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魔王の部下も楽じゃねえ!  作者: 普通のオイル
第十一部 シズ王国編
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シズ王国の情報/指輪

 

 シズ王国は小国であった。あくまでデリウスと比べて、ではあるが。総人口は500万人強。デリウスの1000万人と比べると見劣りする。しかし、軍事力はデリウスと比肩しうるほどで、それが直接の理由ではないが、シズとデリウスは度々衝突を起こしていた。


「俺が知ってるのはそんくらいだな。クラウス君はシズについては詳しかったりする?」


「グレゴリー様と大差ないですよ。シズはそんなに調べていませんからね」


 シズ王国はデリウス王国と違って魔界とは直接国境を接しているわけではない。割けるリソースの関係で諜報部はシズ王国の調査をあまり行っていなかった。


「自分の知る限り、仲が悪い原因としては領土問題ですね。取った取られたでずーっとやり合ってます。人魔大戦みたいな大規模な戦争はありませんが、小規模の諍いがちょこちょこといった感じです」


 人間と魔族がお互い総力を上げて殺しあった人魔大戦のような、主義主張による戦争ではないため、憎しみ合うような形にはなっていなかった。


「お互いの国民も、この付近で戦争が始まると“ああまたか”と言う感じになっていたみたいですね。ここしばらくは小規模な戦争もないようなので、若い世代がどう思ってるかはちょっと分からないですが」


 この2国間で最後に戦争があったのは20年前のことだ。それ以降は領土問題を抱えつつも交流をしているようである。俺はそこまで聞いてようやく思い出した。


「ああ、なんかシズ王国を煽ってデリウスと仲違いさせられないかって計画案が確かあった気がするな。デリウスの気を逸らせないかって」


「ええ、そもそも諜報部が行なったシズ王国の調査はその計画が元になっています。その結果、難しそうだという結論に至ったわけですが」


 調査の結果、シズは人魔大戦時にデリウスに秘密裏に支援していたことが判明した。その頃かなり仲が悪かったにも関わらずだ。デリウスが魔王軍に占領されれば次はシズが国境を接することになるので当然と言えば当然だった。俺達にシズ侵略の意志はなくともシズはそうは思わない。


「なかなか難しいわな。せめてもうちょっとお互いがピリピリしてくれてりゃあな。ああ話が逸れた。それでシズ王国概要はそんなもんとしてサミュエルって貴族に心当たりは?」


「さっぱりです。その貴族に関しては現地で情報収集ですかね……」


「全く気が滅入る話だ」



 ーーー



「レイラってさぁ、半年くらい今の仕事お休みできないかな?」


 俺が真面目な顔をして言うと、レイラはどう答えたらいいのか分からなさそうな顔をした。


「えっとどういうこと? それって冗談で言ってるのよね?」


「いや、冗談じゃなく。すぐにでもシズ王国に行かなきゃならなくてさ」


「無理に決まってるじゃない。そんなに休むんだったらもういっそ辞めてしまったほうがいいわね」


「ですよねー」


 リヨン中佐に働き口を紹介してもらった手前、こんな短期間で辞めるのはあまりよろしくない。そうなると今回はレイラを連れて行くのは無理そうだな。まぁ分かってはいたが一応聞いてみただけだ。俺は諦めが悪くてな。


「お仕事なんでしょ? 我慢しなさい。お仕事頑張ってきたらいっぱい甘えさせてあげるから」


「そんなこと言わずに今から甘えさせてください」


「えっと? この会話ってギルスさんに聞かれてるのよね?」


「さぁどうだろうね?」


 なんて言っているが、こんな事もあろうかと魔王シアター改はポケットから出して向こうの机の上に置いてある。レイラと二人きりになる時だけは、魔王様に覗き見されないようにしているのだ。この事について魔王様は何も言ってこないので、変えるつもりもない。


「いっそもっと聞かせちゃおうか?」


「ああなんだ。今は聞いてないのね」


 流石に攻め過ぎてあっさりバレてしまった。仕方なく俺は真面目な話に戻る。


「冗談はともかく、下手すると半年近く会えないかもしれないからそのつもりでいてくれ。3日後にはメルスクを出る事になると思う」


「……本当に急なのね」


「寂しいから毎日連絡していい?」


「出来るの? あなたが忙しくないんだったらいいけど」


 毎日は……ちょっと無理かもしれない。出来るだけ電話する事にしよう。俺がそう伝えると、レイラは少し思案して何か思いついたように言った。


「ああそうだ。良いものあげるわ。今度あなたに渡そうと思ってたんだけど長い間会えないんならもう今渡す事にするわね」


 ちょっと調整してくるわ。そう言って一度自室に戻ったレイラは、その後しばらくして何やら箱を持って戻ってきた。


「お、何それ?」


「プレゼントになるのかしら?」


「なんで渡す側が疑問系なんだよ」


「良いから良いから。開けてみて」


 箱を開けると鈍く銀色に輝く指輪が見えた。未来ごと売り渡してしまうようなタイプの、宝石で装飾されているものではなく、普通のシルバーリング。


「あれ? 記念日とかだっけ? 俺が忘れてる?」


「いや別に。まぁ良いからそれを私だと思って付けときなさいよ」


「よく分からんが分かったよ。ありがとう。大事にするわ」


 なんか結婚指輪みたいだな。レイラから貰ってるから逆だし、お揃いじゃないから違う気もするけど。もしかするとレイラの故郷では女性から指輪を渡す事に何か特別な意味があったりするのだろうか。そう疑問に思って聞くと、特に無いわねとの返事をいただいた。


「えーとサイズと重さがちょうど良かったのよ」


 サイズと重さ?? 急に物質的な要素が出てきた。一体どういう意味なのか重ねて聞いたが、分かった時のお楽しみよ、とレイラにはぐらかされてしまって教えてはくれなかった。


 結局、今回はサリアスさんとクラウス君の二人を連れて行く事にした。カナリスさんがかなり行きたがっていたが、多分王都の蟹クリームパスタが食べたいだけなので今回は拒否した。後が怖いけど仕方ない。


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