第6話 空音争奪戦
また、あの頃の夢へと落ちて行く。
【回想】
空音達の演奏から数日経った日に妙な噂が流れた。
学校一のモテ男【天王寺 翔流】が空音の事を狙っていると言うのだ。
翔流は俺の親友。茶髪のツーブロックヘアーでイケメン。身長はさほど高くは無いが会話も面白く、頭脳明晰で運動神経抜群おまけに喧嘩も強い。元々、女子高生の彼女がいたのだが先日の演奏会の日に別れたらしい。
演奏会の日から妙に空音達のグループに絡んで来てはいたが、特に気にはしていなかった。
だが次の全校集会の日に事件は起こった。
いつも通り校長のつまらない話が終わり、幕を引こうとしていたところ橋台に勢い良くかけ上がる人影が……翔流である。
「みんな集会後に疲れている所ごめん。少しだけ俺に時間を下さい。先日の吹奏楽部の演奏ですが、俺めちゃくちゃ感動しました生徒を代表してお礼を言いたいと思います。素晴らしい演奏ありがとうございました」
パチパチと鳴り響く拍手。ただのお礼かとホッとしたのも束の間まさかの展開に発展する。
「その中でも特に輝いていた人がいます………富良野 空音さんです。空音さんの懸命な姿に熱い眼差しに俺、惚れました。もし少しでも気があるなら放課後に夫婦桜の前まで来て下さい待ってます」
裏門にある夫婦桜はここら辺では有名な告白スポットだ。なんでもこの桜の下で告白を成功したカップルは永遠に結ばれるって迷信があり、みんなそれを信じていた。
翔流の誘いを断るヤツなんてこの世にいる訳がない。俺の初恋も呆気なく終わるのかと諦めかけていたその時、横からデカイ声が聞こえる。
「天王寺君ごめん。私、片思いだけど好きな人いるから貴方とは付き合えない」
まさかの展開に固まる翔流。そりゃそうだ学校一のモテ男が全校生徒の前で振られたわけだから。暫くすると周りの女子達が空音を責め始める。
「翔流君を振るなんて信じらんない」
「片思いなんでしょ翔流君となら両思いになれるのにバッカじゃない?」
「空音の好きな人ってそんなに素敵な人なの?少なくともこの学校にはそんな人いないと思うけど」
「ここまで言っといて誰が好きか言わないのは反則だから、ちゃんと自分の気持ちは言わないとね」
告れーー告れーー。
告れコールに流石の空音も顔赤くしてしゃがみ込んでしまった。瑠花が空音の前に立つがあっという間に吹き飛ばされてしまう。止めなきゃ、俺が動こうとした瞬間マイクが入る。
「あっごめんごめん。全部に俺のせいだ。空音ちゃんは悪くないからみんな責めないでくれよ。じゃあこれにて解散、みんな早く教室戻れよ」
そのまま橋台にから降りて行く翔流。全校の前で振られてショックだったろうに流石だと関心すると共に、空音の好きな人が誰なのか……気になって仕方無い俺がいた。ごめん
【回想終了】
目が覚めると誰かが俺を呼ぶ声がする……