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【D.S.(ダズ)】~過去と未来の交わる場所~  作者: 月代ユカイ
第四章 【激闘】上級グール偏
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第63話 学芸会のグール

ファントム撃破の報告は天界でも大ニュースになっているらしく、上機嫌の隊長。グール狩りの山場は越えたと見て間違いないようだ。あとは天界からの報告を待つのみとなった。


グールを殲滅出来たらようやく未来へ戻る調査が出来そうだ。


心ウキウキで学校へと向かうと学芸会の準備で追われていた。グール退治に夢中になっていて気付かなかったけど、明日は学芸会だ。俺もセリフ確認しとかなきゃだな。


終了のホームルームで魔王から激励を貰う。


「明日はいよいよ学芸会本番だ。今までの練習の成果を存分に発揮して貰いたいが、それよりも中学校最後の学芸会だし、楽しんでやって欲しい。失敗したって良い、悔いの残らないように思いっきりやってくれ。以上」


「起立・礼」


ホームルームが終わると空音(そらね)が話しかけてくる。


(だい)ちゃんいよいよだよ。私、なんか緊張してきたよ」


「大丈夫だよ空音(そらね)なら。俺の方こそセリフ飛ばさないようにしないとな」


久し振りに早く帰れて喜んでいると隊長から連絡が入り、朱音の家に向かう。勿論だが朱音(あかね)達もいる。


「先日は御苦労様。君達に報告がある。先日のファントム撃破の件を天使学会で発表した所、素晴らしい評価を得る事が出来た。我々天使達には特別支給品が届いている」


「支給品ってなんですか?」


AP(エンゼルパワー)をかなり回復させるアイテムや我々の力を伸ばす為の物だよ。先日の戦いでもかなり、力を消耗していたので非常に助かるありがたく使わせて貰うよ。それともう一つ」


「もう一つ?」


俺と朱音(あかね)が同じタイミングで言う。


「天界でこの世界のグール残数を割り出して貰った所、この関東付近に残りは6体と出たそうだ。どんなグールでどこに潜伏しているかはわからないが先日のファントム程の猛威は無いと見ている」


残り6体。まあ、気長に探すしか無いがついに終わりが見えたかも知れない。召集が解散となると家へと帰宅する?明日は学芸会だし早めに就寝する事にした。


翌日、学校に着くとみんなで円陣を組み渇をいれる。


「今日はみんな楽しみながら頑張るぞ」


「おぉー」


朱音(あかね)の掛け声にみんなの気合いが入る。やる気全開で出番を待つ俺達。みんなが衣装に着替える中、フリフリのドレス姿で現れる魔王。


「先生なにそのドレス。気合い入り過ぎじゃない?」


クラスの女子達が魔王のドレスに興味津々。


「へへへ……奮発して借りてきたんだよ。どうだ似合うだろ」


「結婚式じゃないんだからさ。あっ相手がいないか」


余計な事を言った春馬(はるま)が魔王の餌食になると、みんなに笑みが溢れる。いい感じで緊張が解れたな。


「次は3年2組による演技です。準備を始めてください」


うちらの出番だ。ハリボテ等を素早く固定し、各自配置へと着く。そして演劇が始まる。


「お待たせ致しました。本日の最後の演目となります。3年2組による【現代版かぐや姫】です。どうぞ」


アナウンスが終わり、幕が上がる。ステージ伴奏の魔王も良い感じの雰囲気を醸し出しながら演奏を行っている。


台本を確認しながら読み進める朱音(あかね)と俺。みんなも凄くパワフルに体を動かしてくれている。非常に良い感じだ。


そこに和装の瑠花(るか)が登場。一気に会場が盛り上がる。


「おい。あれ誰だ?」


「ウチにあんな美女いたか?」


「おぉーマイスイートハニー」


「あれって瑠花(るか)ちゃん?惚れ惚れするぐらい綺麗。嘘みたい」


瑠花(るか)ちゃんって着物似合う」


観客から歓声が上がる。


この物語の見せ場だからな。魔王の伴奏も本当に素晴らしい。これなら最優秀賞貰えるかも。そんなこんなで終盤に差し掛かった際に海瀬(かいせ)さんから念波通信が入る。


「あっ海瀬(かいせ)です。演目中すみません。今、和装のべっぴんさんの背後にグールを確認しました。人に取り付いて支配するタイプのグールの可能性が非常に高いです。今すぐに撃退しないと融合してしまう恐れがあります。ご決断を……」


最悪のタイミングだ。演技をやめる訳には行かないし…いったいどうしたもんか。


朱音(あかね)の遠距離技ではどうにかする事は出来ないか?」


「正直、あの技は精度があまり良くない技だし、電撃だからグールを伝わり瑠花(るか)ちゃんにまで影響する可能性が高い。並の人間が喰らったら間違いなくあの世逝きだよ」


「じゃあいったいどうしたら」


悩んでいるとチェーンとロケットが光りだし、弓矢の形へと変化して行く。これってもしかして俺があのグールを射抜けって事か?


「なんだよお前、そんなもんまで使えるのか?だったら最初から出せよな」


朱音(あかね)のツッコミを冷静に受け止める。


「いや初めて使う力だ。電撃では無さそうだから当たれば倒せそうだけど、弓は素人だしグールもゆらゆら動いてるからな」


瑠花(るか)の顔色がドンドン悪くなって来ているのに気付くと朱音(あかね)が言う。


「今、瑠花(るか)を救えるのはアンタだけだ。その間の声役は全て私が引き受ける」


朱音(あかね)に発破をかけられて仕方なく弓矢を構える。


「ちっ目標が動いてて……ちっとも定まらない……止まれ止まれ……」


瑠花(るか)の異変に気付いた空音(そらね)がグールを睨み付けるとグールの動きが一瞬止まる。


「今だ」


矢を射ると一直線に瑠花(るか)の影へと突き刺りグールを破壊する。


「お見事」


海瀬(かいせ)の念波が一瞬聞こえた様な気がした。


瑠花(るか)は一瞬驚いた表情になるがそのまま持ち直し、トラブルはあったが無事演劇をやりきる事が出来た。結果は勿論。


「最優秀は3年2組 現代版かぐや姫」


「よし、やったー」


「中学最高の思い出だよ」


「練習してきて良かった」


「みんなのお陰だよ」


みんな涙ながらに喜んでいる。魔王から祝福の言葉がかけられる。


「受験勉強で忙しい中、本当に良くやった。こんな誇らしい事は他にない、最高の思い出をありがとう。お前達大好きだぁー」


クラスメイトを次々に抱き締めていく魔王。瑠花(るか)に関しては口から泡を吹くまで締め付けられていた。

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