第80話 守護神
「大ちゃんには守護神の心当たりある?」
とは言っても違和感があるのは……あっそうだ。
「翔流の10円ハゲあれが逆だったんだよな。あれも立派な違和感」
今日は休みだしこの時間なら翔流はたぶん。
瑠花の家に行くと門限前に瑠花を送り届けた翔流がいた。
「よう翔流。デートの帰りか?」
「お前達こそデート帰りじゃ……なるほどやっぱり来ちゃったのか」
何かを感ずいた様子の翔流。
「コイツを触りに来たんだろホレ」
翔流のハゲに触ると空音の体が再び光りだす。ハゲは本来の位置へと戻った。
「これからいくつか試練があるかも知れないけど、頑張れよ」
「ありがとよ翔流。お前はいつでも親友だ」
手を振りながら闇へと消えて行く翔流。
俺が違和感を感じた人物で思い当たるのは後1人。だが行くのには少し躊躇した。だってそれは……空音の大切な………。
意を決して空音の家に行くとそこには空音の妹、海音がいた。
「お帰り空姉……空ね…………遂にこの時が来ちゃったのね」
「海音………嫌だよ私。貴女だけは消したくない」
「ダメだよ空姉。それじゃ大地お兄ちゃんが元の世界に帰れないじゃない」
「海音……うっうっうっ………」
「私ね。現実の世界じゃ流産しちゃって……ちゃんと生まれて来れなかったけど、お母さんや空姉に素敵な名前を付けて貰えて本当に嬉かったんだ。だから私も空姉と優しい大地お兄ちゃんに恩返しがしたいんだ。はいっこれ」
体が更に光る空音。
「私、空姉の事。こんな素敵なお姉ちゃんがいた事……絶対にわすれない。絶対にわすれないから……グスッグスッ」
泣き顔の海音が消えて行く。
「ううぅぅ………海音………海音」
涙が止まらず、その場で泣き崩れる空音。
「ごっごめんね……グスッ……だっ大ちゃん……グスッ」
「ううぅぅ………ごめんグスッ……俺のせいで空音の夢を壊す様な真似して………本当にごめん」
「グスッ……そんな事ない……そんな事ないから。グスッグスッ。さあ行こう海音の気持ちを無駄にしない為にも……」
しかし、俺の感じた違和感はここまで。他に違和感は無いか空音と二人夜通し探すが見つからない。
朝になり、日が上がるとある事を思い出した。いるはずが無いんだあの人は……俺と空音は自宅の和室へと向かう。
「おぉこれはこれは大地に空音ちゃんだったかな?こんな朝早くにどうした?ん?」
ウチラを不思議そうな目でみるじいちゃん。
「本来、じいちゃんこの時期はずっと入院してて家にはいないはずなんだ。つまり、じいちゃんが最後の……」
「はっはははは……御名答じゃ。いかにもワシが最後の守護神だ。空音ちゃんこっちに来なさい」
手を当てると空音の体が光りだす。
「これで全ての封印は解かれた、時期に記憶は戻るだろう。大地を宜しくね空音ちゃん」
「わかりました」
「さぁこの世界が終わるまでの間に約束の場所まで行くのだ。確か【空と大地の交わる場所】じゃったかの」
消えて行くじいちゃん。本当に最後までありがとうな。
しかし、じいちゃんの言っていた空と大地の交わる場所っていったい………そう考えていると空音が突然言い出す。
「山ハゲ鷹山の一本杉」
ハゲ鷹山の山頂まで登るが一本杉は仮面の男との戦いで折れていた。諦めて帰ろうとすると木の根本が光輝いている。手に触れると一枚の絵が出てきた。描かれていたのは……。
「これって【親子石】の絵画じゃないか」
親子石はこの町の外れの海岸にある父・母・子の石がならんだ観光スポット。この絵の中心に太陽があり、左右に海が割れて真ん中に道が出来ているような不思議な絵だった。裏側には【夕暮れの親子石】と【ミステイク】と書かれている。この父石の上にある祠に印がしてあるって事はここが約束の場所なのか?
「行ってみよう空音」
「うん」
海岸へと向かうが海に道が閉ざされており、親子岩へは近づけないでいた。
「何かの呪文とかカラクリがあるのかな?」
「うーんわからない」
付近を捜索するも全く手懸かりは見付からず絵のタイトルと同じ夕暮れまで待ったが何も変化が無かった。
時間は無いが足場も悪く暗くなってきたので明日に全てを賭ける事にした。
海は大時化で全然引かないし、この絵のタイトルと同じように夕暮れに行ったけど全く変化も無かった。もう一つのキーワード【ミステイク】ってつまり間違いって事だと思うけど、そもそもこの絵に間違いなんて……あれっ?この絵。この違和感ってもしかして……急いで空音へと電話をする。
「あっもしもし空音?あの絵の秘密がわかったよ。あの絵は………」
翌朝4時頃起きて空音と共に再び親子石へと向かう。
「何か起こるのかな?」
「わからないけど、これがきっと最後のチャンスだ」
なんとか日の出前に海岸に着く事が出来た。相変わらずの大時化だがどうなる。もうじき日の出だ。少しずつ辺りが明るくなり太陽の頭が見えた時、突如海が割れて道が現れる。
「やっぱりだ。あの絵は【夕暮れ】じゃなく【日の出】を描いた絵だったんだ。今のうちに行こう空音」
印のあった左の父石の頂上の祠に向かう。少し具合の悪そうな空音は倒れそうになった。
「そっ空音。大丈夫か?」
「大ちゃん……あのね。私、全て思い出したの」
「記憶が戻ったのか?」
空音がコクりと頷く。
「大ちゃん祠の中から箱を出して貰って良いかな?」
空音の指示で祠を開けるとそこには玉手箱が
「開けてお爺さんになるって落ちはないよな?」
「大丈夫よ安心して」
玉手箱を開けると中には龍の描かれた金色の珠が1つ入っていた。
「これは龍玉と言って海神様の秘宝らしいんだ。一説によると浦島太郎もこれを使って元の世界に戻ったんだとかなんだとか……これを使えば大ちゃんを元の世界へ戻す事が出来るんだって。魂と肉体を繋ぐのに暫く準備に時間がかかるみたいだからそれまで少し話をしようか」