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だが断る

「おかえりなさいせんぱい方。無事でよかったです」


 北條達はあっさりと俺達を部屋に迎え入れた。少しは男を警戒しようぜ? 


「とりあえず適当に切り取って持ってきた。後で焼いてみよう」


「うっ…、やっぱり食べなきゃダメですか?抵抗があるんですけど」


「いや、今日は俺だけだ。全員が腹を壊してもまずいし」


 そう言うと俺以外の三人はホッとしたように息を吐いた。やはり進んで食べたいものではなかったらしい。





 その後、図書館内に魔物や他の生徒がいないか見て回り、入り口や窓のカギを閉めていく。一通り見て回ったが俺達以外には誰もいないようだ。だがここの図書館は広いので見落としがあるかもしれないし、窓を割れば簡単に中に入れるので、司書室で過ごすことにした。




 日が暮れた頃、夕食にしようということで缶詰を食べている三人を尻目にオークの肉を焼いて食べてみる。流石に品種改良を重ねている牛肉や豚肉に比べれば劣ると思うが、もともと味の違いなんて大して分からない俺は塩コショウで味付けすれば普通に食えた。


 あとは時間が経って腹を壊したりしなければ、食料問題はひとまず解決だ。どうやって倒すかや肉ばかり食べることになると言う点に目を瞑れば。問題点多すぎね?


 夕食を食べ終えた後は順番に風呂に入る。今日はしょうがないが着替えもどうにかしなくては。




 全員が風呂に入った後はもう寝ることにした。普段に比べればかなり早いが、いろいろなことが起こって身も心も疲れているのですぐに眠れそうだ。


 流石に男女が同じ部屋で寝るのはマズいだろうと俺と晴人は別の部屋へ移動する。仕事部屋は寝るには適さないが、カギがかかるから寝ている間に魔物に襲われることはないだろう。


 生活部屋から持ってきた布団を敷いて寝ようかと思ったら扉をノックされた。


「皇先輩少しいいですか?薫ちゃんが話したいことがあるらしいんですけど」


「今から?明日じゃダメなの?」


「えぇ、今日中に話したいと」


「…分かった。それじゃ行ってくるよ」


「お願いします。二人きりで話したいらしいんで私はここに居ますね」


 晴人が出て行ったのを見て、俺はもう寝てしまおうと目を閉じたら扉のカギを閉める音がした。カギを閉めたら晴人が帰って来れないだろと起き上がって扉の方を見ると、何故か服を脱ごうとしている北條がいた。


 呆気にとられている間に北條は下着姿になっていた。




「…気でも狂ったか?」


「女の子の下着姿を見て第一声がそれですか…」


「気が狂ったんじゃなければ露出癖でもあるのか?」


「そんなのありませんよ!まったく…」


 恥ずかしいさはあるのか顔を赤くしながらこちらに近づいてくる。恥ずかしいならやめろよ。


 せっかくなので近づいてくる北條を観察する。胸は大きくもなく小さくもない。いや、少し小さめか?下着は白でフリルが付いていて可愛らしい感じ。あざとい。


「そんなにまじまじと見られると流石に恥ずかしいんですけど…」


「なら服を着ろよ」


「うっ…」


 正論をぶつけてやると気まずそうに目を逸らす。何か言いたそうに口を開いたり、閉じたりしている。


「……てください」


「えっ?なんだって?」


 マジで聞こえなかった。俺は難聴系主人公ではない。


「〜っ!抱いてください!」


 顔を真っ赤にして北條が叫んだ。


「…やっぱ気でも狂ったか?それとも欲求不満?俺は処女厨だからビッチの相手はちょっと…」


「狂ってなんかいません!ビッチでもありません!私は処女です!」


「へー」


「!っ!っ〜!」


 勢いで余計なことまで叫んだ北條はさらに顔を赤くしながら言葉にならない叫びを上げながら荒れ狂っている。


「で?いったい何のつもりだ?」


 荒れてる北條を眺めていても話が進まないので問いかけてみる。


「…せんぱい冷静過ぎません?私は緊張でどうにかなってしまいそうなんですけど…」


 何故かジト目で見られた。解せぬ。


「…まぁいいです。さっきも言いましたが私を抱いて欲しいんです」


 顔は赤いままだが、しっかりした意思を宿した目ではっきりと口にした。冗談でも気が狂ったわけでもないらしい。


「だから何のつもりだと聞いている」


「えっと…」


 冷静に聞き返すと口にし辛いのか躊躇いを見せるが、やがて話し始めた。


「…さっきせんぱい達は私達を残して外に出たじゃないですか。最初は安全地帯に来れた安堵から気が抜けていたのですが、冷静になると食料はほとんどなく、このまま先輩達が帰って来なかったら閉じこもって餓死するか、外に出て襲われるかしかないと不安になったんです。私達だけで食料調達なんて出来るとは思いませんし」


「だから体を使ってでも繋ぎ留めようと?」


「…はい」


 思わずため息が出る。おそらく斉藤さんも晴人に同じ事を言っているだろう。


「っ!お願いします!私の体を好きにしていいですから見捨てないでください!」


 同じがため息を吐いたからか、焦ったように北條が懇願してくる。今のところ見捨てるつもりなんてない俺は北條に笑顔で告げてやる。




「だが断る」



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