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魔王の部下も楽じゃねえ!  作者: 普通のオイル
第十部 日常編
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奴隷商

 

 奴隷商って言うから檻に人が繋がれているようなありがちな光景を想像したけれど、そんな事はなかった。奴隷商とは言うものの、どちらかと言うと人間の売り買いがメインではなく、人材派遣が主な収入源になっているようである。


 店というにはあまりにも普通すぎる宿舎のような建物。ここがその奴隷商だと聞いたので、早速中に入ってトールから預かった紹介状を番台に見せた。すると特に揉める事もなく、あっさりと奥へ通される。

 しばらくすると支配人が出てきて俺達にペコペコ頭を下げ始めた。意外なことにその人は俺たちの事を知っていた。


「ようこそおいでくださいました。私は総支配人のオスカーと申します。あなた様はグレゴリー商会のグレゴリー会長でございますね?」


「よくご存知ですね? 別に来るなんて連絡はしてなかったと思いますが」


 言いながらトールが連絡してくれたのかとも思ったけれど、紹介状を受け取ったその足でここまで来たので、その線は薄そうだなと思い直す。


「この街の事ならば知り尽くしておりますとそう言えれば格好がついた所ですが、実を申しますと私どもはあなた様の商会の商品を愛用させていただいておりまして。その関係で存じ上げていたという次第で御座います」


「へぇ、うちのポーションをそんなに?」


「おや? トール様からお聞きになっておられませんか?」


 全く聞いてないと答えると、支配人オスカーは経緯を説明してくれた。


 話によると、この奴隷商の何人かは冒険者ギルドで冒険者として活動しているらしかった。冒険者として活動する以上、不意の怪我は避けられないので、ポーションは必須アイテムとのことである。


「グレゴリー商会のポーションは効き目抜群ですから我々としても助かっております。……以前までは本当に酷かったですから!」


「ははは……メナス製のポーションを飲むなら水のほうがマシとまで言われてましたからね」


 何というか正直なところ、本音で言えばメナスには感謝しかない。あいつが悪どいことをやっていたおかげで普通の物を普通に売るだけで評価が上がっていくからな。


 しかし……何というか別に普通じゃないか? いや、トールがお勧めしないなんて言うからよっぽど酷いところなのかとビビってたけど、極めて理性的で話も通じる。サリアスさんも最初は警戒してたけどちょっと緩んだような気がする。まぁ気のせいかもしれないが。


「それでは、そろそろ御商談と参りましょうか」


 俺は早速要望を伝える。魔法が使えるかどうかは関係無く、魔力量の多い奴が研究のために欲しいと。要望を聞いたオスカーは渋い顔をして答えた。


「魔法は使えないが魔力が多いとなると……候補は限られてきますな。少々お待ちを」


 しばらく待っていると、オスカーがどこからかリストを持ってくる。中には名前が書かれていて、上から魔力が多い順に並んでいるようだった。


「魔力の多い人間をお求めでしたらこの中からお選びいただく事になるかと思います。ただ、上の二人はご要望に沿わないので除外して考えてください」


 オスカーの言う上二人は魔法をバリバリ使いこなすタイプの人間だった。そのせいかだいぶ高い。もしかすると既に派遣業務を沢山こなしていて、オスカーが手放したくないのかもしれない。

 それは置いておいて残りの4人である。この4人はそれほど魔力量に違いはなかったが、ただ一人だけ安い値段がついていた。俺はリストの中のその名前を指差す。


「この……スフィアという人はなんで一人だけ値段が安いんです?」


 オスカーは、ああそれか、という微妙な顔をした。


「……その子は事故で左腕が無くなってしまったのです。それと顔の左側に火傷を負っていて見た目が良くないのもありますな。更に残念なことにそのせいでスフィアは自分のことも満足に出来ないのです」


 ああそういうね。まあテンプレ的展開ならその子を引き取って魔法かなんかであっという間に治してその子が俺にベタ惚れってところだろうが、生憎治療のあてが無いのでそういうわけにも行かない。でも一応見させて貰おうかな。気になるし。

 俺はオスカーにその子も含む4人を見させてもらうことにした。


 4人を見て誰がスフィアなのかは一目で分かった。何しろ左腕がないからな。それよりもスフィアに寄り添うように立っているもう一人が気になって聞いてみる。


「あの隣の彼女は?」


「スフィアの姉のラフィアです。双子なんですよ。リストの一人でもあります」


 ほう。また芯の強そうなお姉さんだこと。ラフィアは自分達の話をしていると知ってか俺達を睨みつけてきた。絶対言いなりにはならんぞという強い意志を感じる。そんなふうに見られると逆に興味が出てきた。ちょっと話してみるか。


「君が彼女のお姉さんって聞いたけど?」


「私を買うつもり? だったらこの子も一緒に買って! でないと言うことなんて絶対に聞かないんだから!」


「ラフィア! お前はなんて事を!」


 おお、いきなり脅しとは。まだ誰もお前のこと買うなんて言ってないのにな。しかしすごい姉妹愛だ。こりゃ妹だけってのはちょっと厳しそうだ。

 怖い顔をしている隣のサリアスさんをやんわりと手で制しながら、俺は聞いた。


「もし俺が二人とも買った場合、妹の世話は君が責任を持ってするのかな?」


 俺の言葉にラフィアの目の色が変わった。


「勿論。今までだってそうしてきたわ。一緒にいさせてさえくれれば迷惑はかけないしなんだってするわよ?」


「ほう? たとえどんな場所でも二人セットなら文句は言わないな?」


 今まで目が死んでいた隣の妹ちゃんに若干光が戻る。


「……姉さんと一緒にいられるなら何処へでも行きます。例え地獄の底へでも」


 行くのは魔界だがな。まぁ一人が二人になったってそんなに変わらないだろ。よし決まった。あとは値段交渉だな。俺はオスカー氏の方へクルッと向き直った。


 結局、まとめて売った方が面倒がなくて向こうも助かると言うことでだいぶ安く売ってくれることになった。あとは彼女らがうまく魔界に馴染めるかどうかだけだ。

 ああ嘘。レイラになんて言われるかだけはかなり不安です。


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