」
オレはレベルやステータスを諦めない。目につくオークを片っ端から轢いていく。うっかりオークが追いかけていた人も轢きそうになったが、なんとか避ける。
突然の乱入に唖然としていた人たちを置いてけぼりにしながら車を走らせていると、知っている顔を見つけた。
「晴人と斉藤さんじゃん。なんかヤバそうだけど」
「薫ちゃん!」
俺が呟くと半分意識が飛んでいた北條が覚醒する。
「せ、せんぱい!薫ちゃん達がピンチです!助けてあげてください!」
「まかせろ」
友人を見捨てる気はない。俺はアクセルを踏み込んだ。