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魔王の部下も楽じゃねえ!  作者: 普通のオイル
第十部 日常編
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魔力の充填方法

 

 王都に店を構える以上、信頼できる魔族を王都に派遣しないといけない。俺自身が行くということも考えたけど、あくまで軸足はメルスクに置くつもりであるので、司令塔である俺が行くのは難しい。


 結局誰に行ってもらうか考えた結果、マゴス君とアイリスちゃんの二人に行ってもらうことにした。彼らは諜報部出身で諜報活動には長けているし、二人セットなら拒まれる事もないだろうという判断だ。


「という事で君達には王都での店舗経営を担ってもらう。とは言ってもこれは表向きで、実際にはデリウス王城について探ってもらうのが任務になるけど」


「分かりました。しかしそうなると少し寂しくなりますね……」


 そう言って寂しそうな顔をするアイリスちゃん。魔王シアター(ケータイ)があるとはいえ、顔を見られなくなるのは確かに寂しい。


「連絡は頻繁にするけど長期の出張になるから今メルスクにいる連中とは長い間会えない事になると思う。代わりと言っちゃなんだけど魔王シアターは自由に使ってもらって構わないから」


 皆、魔王シアターはあんまり個人的なことで使うべきでは無いと思っているようだけど、別にどんどん使っていいと思う。便利だし。


「はい、では必要があれば使わせて頂きます」


「それと従業員として元軍人の人間4人組にも行ってもらうつもりでいる。元々そういう話だったしな。彼らも従業員としての訓練は終えたし戦力になると思う。ただ、俺達が魔族とは知らないのが難しいところだけど」


 俺達が魔族だと知らない以上、王宮についての情報収集などに行かせるのは難しい。ライバル企業の情報を探るとかそういった形でならできると思うけど。要は使い方次第だ。


「取り敢えずはそんなところかな。追加で何かあったらまた連絡するから」


「はい、了解です」


 話を終えて、二人を帰して一人になる。ちょっと一息つこうかとお茶を淹れていたら魔王様から電話がかかってきた。


「はいもしもし?」


『休憩中悪いな。ちょっといいか?』


「ええ、見ての通り暇なので。何かありました?」


『お前が王都で拾ってきたフィリス氏が直接話したいそうだ。魔力タンクの件で何か話があるらしくてな』


 エルギス・フィリス。王都で借りる事になった物件のオーナー。正直に言うと、本国の研究機関に丸投げしてからはすっかり忘れていた。


「ああそうですか。じゃあ代わってもらえますか?」


『いや、面倒だからあの男にも魔王シアターを渡しておいた。この後本人から直接掛けさせる』


「なるほど。了解です」


 やがて魔王様との電話が切れると、すぐにまた電話が掛かってくる。


「はい、グレゴリーですが」


『おお、グレゴリー君か! 久しぶりだのう。ワシじゃよフィリスじゃよ』


「お久しぶりですねフィリスさん。その後どうですか?」


『お陰様で何とかやっておるよ』


 フィリスさんは、魔界に行ってからの出来事を少し興奮気味に聞かせてくれた。

 魔界は思っていたよりも文明的だとか、飯が意外と美味いだとか、最初は白い目で見られているように感じたけど、魔王軍参謀である俺の名前を出したらそんな事は無くなったとか諸々。


『特に魔法学研究所のカーター所長が良くしてくれておるから今のところ不都合は無いよ』


「それなら良かったです。ところで魔力タンクについて何か話があるとか聞きましたけど?」


 先を促すと、フィリスさんはコホンと咳払いをして語り出した。


『この研究所でも親父の研究と似たような事をしていた者がおってな。今はその者と一緒に、親父の研究資料の確認作業を行っておる』


 魔族でも魔法が使えるように、というのは魔族の悲願でもあるので、当然そういった研究内容があるのは知っていた。だからこそ俺はフィリスさんを魔法学研究所に預けたのだ。


『それで今はまだいいんじゃが今後研究を進める上でどうにもならんことが一つあってな。今日はそれの相談じゃ』


「どうにもならない事?」


『ああ、親父の魔力タンクは誰かが魔法を充填する事を前提としとるのだがここには充填できる奴が誰もがおらんのじゃ。ワシにも無いしな』


「ああ〜そういえばそうでしたね」


 魔族には魔法を使える者がほぼ居ないのは以前話した通りだが、それは主に魔力量が少ない事に起因している。だから当然、魔族では魔力を充填するのも難しいという事になる。


『何とかならんかと頭を悩ませておるところだ』


「うーん……」


 難しいな。手っ取り早いのは魔力のある人間を魔界に連れていく方法だけど、そんなのそうホイホイ居るわけないし……いや、レイラが該当するけど彼女は例外だ。それにレイラの場合普通の魔法使いではないし、仮に普通であっても預ける気なんかサラサラ無い。さて、どうしたものか。


「思ったんですが今まではどうしてたんですか?」


『あん? 前に話しただろう。ワシ自身はもう研究らしい事はしとらんかったと。ああ親父の頃の事か? その頃は親父が自分で入れとったわい』


「ああいやごめんなさい。フィリスさんではなくて魔法学研究所の方ですよ。同じような研究をしてたって言いましたよね?」


『ああそっちか。似てるとは言ってもこっちのは空間中に存在する魔力を集積して保存、利用する研究じゃからちょっと違うんじゃよ。ほれ、今使っとるこの……えーと板切れもその技術を使っとる』


「ああコレ、そんな事やってたんですね?」


 魔王軍の謎技術凄い。あんまりよく分からないで使ってたけど、技術の結晶じゃないか魔王シアター改。これからもありがたく使わせていただこう。


「えー話を戻しますけど、その空間中の魔力を保存する技術でそのタンクを一杯には出来ないんですか?」


『まぁそう言われるだろうなとは思っとったわい。出来ん事は無いがそれだと研究の方向性がな……元々親父は体内魔力の抽出に関する───』


 フィリスさんが続けて技術的な話を始めたので慌てて遮る。


「あー、難しい話をされても俺はよく分からないんでそれはいいです。それで結局アレですか? お願いってのは具体的には誰か魔力の多い奴でも攫ってきてくれって事ですか?」


『言い方は悪いがそういう事じゃな!』


 はー、言うは易く行うは難しってやつだぜそれは。だいたい魔力が多い奴なんて数が限られてるし、攫っても問題ないやつなんてもっと少ない。


「まぁなんとかやってみます。ただそう簡単にはいかないので、ひとまず今できる範囲で研究を進めておいてください」


『まぁ仕方ないわな。気長に待たせてもらうわい』


 やれやれ、また仕事が増えてしまった。なるべく早く見つけないといけないな。



 ーーー



「奴隷商?」


「はい、ここメルスクにも一応あるようですよ? そこを当たってみるのが1番手っ取り早いのではありませんか?」


 サリアスさんに(くだん)の攫っても問題ない魔力充填係を探している話をしたら、そんな事を言われた。

 そう言われて気づいたけどピッタリだな奴隷は。そんな人権皆無な存在がいるのであれば活用しない手はない。


「そういえばそんなのもあったね。あんまり普段聞かないからすっかり忘れてたよ」


「まぁ私もあまり詳しいわけではないんですけどね。トールさんなら少し知っているかもしれません」


 ということで、この街に住んで長いトールに電話で聞いてみる事にした。


「もしもしトール? グレゴリーだけど」


『あーどうした? 何か緊急事態か?』


「いや別にそんなんじゃない。ちょっと聞きたいことがあってさ」


 俺はトールに事の顛末を話して聞かせた。


『なるほど奴隷商ねぇ……知らない事は無いけどよ。あんまお勧めはしないぜ?』


「え? なんでさ」


『んー……まぁこればっかりは口で言ってもな。自分の目で見りゃ分かると思うから紹介してやるよ』


 その後、紹介状を書いてやるからギルドまで取りにこいと言ってトールはあっさりと電話を切ってしまった。

 なにか壮絶に胸糞悪い場所だったりするんだろうか、奴隷商というのは。


「うーむ……」


「どうされました?」


 トールとの会話が聞こえなかったサリアスさんが不思議そうに俺を見つめる。


「あーいや。なんか紹介状を書いてくれるってさ。あんまりお勧めはしないみたいだけど」


「どうしてですか?」


「いや、見れば分かるからって理由までは教えてくれなかった」


 俺の言葉を聞いて何か考え込んだ様子のサリアスさんは、決心したように顔を上げた。


「……だいたい予想はつきます。そんなところにグレゴリー様だけで行かせられません。私も行きます」


「え? まぁそれならありがたいけど」


 こうして俺は、サリアスさんと二人で奴隷商に向かう事になった。


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