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魔王の部下も楽じゃねえ!  作者: 普通のオイル
第十部 日常編
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同じ価値観

 

「マゴス君、そっちで今何か困り事とかあるかい?」


 王都支店チームの代表であるマゴス君に、俺は定期連絡をしていた。


『そうですね。ちょっと開店予定が後ろ倒しになるかもしれません。業者が機械の搬入に手間取ってるみたいで。今のところ問題はそのくらいですかね』


 それならば大きな問題は無い。俺は正直予定通りに行くとは思っていなかった。それよりもマゴス君達の安全確保が最優先だ。何かあっても王都には簡単に助けに行けないからそこには注意をしっかり払ってもらいたい。俺がそんな内容を伝えたらマゴス君は笑って言った。


『抜かりはありませんよ。曲がりなりにも僕は諜報部の所属ですからね』


「そりゃそうだ。余計なお世話だったな」


『グレゴリー様の懸念を払拭する為に付け加えると、セリア教は毎日しっかり監視してます。それにほら、例の伯爵様の部下とも連絡取り合ってますから』


 シャリーン伯爵の懐刀クラウドの事だ。あのセリア教と敵対している男が味方でいるなら滅多なことにはならないだろう。


「あいつなんか言ってたか? 俺の方には全く連絡寄越さないからさ。メルスクにいるからかもしれないけど」


『そういえば冗談か本気か分かりませんけど、また王都にグレゴリー様が来ることがあったら今度は伯爵と会わせたいとか言ってましたよ』


「へー、俺をシャリーン伯爵に」


 正直王都なんて二度と行くつもりはなかったが、また行かなくてはならないかもしれない。伯爵と面識ができればそこから更に知り合いが増える可能性もある。人間界の中枢に近づく為にはまたとない機会だ。


「それ、今度クラウドに本気かどうか聞いといてくれる? 本気ならまた王都に行く計画立てるからさ」


『はい、分かりました。一応こちらもそれなりに本気であることは伝えておきます』



 ーーー



「悪い、待たせたな」


「待ってないわ。今来たところだから」


 それって普通俺が言うべきセリフだよなと思いながらレイラを見る。今日はレイラは武器は持っておらず、他所行きの格好をしていた。


「どう? 心の準備は出来た?」


「あんまり。面接で緊張しない人なんてたぶん居ないわよ」


「それもそうか」


 今日の俺の任務はレイラを陸軍の魔導科に連れて行くことだ。以前からレイラの勤め先を探していたが、補給科のリヨン中佐に良い勤め先はないものかと話したら、魔道科に掛け合ってくれることになったのだ。


「あなたと軍に付き合いがあるからって、そんな簡単にポンと入れてくれるものかしら?」


「だからこそ面接するんじゃないか? 向こうもそこでしっかり判断するつもりなんだろ」


 リヨン中佐の紹介だからといって、形だけの面接という事にはならないんじゃないかと思っている。一般の審査と同じくらいしっかり見られるかもしれない。


「あのねぇ、なんでそんな緊張させるような事を言うの? 余計ドキドキしてきたじゃない」


「すまんすまん、まぁ別にダメでも他を見つけりゃいいからあんま気負わなくていいよ」


「あら? でも私が軍に潜り込めたら貴方からすれば嬉しいんじゃないの? 内部情報が集められて」


「いや、別にそういう意図があってこの話を持ってきたわけじゃないよ」


 リヨン中佐からこの話を聞いた時に、俺がその考えに至らなかったかと言えばそれは嘘になる。でも、俺はレイラにはあんまりそういうスパイの真似事みたいなことはして欲しくなかった。


「俺がそれを頼んじゃうとさ、なんか元々情報収集させるのが目的で魔法関連の仕事探してたみたいになるじゃん。俺は純粋にレイラのスキル向上を願って仕事を探してたんだから」


 他にも危ないからやめて欲しいとか立場を利用してるようで嫌だとか色々理由はあるが、一番大きいのはそれだ。


「だから寧ろやらないでいてくれたほうが嬉しいかな、俺としては」


 まだ入れると決まったわけではないから気が早い気もするが。


「でも会話で得た情報を貴方に教えるくらいだったら構わないでしょう? それなら危険じゃないし」


「え? まぁうーん……それくらいなら」


「前にも言ったけど私は貴方の役に立ちたいわ。ううん、()()()()()()()()()()()


「いやいや、たたないといけないって事はないでしょうよ……」


「私は貴方からたくさん与えてもらってる。でも今の私は貴方に何も返せていないわ。それって凄く不健全な状態じゃないかしら?」


 俺はレイラのその言葉にちょっと驚いていた。案外俺はレイラの事をよく分かっていなかったらしい。それと同時に少し嬉しくもあった。


「レイラは……俺と似てるな」


 俺自身、一方向の人間関係など存在しないと思っている。利害関係の一致や、弱みを握り合ってる状態が、俺にとって安心できる人間関係だった。そしてその考え方はあんまり普通ではないというのも理解していた。


「ならあえてこういう言い方をさせて貰うと……例えば俺に何かあったとしたらレイラは助けてくれるだろ?」


「当然よ」


「じゃあレイラは俺を守る戦力なわけで、実際俺はそこにはかなり期待してる。で、ただでさえ強いレイラがその上魔法を使いこなせるようになってくれれば更に戦力が強化されるわけだ」


 普通、彼氏にお前は戦力として役に立ってるなんて言われたら憤慨するだろうが、レイラが俺と同じ考え方をしているならこれで安心するはずだ。


「レイラはちゃんと俺の役に立ってる。心配しなくていいぞ」


 真顔で言って気づいたが、普通に恥ずかしい事を言っている気がする。多分今俺の顔は赤くなってるはずだ。こういう事をサラッと言ってばっちり決められればもっと締まるんだけど。


「貴方ってほんっと……! 私これから面談なんだけどどんな顔して臨めばいいの!?」


「あ、そいうやそうじゃん」


 まぁレイラも赤くなってたからそこまで気にしなくてもいいのかもしれない。


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