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女子トイレ

高宮を宥め賺して校舎を脱出し、現在は食堂にいる。ここも安全とは言えないけど腹が減ってはなんとやら。何か食えるものがないか探しに来たけど見つからなかった。


 まぁ前回来た時から数日経ってるし、他の生徒が全部持っていったのだろう。


「無駄足だったな」


「うん、そうだね…」


 普段の高宮に比べて明らかにテンションが低い。裏切られたり、目の前で友人が死んだりすれば無理もないか。


 こんな時は慰めるべきなんだろうがなんて言ったらいいか分からん。まぁ下手に慰めなくても高宮なら勝手に持ち直すだろう(思考放棄)


 互いに無言になりながら廊下を歩く。少ししてトイレの近くに来ると


「ごめん、少し待っててくれる?」


 少し恥ずかしそうにしている高宮に声をかけられた。


「ああ」


 そう言って少し離れた壁に背を預ける。生理現象か単に一人になりたいだけか知らないがわざわざ聞く必要もない。





「何も言わないのは気を使ってくれてるのかな?」


 私はそう呟きつつ個室に入る。今日はいろいろあった。裏切られ、襲われ、多くの友人を失った。私の回りには常に人がいた。みんなと仲良くしたり、相談に乗ったりしていたら自然とそうなった。だけど今は一人しかいない。


 自分のせいで死んでしまった人達(安否確認できてない者も多いが)を思い涙を流す。


 しばらくして落ち着いてきたら現在唯一の同行人について考える。



 篠崎悠眞君、いつも皇晴人君と一緒にいるけど他の人とはあまり交流していない。


 私は常に人に囲まれていたからか、自分に向けられている感情がなんとなく分かる。下心を持って近づいてくる人、尊敬してくれてる人、妬みの感情を向けてくる人。


 だけど篠崎君は私に対して余り興味がないのか、分かりやすい感情を向けてこない。たまに胸に視線が来るが他の男に比べればかなり少ない。


(そうでもなければ襲われた直後に男に着いて行ったりはしないよ)


 私はそれなりに篠崎君を信頼しているが、問題なのは篠崎君がどう思っているかは分からない点だ。


 おそらく彼は優先順位をはっきりさせている。敵は排除するし、他人には無関心。ついでとはいえ助けてくれたし、自惚れでなければ私は友人の枠には入っているはずだ。


 だが、だからこそ怖い。私と私より大事な人を比べた時に多分彼は私を切り捨てる。両方を選べるなら多少大変でも両方を選ぶだろうが、片方しか選べないなら迷わず私を切り捨てるだろう。


 小を捨て大を得るのではない。仮に百人の他人を犠牲にすることになっても一人の親友を助ける。彼はそういう人間だと思う。


 だからこそ今後も着いていくかどうか迷ってしまう。


 頼りになるのは間違いないだろう。化け物が跋扈する地を一人で行動するなんてなかなかできるものではない。


(単なる命知らずかもしれないけど)


 だがそれに助けられたのも事実。だからこそ迷う。このまま着いていくか、他のグループに合流させてもらうか。


 しばらく迷っていたが、個室に入ってからそれなりの時間が経っていることに気付く。


(置いてかれてないよね…?)


 そのようなことはしないと思うが、もし置いてかれたらと考えるとゾッとする。一人で生きていける気はしない。


 急ごうと思いつつ下着に手をかけると(用を足したかったのも本当)


「ギャギャッ」


 耳障りな声が上から聞こえた。

聞こえた声に反射的に目を向ければ上から覗き込んでいる目と視線が合う。



 いやらしい目をした肌が緑色の小鬼…ゴブリンだ。


 そいつは壁を乗り越えて狭い個室でろくに身動きが取れない獲物…高宮に飛びかかった。





「きゃあああああああ!」


 遅いなぁ、大きいほうか?などとデリカシーのないことを考えながらずっとトイレの方を見ていたら(こう聞くとただの変態に思える)高宮の悲鳴が聞こえてきた。


(トイレに入ってた魔物はいなかったが…最初から中にいたのか?)


 そう考えつつもトイレの中に侵入。平時なら変態の烙印を押されるなと思いながらも声を出す。


「高宮!どこだ!?」


「篠崎君助けて!」


 声が聞こえた個室を開けようとするがカギがかかっている。


「高宮!カギを開けろ!」


「開けたいけど上に乗られてて…いや!やめて!」


 どうやら中でくんず解れずしてるらしい。相手が何か知らないけど。


「勢い余ったらすまん!」


 護身用にずっと手に持ってたバールのような物をカギの部分に叩きつける。



 おっ開いてんじゃ〜ん。バキッー。



 カギを壊して扉を開けると服を乱れさせながら抵抗する高宮とその上にのしかかりながら服を破こうとする緑の背中が見えた。


「なに対面座位してんだオラァ!」


 高宮の膝の上に乗る形になってたゴブリンを引っ掴み後ろの壁に叩きつける。いや、挿入はしてないし、男女の位置が逆だけどね?


「とりあえず死ね!」


 壁に叩きつけられてダメージを負った様子のゴブリンの頭にバールのようなものを振り下ろす。


 高宮の膝の上に乗るとか羨まけしからん!とか思いつつゴブリンの息の根を止める。


「ふぅー…」


 一息吐きつつザクロから目を離して高宮の方を見る。


「ひっく…ありがと…篠崎君」


「あーどういたしまして。…あとすまん」


 半泣きで服を乱れさせた高宮から目を逸らしつつトイレから出る。



 まあ急に襲われればびっくりするよね。恐怖を感じると出ちゃうかもしれないよね。


 ゴブリンに襲われる前に用は足してなかったらしい。




 


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