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魔王の部下も楽じゃねえ!  作者: 普通のオイル
第十部 日常編
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適材適所

 

「グレゴリー様嬉しそうっすね? なんかいい事でもあったっすか?」


「ん? ああ、同じ価値観を共有してるって素晴らしいなって再認識してな」


「よく分かんないっすけどグレゴリー様が嬉しいなら良かったっす!」


 適当だなぁ、まぁそんな事はどうでもいい。今日俺はこの適当な男、バートンに用があって呼び出したのだ。


「今日お前を呼んだのはちょっと頼みがあってな。ある事をやって貰いたいんだ」


「え、もしかしてとうとう俺っちはクビっすか? 使えねえ奴だからって捨てられるんすか! 嫌っす! 許してください!」


「誰もそんなこと言ってねえだろ」


「でもグレゴリー様の事だから“自然がいっぱいで人の居ない素敵な場所があるんだ”とか言って山奥に送り込むんすよ! そこで無限に魔物狩りやらされるっす! 俺っち知ってるっすからね!」


 ふむ、そうすればこいつは誰とも会わずにボロを出すことも無くなるわけだ。なかなか考えてるじゃないか。


「それもありだなぁ……じゃなくて違うっつってんだろ。今日お前を呼んだのは絵を描いてもらいたいからなんだ」


「絵っすか?」


「そうそう絵を描くだけ。簡単だろ?」


 バートンには絵の才能がある。前にレジア湖にこの男を派遣した時にタマちゃんの調査報告書を書かせたことがあったが、あの時の絵は非常に上手く描けていた。この才能を放っておくのは惜しい。

 そこでバートンに美術方面の仕事をやらせてみようと思って今日呼び出したというわけである。


「ところでお前、当然魔物には詳しいよな? 冒険者な訳だし」


「ま、まぁ上級冒険者っすからね! 当然っすよ!」


 えっへんと胸を張るバートンに俺は畳み掛ける。


「ほうほうそれは頼もしいな。流石は上級冒険者様だ。そんな上級冒険者様であらせられるバートン君は当然薬草類にも精通してるよな!」


 俺が同意以外の答えを認めない感じで捲し立てると、若干ビビりながらもバートンは答える。


「そ、その辺の連中に比べたら詳しいっすよそりゃあ! なんってったって上級冒険者っすから!」


「おおそうだ! よく言った! それじゃあお前、明日からこのリストにある魔物と植物の絵を描いてってくれ」


 俺は懐から一枚の紙切れを出す。それは主に新人冒険者が出会うであろう魔物や有用な植物をピックアップしてリスト化したものだった。


「いちにいさん……50種類くらいないっすかこれ。全部やるっすか?」


「ああ、52種類ある。これを全部やって貰いたい」


「一体何の為に!?」


「新人冒険者用の図鑑を作ろうかと思ってな。今までそういう資料って全く無かったらしいからさ」


 冒険者への事前の調査で、そういう絵付きの資料が欲しいという声は結構聞かれていた。だが、ギルドの職員は今まで誰もそれを作ろうとはしなかった。なぜなら手間も金もかかる割に見返りが少ないから。


 だから資金に余裕のある俺達がやる。それにこれは人間界にだけ得がある話ではない。これで冒険者が増えて魔物狩りに行く人間が増えれば、魔物の絶対数が減る。魔物には我々魔族側も悩まされているわけで、人間側が頑張って駆除してくれれば魔族側の被害も減るだろうという話である。

 これはトールへの協力の一環ではあるが、魔族にとっても利益のある一石二鳥のプランなのだ。


 そんな説明をしてやったら、バートンは目を向いて叫んだ。


「どうせそんなこったろうと思ったっすよ! グレゴリー様が俺っちのことそんなに持ち上げるなんておかしいと思ったっすもん!」


「それはそうね」


「そこは否定して欲しかったす……」


「うそうそ。他はともかく、お前は絵の才能は誰よりもあると思ってるから。あ、これは本当のやつね」


 それは俺だけでなく、商会のみんなも認めるところである。そんな風に俺が本音で褒めると、それを感じ取ったのかバートンもまんざらでもない顔をしてつぶやく。


「へー、そうっすか……絵の才能……」


「ああ、そうだ。この任務はな、絵の才能と魔物を狩る能力の二つが揃ってるお前だからこそ出来る事なんだ」


「……分かったっす。良いっすよ、これが魔界のみんなを守ることに繋がるって言うんなら俺っちやるっす!」


「偉い! 流石はバートンだ。あ、そう言えば言ってなかったけど最初のうちは慣れないと思うんでサリアスさんに手伝って貰う事にしたからよろしく」


「うぇ!? サリアスさん!?」


 手伝わせるというのは建前で、実際はサボってないかの監視である。一日でだいたいどの程度進むのかを大雑把に把握したら、一人でやらせてみようと思う。悪いなバートン。


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