第76話 仮面道化(前編)
グール殲滅の翌日……
【海岸の防波堤の上にて】~俺と朱音~
「結局、最後はお前に全部良い所を取られちゃったよな」
少し不満気な顔の朱音が言う。
「良いも悪いもみんなが無事だったんだから良くないか?そんな事言ったら朱音だって無敵のファントム倒したじゃん」
「まあそれもそうだね。まあお互い様って事で今回は勘弁してやろう」
ドヤ顔の朱音。もはや何も言うまい。
「朱音はこれからどうするんだ?すぐに帰っちゃうのか?」
「なんだ寂しいのか?へへへ……。私はこの世界に父の魂がリンクしているのか調べに来たんだ。隊長が今、調べてくれてて聞いたらすぐにでも帰れるんだけど……私も3月末でまではこの世界にいる事にした」
「元の世界は大丈夫なのか?」
「大丈夫。この世界にも少し思い入れが出来たし、春休みに瑠花の家で料理教室開くみたいだから料理習ってからでも良いかなって……ははは甘いかな」
「もうグールはいないんだし、朱音の好きで良いんじゃないか?」
「だよね。あんたもだいぶ私に順応してきたわよね」
それは褒めてるのか?
【ハゲ鷹山の頂上付近にて】~アルディラ隊長と聖司~
「なあ隊長、今回の討伐で俺達の評価上がるよな?」
「ああ今回は非常に大きな成果を残したし間違いないだろう。そう言えば海瀬君は?」
「自室でデータでも纏めてるんじゃないッスかね。アイツは真面目だからな。俺、呼んで来ますよ」
【海瀬の部屋にて】~海瀬~
カタカタカタカタ…………。
パソコンを勢い良く打つ海瀬。
【今回のグール調査においてファントムの解明については非常に大きな成果が得られた。ただし、ホワイトグールの出現、なぜ隻腕だったのか、結界の内部破壊方法など引続き調査の課題は残る】
っと、まあこんなもんでしょうか。
「相変わらず、愛は真面目だな。グール討伐も終わったんだからすこし休めば良いのに……」
カタカタカタカタ…………。
「いえ、終わったとは言えまだ調査すべき課題が山積みですの……ぐふぅ………いっ痛い……」
腹部を抉られ口から血を吐く海瀬。
「あっ………あなたはいったい?」
ウゥーン。ウゥーン。ウゥーン。
グールアラートから夥しいサイレンが鳴り響く。
「海瀬君からの緊急通信だ。至急みんなアジトへ向かってくれ」
アジトに着くと隊長と朱音がすでに到着しており、恐る恐る海瀬の自室へと突入する。
そこには見るも無惨な姿で横たわる海瀬の姿があった。腹や目は抉られ、胸にも大きな穴が空けられていた。
隊長が近付き急いで海瀬の体を確認する。
「コアが完全に破壊されている。これではもう再生は不可能だ、助けられない」
「グエッ……オエッ………ヒックヒック」
朱音が泣きながら隅で吐く。
「いったい誰がこんな酷い事を……」
「聖司はどこにいったんだ。まさかアイツが………」
隊長が海瀬の体に触れると光の玉の様なものが浮かび上がる。
「記憶之屑だ。海瀬君の最後の言葉だ。共に聞いてやって欲しい」
光の玉から海瀬の声がする。
「皆さんお役にたてず申し訳ありません。私を襲った者についてお話させていただきます。奴は聖司君に成りすましこの部屋に来たようです。私もコアに傷つけられるまでは気付きませんでした」
「奴の目的は私達の持つ天使之輪の奪取。私の保持していた【想像錯覚】と【透視索敵】は奪われてしまいました。奴の次のターゲットはきっと聖司君です。どうか聖司君を助けてく………」
記憶之屑はここで途切れてしまっている。
「行こう隊長。聖司が危ない」
「あぁ海瀬君の思いを無駄にしてはいけない」




