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テンション上がるとキャラが崩れるよね

「スースーする…」



 この一言だけでも興奮するよね。


 あの後高宮は多少時間が経ってからトイレから出てきたが、顔は赤いし、スカートは濡れてるしでなんと声をかけたらいいか分からなかった。


 改めて礼を言われたが「おっ、おう…」としか答えれなかった俺は悪くない。


 気まずい思いをしているとふと気づく。


 そういやここは寮だったな、と。


 すぐに着替えは手に入り、ついでにシャワーも浴びとけと提案すると高宮も頷いた。


 そうして風呂場まで来たので廊下で待っていようとすると、高宮に脱衣所まで着いてきて欲しいと言われた。


(ヒャッハー!女子寮の脱衣所だー!)と内心テンション高めだったが、男子寮と大差なかった。


 パンツでも落ちてないかと思いつつ、魔物がいないか脱衣所を見て回る。




 なかった(二重の意味で)


 内心がっかりしつつ、魔物も他の人間もいなかったので脱衣所から出て待っていようとすると高宮に呼び止められた。


「こ、ここで待っててくれない…?」


「……誘ってんの?」


「ち、ちがっ、一人じゃ怖くて…近くにいて欲しい…」


 ダメ?と顔を赤くしながらも縋るような目をしている高宮を見て内心溜め息を吐く。


 襲われたばかりで不安なのは分かるが俺に襲われるとは思わないのだろうか?


(信頼してくれていると取るか、試されていると取るか…)


 まぁ仮に手を出すにしてもこんないつ魔物が来るか分からないとこで出すつもりはないが。


 高宮に背を向けて座り込む。


 後ろから聞こえてくる衣擦れの音が気になりますねぇ。





(な、何を言っちゃってるの私!)


 一人になるのは怖くて近くにいて欲しかったが、これでは誘っているようなものではないか。大抵の男子は襲い掛かっていると思う。


(篠崎君はそんなことしないよね…?)


 チラリと視線を向けて見ればこちらに背を向けている背中が見える。服を脱ぎながら何度も視線を向けてみるがこちらを向く気配はない。


 普段なら自分に魅力がないのかなと考えるかもしれないが、今は彼のその態度がありがたかった。


(待たせちゃ悪いよね)


 風呂場に入り一直線にシャワーに向かい、体を洗う。本当ならゆっくり湯船に浸かりたいが彼を待たせるのは気が引ける。


 そもそも湯船は空だったのでお湯を溜めるとこから始めないとだったが。


 急ぎつつも丁寧に体を洗いシャワーで洗い流していると後ろから足音が聞こえた。


(誰かいる?まさか篠崎君?)


 まさか彼が入ってきたのかと思ったが脱衣所への扉が空いた音はしなかった。そう言えば真っ直ぐシャワーに向かったせいで風呂場に人がいるか確認してないなと思いつつ、泡を洗い流してから後ろを向いた。


「ブヒッ」


 そこにはオークが立っていた。





 「きゃあああああああ!」


 よくよく考えると仮にパンツを拾っても誰のか分からないものはいらないよな。高宮みたいな美少女の物ならともかく、オークとみたいな女子の物だったら目も当てられん。


 そんなことを考えて冷静になった俺は大人しく高宮を待っていたのだが、風呂場から高宮の悲鳴が聞こえた。


 またかよ!と思いつつ風呂場に突入しようとしたが、一旦思い止まる。


 高宮は裸だろうし流石にまずいか?と思うも、即座に大義名分があるから合法!とテンション高めで風呂場に突入。


 そんな浮ついた心はこちらに背を向けて高宮を押し倒している存在を見て即座に冷めた。


(よりにもよってオークかよ!)


 ゴブリンなら迷わない、人間でもまあやれる、だがオークだと躊躇する。


 ラノベなんかだと雑魚扱いだが、ここのオークは2メートル越えの身長があり、腕なんかも人間の倍近くあり、体格差がかなりある。


 そんな存在に真正面から戦いを挑むのは勇気がいる。


(こちらには気付いてないみないだがどうしたものか…)


 今までにそれなりの数のオークを倒しているが、車で轢いたり、不意打ちかまして晴人を囮にしたりされたりしつつ、一方的に攻撃したからだ。


 一対一の状況なら迷わず逃げている。


「やあああああ!篠崎君!助けて!篠崎君!」


 俺が目に入っているわけではないだろうが、高宮が助けを求めて叫んでいる。


 あっ、オークにビンタされた。うるさかったのだろうか。


 流石にこれ以上放置しているとヤバそうなので覚悟を決める。


 何か使えそうな物がないか辺りを見回し、シャンプーのボトルを掴みキャップを外して無理矢理ポケットに突っ込んでおく。


 そして高宮に夢中になっているオークに近づいて思いっきりバールを振り下ろす。


「ブヒヒッ⁉︎」


 オークが前傾だったので後ろからだと頭に届かなかったから背中を殴ったが、厚い脂肪に阻まれてろくに効いてなさそうだ。


 オークが何事かと振り返った時に頭にぶち当てたが一撃必殺とはいかない。防御力高すぎんよ〜。


 俺を視認したオークはお楽しみを邪魔した不届き者に怒り心頭といった様子だ。立ちあがろうとしたので追撃。 


「お前が!泣くまで!殴るのをやめない!」


 ネタに走ったけど内心は必死だ。オークに手番を渡すと地力の差で圧倒されるので、一方的に攻撃し続けたい。


 立ち上がったオークの顔にシャンプーを投擲。


「ブヒッ⁉︎」


 シャンプーが目に入ったのかオークは目を擦っている。


 チャンスとばかりに攻撃するが、オークが腕をめちゃくちゃに振り回し、追撃していた俺は避けれずに脇腹に一発もらって吹き飛ばされた。


「いってええええ!やりやがったなクソ豚があぁ!」


 気分はアウトレンジから地道にダメージを与えていたのに一発でひっくり返されたアウトボクサーだ。おのれインファイター。


 声に反応したのかリバーに一発もらって悶絶している俺にオークが向かってくる。



 あっ、ヤバいですね。



 このままだと死ぬぅ!となんとか立ち上がったが生まれたての子鹿並みに足が震えている。一発でK.O寸前である。


「くっ、たとえ俺を殺したとしても第二、第三の俺が…」


 半ば諦めて捨て台詞を吐こうとしたが、オークが転んだ。目が見えない状態で濡れたタイルの上を走ればこけるよね。


「ざまぁぁぁ!そのまま死ね!」


 震える足をなんとか動かしてオークの下に行き、頭にバールを振り下ろす。何度も振り下ろす。死ぬまで振り下ろす。


 そうして頭がミンチになって死んだのを確認してようやく一息吐く。


(危ねぇー。オークが転ばなければ死んでたかも)


 だが生き残った。結果がすべてだ。アドレナリンが出まくってテンションがおかしい。戦闘中も叫んでばかりだったし。




「ご覧あれ!私はやりました、やりましたぞ!ヒャハ、ヒャハッ。私はやったんだあああああ‼︎‼︎ヒャハハハハ…うおっ」



バッ←高宮が飛びついてくる音。


ツルッ←篠崎が足を滑らす音。


ガンッ←篠崎が後頭部を強打する音。



「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜‼︎」


「ぐすっ、ありがと篠崎君。ほんとうにありがとう…」


(いってえええええええ‼︎)


 高宮がなんか言ってるがそれどころじゃない。全裸の高宮に抱きつかれているが堪能もできない。転げ回って痛みを誤魔化したいが高宮が上に乗っていてできない。


(なにこの仕打ち。俺頑張ったじゃん!ビンタされるまで躊躇ってたの怒ってんの⁉︎ごめんちゃい!)


「ぐすっ…ひっぐ……う〜…」




 高宮が泣き止んで現状を把握するまでこのままだった。



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