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【D.S.(ダズ)】~過去と未来の交わる場所~  作者: 月代ユカイ
第四章 【激闘】上級グール偏
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第73話 愛の形(後編)

中学生達の純情な愛を描いたハートフルなお話です。二人の運命やいかに

夏希(なつき)が封筒を手渡してくる。


目黒(めぐろ)君が大切にしている【富良野(ふらの) 空音(そらね)】は私が預かった。返して欲しければ21時に城趾公園まで一人で来い。無論、警察に通報した場合には人質の命に保証はない。from予備校の貴公子】


封筒の中には手紙の他に空音(そらね)が手足を拘束されている写真が数枚入っていた。


「ちっ。空音(そらね)ぇーー」


勢い良く城趾公園まで走って行くと公園の中央広場に蝶マスクをしたタキシード姿の男がいた。


「良く時間までにここまで来たな目黒(めぐろ)君」


「はぁはぁはぁ……お前が予備校の貴公子だな。いったい何の為に空音(そらね)を誘拐したんだ」


不気味に笑うタキシード男。


「フハハハハ………僕はね。誰かの大切にしている物を奪うのが好きなんだ」


殴りかかろうとした所、タキシード男に止められる。


「暴力はやめた方が良い。私には30人の配下がいる」


影から蝶マスクを被った人間がぞろぞろ出てくる。


「チッ望みはなんだ」


大声で言うとタキシード男が言う。


「聞けばお前はまだ、富良野(ふらの) 空音(そらね)とは付き合っていないようだな。そもそもその気はあるのか?」


「そんなのあるに……」


「だったらこの場で証明して見せるが良い。連れてこい」


タキシード男の横に空音(そらね)が連れられてやってくる。


「そっ……空音(そらね)ぇーー」


(だい)ちゃん聞いて。好きって言われたんだとしてもさ。ちゃんとした言葉が無いと私、自信がなくて……それで……」


それでそんな安っぽい男に捕まったってのか……でもそれって結局、俺が空音(そらね)に付き合ってくれって伝えて無かったからこうなっている訳で……つまり俺の責任。


覚悟を決める俺。


「俺、【目黒(めぐろ) 大地(だいち)】は【富良野(ふらの) 空音(そらね)】を愛しています。その気持ちに気付いたのは最近なんだけど、思えばずっと前から好きでした。俺には君の笑顔の支えが必要だ。どうか俺とぉ……付き合って下さい」


俺が告白した瞬間。パン、パパン、パンっとクラッカーが鳴り響くと【大地(だいち)君・空音(そらね)ちゃんカップル誕生おめでとう】とカラフルな文字でかかれた紙が掲げられた。


「予備校の貴公子……お前はいったい」


俺が言うと笑いながらタキシード男が蝶マスクを外し始める。


「ははは……お前本当に気付いて無かったのか?」


タキシード男の正体は翔流(のぼる)であった。


「って事は……配下達ってまさか……」


案の定うちのクラスメート達であった。こんな明らかに気付きそうな芝居なのに人間追い込まれるとわからなくなるものだ。


翔流(のぼる)が取り仕切り司会を進行していくがみんなお構い無しに盛り上がって行き気付けばキスコールが鳴り止まなくなっていた。


「キース」「キース」「キース」「キース」………。


困った顔の空音(そらね)に耳打ちする。


「ここは翔流(のぼる)達に一肌脱いで貰ってウチラはズラかろうか」


コクりと頷く空音(そらね)。俺が大声でみんなに言う。


「俺達まだカップルになったばっかりで正しいキスの仕方なんてわかんないよ。ここはやっぱり先輩カップルである翔流(のぼる)達にお手本を見せて貰わないと……そーれ、キース、キース、キース………」


「えっ?あっあわわわ………」


あたふたとしている翔流(のぼる)達をよそに暗闇に乗じて空音(そらね)と一緒に逃げ出す。


翔流(のぼる)君達大丈夫かな?」


心配する空音(そらね)だが……。


「まあ、翔流(のぼる)なら上手くやってくれるさ。そう言えばまだ空音(そらね)からの回答聞いて無かったよな。あいつら先走り過ぎなんだよな。たくっ……いつまでも待たせて悪かった。俺の告白受け取って貰えますか」


顔を赤らめて静かに頷く空音(そらね)


「はい。不束者ですが宜しくお願いします」


こうしてこの日、俺と空音(そらね)は付き合う事になった。


「あと、はいこれ。私から」


空音(そらね)から小さな箱を手渡される。


「勿論、本命だよ。一生懸命作ったから食べてね」


「ありがとう。今、食べて見て良いかな?」


コクりと頷く空音(そらね)。その表情が初々しいと言うかなんと言うか可愛らしいと言うか。


駅のベンチで空音(そらね)に寄り添う様に座り。箱を開けると小さなハート型のチョコが入っていた。一口食べると広がる穂のかな苦味とフルーティーな甘さ。今、まさに至福の時を迎えていた。


この幸せがいつまでも続きます様に……そう心の中で願う俺であった。

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