表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の部下も楽じゃねえ!  作者: 普通のオイル
第三部 地盤を築こう
18/102

定例報告会

 

「じゃあみんな気になってるだろうからこの件からね」


 俺は魔族のみんなを集めて報告会を開いていた。


「今代の勇者に関する情報だけど、覚醒勇者が使う“真実の目”は常時発動型ではなく、意識して発動するタイプだという事が分かった」


 “真実の目”が常時発動型ではないと言うのは非常に大きい。何故なら視界に入っただけで、魔族だとバレる心配はなくなるからだ。

 それでも発動コストは掛からないらしいので一概に安全とも言いきれないのが悩みどころだが。


「よって冒険者ギルド及び周辺宿に無闇に近寄らなければ仮に覚醒勇者が出現したとしても見つかる可能性はほとんどなく、危険性は低いと判断した」


 まぁ、今日は早速レイラとバートンがパーティーを組んで依頼を受けに行っているので、全然守れてはいないんだけどね。こればっかりはレイラへの報酬なのでしょうがない。


「よって、用の無いものは無闇に冒険者ギルド、及びその周辺には立ち寄らないこと。この決定を持って我々は撤退しないことに決めた。以上。何か質問は?」


 そう言って見回すとみんなホッとしたような様子を見せる。そりゃあ色々と用意してきたのに全部投げ捨てて撤退なんてことになったら流石にへこむからな。


「無いね? それじゃ二つ目。レイラを尾行していた者、これの名前を仮にミスターXと呼称するけれど、このミスターXの情報は現状全く無い。よってレイラの周辺を洗ってミスターXらしい人物がいないかを探す。これ、最優先ではないけど俺が取り仕切るのでよろしく。クラウス君、悪いけどやって貰える?」


「はい、分かりました」


 もう諜報部に迷惑がどうとかは言ってられないので遠慮なくお願いする。

 そろそろ諜報関係の仕事ができる人員を増やさないと諜報部の二人が過労死しちゃいそうだ。


「なんかこの件に関することで質問はあるかな? はい、クラウス君」


「ミスターXですが、例の“クレイ”との関係性については調べた方がいいでしょうか?」


「一応調べてほしいけど、関係性は薄いんじゃないかと思ってる。もし関係があるなら俺達の周辺にも出現していないとおかしいからね」


「了解しました」


 現状はレイラの周辺にしか現れていないので、レイラ個人に関係がある人物の可能性が高い。

 というかクレイの方は、あれだけ派手に邪魔をしてやったのに何の音沙汰もない。そもそも眼中にないのか、それとも気づかない内に情報収集されちゃってるのかは分からないが不気味な話だ。


 まったく、問題が山積みすぎて人間界を裏から操るなんていったいいつの事になるのやら分かったもんじゃない。


「えーとじゃあ最後。これはいいニュースだな。えーと我々の回復薬製造所が正式に冒険者ギルド提携店として認められました」


 まぁ認められましたも何も、その為に色々手を回してきたんで当たり前と言えば当たり前だけど。


 製造所自体はもう稼働を始めていて、回復薬を作り始めている。この前ギルドで試験的にちょっと配ったら、効果が高いってことで評判も良かった。正式にギルド内で販売出来るようになればかなり売れる筈だ。


 あぁそうだ。あとこれも言っとかなきゃ。


「あと一点忘れてた。製造所にレイラと他2人、計3人の人間を雇ったんで気を抜いて変身の秘術を解いたりしないように。勿論あそこでは魔族関連の話題も無しで。特にレイラは住み込みで働くので気をつけるように」


 はーい、と皆が答えたのを見て報告会を終える。


「じゃあ定例の報告会は終わり。各自、自分の仕事に励むように」


 さて、俺もトールのところに行かなきゃな。なんか手伝って欲しい事があるとかで、約束した手前やらんわけにも行かない。なるべく簡単なのだといいんだけど。



 ーーー



「陸軍のリヨン中佐が新しい回復薬の事でお前と話がしたいらしい。だから今度会ってくれないか?」


 俺がギルドに手伝いに来たら、トールは開口一番そんな事を言った。


「それがお前の言ってた手伝って欲しい事なのか?」


「ああそうだ。どうやらお前が作った回復薬の評判を聞きつけたらしい。是非軍にも卸して欲しいってな」


 いや、何が楽しくて敵国の軍隊を助けるような真似をしなきゃならないんだよ。絶対嫌だ。


「冗談じゃない! トール、お前俺たちの立場ってちゃんと分かってる?」


 こちとら魔族なのによくこの話を持ってきたな、トールは。


「いや、勿論俺は分かってるよ。だけど立場上あんま断れなくてな。だって提携先にお前のとこの製造所を選んだのはこの俺なんだぜ?」


 なるほどな。ギルドマスターが提携先を選んだのだからそっちに先に話が行くのは当然だし、トールが固辞する理由も無いのも当然だ。しっかし面倒だな、なんとか断れんものか。


「なぁそれって断っても大丈夫なやつ? 国家反逆罪とかで処刑されたりしない?」


「断り方によるだろ。なんかそれっぽい理由つけて断ってくれよ。お前ならなんか思いつくだろ? 参謀だし」


 こいつ……めんどくせえからって俺に全部投げやがったな。しょうがない、生産設備が足りないとか言って断るしかないか。


「で、俺はどうやって連絡とればいいの? そのリヨン中佐とは」


「来週のどっかで会いたいらしいぞ。お前どっか空いてる?」


「まぁだいたい空いてるけど、どうせなら水曜がいいな。その日なら一日中空いてるから」


「分かったよ。じゃあそんな感じで伝えとく」


 しかし軍人か……軍人は魔法使いとか多いから変に怒らせたりすると非常におっかない。ちゃんと資料を用意して丁重にお断りしよう。


 数日後、リヨン中佐から水曜日の午後に会いましょうという連絡が届いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ