第82話 空音との約束
現世へと戻って来たけど記憶の曖昧な大地。やはりここでも記憶の鍵を握っていたのはロケットでしたね。
目を覚ますと病室のベットの上だった。
「あなた」
泣いて喜ぶ真優美。俺はあの事故から半年以上眠ったままだったらしい。
ずっと夢を見ていたみたいだけど、思い出せない。なんか凄く大切な事なのに思い出せない。リハビリ中もずっと思い出せない自分にイラだっていた。
半月が経ち退院の日、真優美の用意してくれた服の中からあのロケットが落ちると夢の記憶が蘇ってくる。グール達との戦い。空音との思い出と最後の約束。
【回想】
「お母さんの事……宜しく」
【回想終了】
そうだ俺にはやらなきゃ行けない事が……。
「真優美ごめん。俺、すぐに行かなきゃならない所があるんだ優大の事、悪いけどもう少し宜しく」
「あっちょっと……もう」
翔流に応援の電話したけど、来れるかわかんないと言ってたな。確かに忙しそうだもんな。電車を乗り継ぎ急いで中学校へ向かう。中学校では工事の真っ最中であった。
「すみません。友人の大切な物がここに埋まってるんです。お願いです、工事を少し待ってくれませんか?」
「いやそんな事言われてもねぇこっちにも工期があるから………あっちょっと」
業者の忠告も無視して裏門へと向かう。夫婦桜の根元確かここに埋めたはずなんだけど、一人で掘り起こすが中々見つからず、気付けば夕方に………万事休すかと諦めてかけたその時、翔流を始めとするクラスメート達が集まり一斉に掘り進める。
「確かこの辺だったよな。ほらみんな一斉に掘れ」
「みんなありがとう。助かるよ」
掘り進んでいくと見覚えのある箱が出てくる。俺達のタイムカプセルだ。中にはガラクタがいっぱい入っているが空音のはっと……カセットテープ?
急いで空音の、お母さんに届けに行く事にする。
「すみません目黒です。空音からこれをお母さんに預かって来たんですけど」
お母さんにカセットテープを手渡す。
「僕、先日までずっと寝たきりだったんですが、夢の中の空音に助けて貰って今ここにいます」
「…………」
「空音はお世話になったお母さんに何も残さずに来てしまった事を凄く悔やんでました。それでこれをお母さんに渡すようにってお願いされて今に至ります」
「…………」
「空音の言葉を思いを聞いてやって下さい」
カセットを入れ再生すると空音の声がする。
「お母さんへ私の事を生んでくれて、ここまで大きく育ててくれてありがとう。お父さん早くに亡くして大変な中、お母さんはいつも笑顔で接してくれたよね」
「でも私は……私はお母さんに何もしてあげられなくて本当にごめん。ときどき喧嘩もしちゃうけどお母さんの事が世界で一番大好きです……グスッグスッ」
「いつも仕事に家事に色々ありがとう。お母さんは私の誇りです。これからも笑顔の耐えない優しいお母さんでいてください……グス……ッグスッ3年2組富良野 空音」
「ジー………追伸、私もいつかお母さんみたいなお母さんになりたいです。ガチャ」
空音のテープを聞き終わると泣き崩れるお母さん。
「空音ぇーううぅぅ………空音ぇーううぅぅ……あぁーー」
きっとこれでお母さんも立ち直れるはずだ。笑顔の耐えない優しいお母さんに。
俺は空音との約束を無事に果たす事が出来た。そして……。
次回最終話。気付けば82話まで来てました。