俺は主人公になれない
もう数話日常編です。
「それで?あの後輩ちゃんはどうよ?」
昼休みが終わって教室に帰ってきた晴人に問いかける。
「いい子だね。いきなりお弁当を作ってきたのには驚いたけど」
苦笑しながら晴人が答えた。
「でも悠眞の行動も意外だったよ。他人にあまり興味ない悠眞なら何も言わないで待つか、一人で先に行っちゃうと思ったのに」
「最近青春物のラノベ読んだからなぁ」
青春っぽいことをするのもいいんじゃないかと思っただけだ。
「そうやってすぐにラノベやマンガに影響されるんだから。あのコーヒーもそうだし」
「いいだろうが別に。二次元に影響されるのはオタクの義務だ」
「はぁ。そんな義務なんてないでしょ…」
ため息を吐くな。お前はやれやれ系主人公か。
「まぁ何に影響されたかは置いといて、悠眞は僕にあの子と付き合って欲しいの?」
「そこまでは言わん。晴人が嫌なら嫌と言えばいい」
そこは晴人の気持ち次第だ。部外者の俺がとやかく言うものではないだろう。
ぶっちゃけ晴人に恋人が出来ようが出来まいがどちらでもいい。単に学園物の作品を見ているみたいでおもしろいかなと思っただけだ。
「クズめ。何かおもしろいことがしたいなら、もっと部活とかいろんなことに本気で手を出してみたら?それこそ青春物やスポーツ物のマンガみたいに」
「俺には無理だ。主人公みたいにはなれない。中学までで思い知った」
憧れないわけじゃないが、俺は自分の器というものを知っている。主人公みたいになりたくて色々なことに挑戦してみたが、どれも中途半端に終わった。
「別に主人公じゃなくてもいいと思うけど。まぁ僕も何もしてないからとやかく言えないか」
それで話は終わり、席に着く。
そして俺は今日も授業を聞き流しながら何かおもしろいことが起きないか考える。考えるだけで何もしない。いつかこの退屈な日常が変わると期待して。
自分で行動しない癖に何を期待しているんだとそんな自分を俺は嘲笑った。