第67話 年末年始
年末になると、どこの家も大掃除が始まる。俺も妹の夏希と共に窓拭きやら掃除を手伝わされている。
「よし、こっちの窓拭き完了だ。夏希の方はどうだ?」
「上の方が届かなくて……お兄ちゃんお願い」
「よし来た。任せとけ」
ササッと拭いて完了っと思っていると後ろでニヤニヤしている夏希。
「何だよ夏希。お前また変な妄想でもしてんのか?」
「いやーヤケに大掃除に気合いが入ってるなって思って……ひょっとして初詣とか空音お姉ちゃんと約束してて家に来る事になってたりして」
案の定、変な妄想をしている夏希。
「そんな約束してねぇし……」
「えぇーX'masコンサートで空音お姉ちゃんとVIP席座ってたのに?なんか聴いてる最中も手を握りあってラブラブだったんだとか聞いたけど……」
握りあってはいなかったが……いったいどこからそんな話が……。
「誰に聞いたんだよ。そんな事、別に握りあってた訳じゃねぇし……」
周りにも翔流達ぐらいしか生徒はいなかったはずなんだけどな。
「誰って吹奏楽部のお友達だよ。みんな口を揃えて羨ましいなって言ってたけどな」
そっちか。完全に頭の中に無かったが、そりゃ最前列だしバレて当然か。
「お兄ちゃん達はもうキスしたの?」
「そっそんな事。お前には関係無いだろ?」
「ふーんまだか。来年は出来ると良いね」
「……夏希ぃーー」
「キャーお兄たまが噴火した逃げろ逃げろ」
相変わらず、油断も隙も無い奴だ。空音も今ごろ大掃除でもしてんにかなと思っていると再びにやけてしまう俺がいた。そしてカウントダウン3、2、1、年が明ける。
「新年明けましておめでとうございます」
「本年も宜しくお願いします」
親戚一同集まり、新年の挨拶を済ますと寝床に着く。
翌朝、おせち料理やらお雑煮やらを食べながらテレビを見ているが、流石は正月。特番しかやってない。
ピンポーン
グダグダしながら過ごしていると玄関で呼鈴が鳴る。御近所さんの挨拶かと思っていると俺が呼ばれた。早速玄関へ向かうとそこには着物姿の翔流がいた。
「よう。あけおめ、今年も宜しくな」
翔流は薄緑の着物を来ていた。
「ああ、こちらこそ。それを言いに来たのか?」
俺が言うと首を横に振る翔流。
「初詣一緒に行こうぜ」
「初詣?まあ全然暇だし良いけど」
俺が答えた瞬間狙ったかの様に外に声を掛ける翔流。
「大地、初詣行けるって」
それを聞いた着物姿の二人が玄関に着物姿で入ってくる。瑠花と空音である。
「大ちゃん。明けましておめでとう。今年も…えっと宜しくね」
赤く華やかな振袖を纏う空音。
「目黒君昨年は大変お世話になりました。本年も宜しくお願い致します」
淡い青の雅やかな絞りの振袖の瑠花。
間近で見ると二人とも凄く綺麗だ。着物も姿も良く似合ってる。
「明けましておめでとう。二人とも今年も宜しく」
その様子を後からコッソリ覗いていた夏希が興奮気味に近寄ってくる。
「空音お姉ちゃん。明けましておめでとうございます。ウチの兄を宜しくお願いします。お二人共凄く綺麗で……その一緒に写真を撮らせて貰えないでしょうか」
思わぬ申し入れだったが快く受け入れてくれた。ウチの玄関の前でみんなで並び撮影する。撮影はじいちゃんがしてくれた。
それから初詣へと向かうのだが、当然ながら俺は着物なんて大層な物は持ち合わせておらず、普通の格好で行く。神社までは翔流の叔父さんが車で送ってくれた。
この町、唯一の神社である富船神社に着きみんなで初詣を済ますとおみくじを引いた。まずは翔流からだ。
「中吉か。まずまずだな。何々、【恋愛】迷う事なく進めか。まあ書かれて無くても突き進むけどな」
空音と瑠花はと言うと……
「わぁ大吉だ。幸先良いね何々……【待ち人】来る。辛抱して待てか……【恋愛】は理解あれば吉かねぇねぇ瑠花は?」
「私も大吉でした。【学業】慎んで励めか……神様頑張ります」
そして最後は俺の番
「吉か……どれどれ【恋愛】時来れば叶し辛抱して待てか」
翔流が俺のおみくじを覗いてくる。
「何だよ大地は吉か。何だかパッとしねぇ運勢だな。俺なんか中吉だぜ。中吉。へへへ良いだろ最下位さん」
そこへ瑠花がやって来て丁寧に説明してくれる。
「あのごめんね翔流君。一般的には吉は大吉の次に良しとされていて……その……4人の中だと翔流君の運勢が一番良くないと……」
瑠花の痛いツッコミに唖然している翔流の顔を見てケタケタと笑いまくる俺と空音。
そんな風に仲睦しくしていると2~3人組の男がこちらに寄って来ている事に気付いた。男達の目は虚ろで只ならぬ気配を醸し出していた。
「翔流。ここは私服の俺が囮になって引き寄せるから空音と瑠花を引き連れて先に行ってくれ俺なら大丈夫だから」
コクりと頷くと空音と瑠花を引き連れ坂を降りる翔流。




