修羅場?
落ち着いた高宮から話を聞いてみると特に何かがあったわけではなかった。単に高宮が起きた時に俺がいなかっただけである。
それだけのことだが、高宮からすると何度も襲われた時に助けてくれた俺が見当たらないというのはかなり不安になることらしい。
晴人達のいる部屋やトイレなどにもいなくてまさか置いていかれたのか?と考えたところに起きてきた晴人が声を掛けたことで完全に余裕が無くなった。襲われたトラウマがぶり返し、晴人に襲われると思ったみたいだ。
「えぇ…?」(困惑)
依存されているのは分かっていたけど思っていたより重症だ。
何故か北條が思い詰めたような顔をしているがどうしたのだろうか?
そんなこんなで夜。今まで以上に高宮は俺にべったりだった。気疲れはしたが、引っ付いてくるせいで背の割に大きい胸が当たって役得ではあった。
くっ…!性欲に流されて拒絶出来ない自分が憎い…!
いつもと同じ部屋割りで寝ようとしたら今日一日浮かない顔をしていた北條が高宮に話しかけていた。
「高宮先輩、申し訳ないんですけどしばらく席を外してくれませんか?」
「や」
即答である。一文字である。
北條も顔を引き攣らせている。
「拒否されるとは思いましたが、一文字とは…幼児退行してません?」
キャラ崩壊も甚だしい。
「はぁ…ならせめてせんぱいから離れて下さい。あと出来ればこちらを見ないでいただけるとありがたいです」
「むぅ…まあそれくらいなら」
不満そうではあったが真剣な顔をしている北條を見て、高宮は部屋の隅に行った。それを見ながら北條に問いかける。
「それで?何か話があるのか?」
北條に視線を戻すと何故か服を脱いでいた。あっ…デジャヴ…
ガン見していると下着姿になった北條にキスされた。しかも舌まで入れてきた。
やだ…強引…
「な、な、なにしてるのぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」
見ないでと言われたのにこちらを見ていた高宮が叫んでいる。だが北條は取り合わず、口を離したら俺の目を見ながら言った。
「せんぱい、今日こそ〇ックスしましょう」
その目は真剣だった。
「ダメに決まってるでしょう⁉︎」
高宮が焦ったように近づいてきたが、北條は無視するようにまたキスしてきた。
「やめなさい!はしたないでしょ⁉︎」
高宮が引き剥がそうとするが、北條がしがみついてきて抵抗する。一分くらいして口を離した北條が高宮を非難するように目を向ける。
「んっ…さっきから何なんですか高宮先輩。邪魔しないでください」
「するよ!突然目の前でそんなことされたら!」
「ずっとせんぱいに引っ付いていた高宮先輩には言われたくないです」
「うっ…で、でも私はそんなことはしてないよ⁉︎」
「ずっと胸を押し付けてたクセに…その立派なものでせんぱいを誑かそうとしてたんじゃないですか?」
「そ、そんなつもりじゃ…」
「本当に?」
ハイライトが消えた目で高宮に問いかける北條が怖い。内心ビビりながらどうしたのか北條に聞くと、途端に顔を歪めた。
「だって…高宮先輩はかわいいし、人気者だし、胸も大きいし…私はこれくらいしないと…」
半泣きの北條を宥めながら話を聞いてみると、俺が高宮を優先して捨てられると思ったらしい。だから体を使って引き留めようとしたと。
「別に捨てるつもりはなかったが…仮に俺に捨てられるとしてもそこまでする必要あるか?」
安全な場所があり、風呂や娯楽、友達もいる。食料は無くなったら取りに行く必要があるが、肉はともかく果物なんかは誰でも取れるだろう。
「ええ、私もそう考えたと思いますよ。初日に犯されてゴミのように死んだ子を見ていなければ」
そういや初日は寮に行こうと外に出たが、それからは外に出ようとしなかったな。
「先輩が化け物を蹴散らしてくれてたから気づきませんでしたが、寮で化け物に捕まった人達の末路を見て自分もああなるんじゃないかと思ったら外になんか出れません」
「そうか?注意してれば逃げるくらいなら出来そうだし、食料を探しに行く奴もいそうだが」
「そういう人達だって死の恐怖に怯えながらだと思いますよ。そうしないと生きていけないから仕方なく。皇先輩もそうですし。誰かに押し付ける訳じゃなく、せんぱいみたいに気楽に外に出る人はほとんどいない筈です」
「………」
…正直ピンと来ない。
「はっきり言いますけど頭おかしいですよせんぱい。私は外に出たくない、死にたくない。たとえ体を使って軽蔑されたとしても。何でもします。だから守ってください、捨てないでください…」
そう言って北條は縋り付いてくる。温度差があるとは思ってたが、そこまで深刻に考えているとは思わなかった。いつか考え方の違いでめんどくさいことになりそう。
いっそ俺だけ別行動にした方が将来的には互いのタメになるんじゃないか?
解散の理由は音楽性の違いです。
「っ!」
俺が何も言わないので不安になったのか、顔を上げた北條が微妙な表情をしていた俺を見て息を飲む。やべっ、乗り気じゃないのがバレたか?
「そんなに私は魅力がありませんか⁉︎せんぱいは私が嫌いなんですか⁉︎」
「そんなことはないが…互いの為にならなくない?」
「っ!」
俺の言葉に何を思ったか突然北條が俺を押し倒してきて、そのまま強引に下の服を脱がされた。いや〜犯される〜。
「いっ、っ〜〜〜〜〜〜‼︎」
「は?いや、ちょっ⁉︎」
ふざけていたら北條はそのまますぐに自分の下着をずらして入れやがった。
下着姿の北條に抱きつかれたりしたから大きくはなっていたが、急展開過ぎない?
「こ、これなら少しは私を意識するんじゃないですか?男の人って関係を持った人には愛着が湧くんですよね?いいんですか私が化け物や他の人に犯されても?」
「………はぁ」
「っ⁉︎」
俺が溜め息を吐くと北條は息を飲み、涙目を通り越して半泣きになる。俺が怒るとでも思ったのだろうか。
北條が硬直した隙を突き、体を起こして逆に押し倒す。
「せんぱい……?」
「強引すぎるだとかどうなっても知らんぞとか色々言いたい事はあるが、ここまでされて身を引くほど枯れてねぇぞ。覚悟しろよ」
「あ、あの…出来れば優しくしてください…」
「無茶な注文だ」
この後めちゃくちゃ○ックスした。
「せんぱいのケダモノ…」
「最初に襲ってきたのは北條だろうが」
なんだかんだで事後。自分から襲いかかってきたクセに北條が文句を言いながら俺をペシペシ叩く。こっちは今までずっと我慢してたんだぞ。むしろ今まで手を出さなかったことを褒めろ。
「う〜〜!」
ペシペシ叩く北條はかわいいなぁと現実逃避するが、背中に抱きついている奴が手に力を入れて俺を現実に引き戻す。
「…………」
俺の背中には高宮が無言で張り付いていた。




