第52話 勘違い
朱音の家に戻り隊長に討伐報告する。
「海岸のグール、無事討伐しました」
「二人とも良くやってくれた。今回のはグールは相性も悪かったみたいだし、骨が折れただろ?」
「まあ大変だったけどね。最後は私の必殺技でスパッと華麗に撃破してやりましたよ。まあコイツがチャージの間、グールの足止めと装甲を破壊してくれたから勝てたようなもんだけどね」
「目黒君もご苦労様。ところで装甲はどうやって破壊したんだい?」
一部始終を隊長へ話す。
「そうか目黒君は鎖の能力にも覚醒したのか。頼もしいなこれからも宜しく頼むよ」
「はい、頑張ります」
家に帰ると連日の疲れが出てかそのまま寝てしまう。その日、俺は夢を見た。
【回想】
んっ?ここは………あそこにいるのは空音?
(おーい空音さっきは悪かった。本当に急用だったんだごめん。あれっ空音?)
あれっなんだろう目の前の空音、ずいぶん大人っぽい印象だ。化粧でもしたのか?
(ごめんなさい。こんな事に巻き込んでしまって私……私………)
泣いている空音の頭を優しく撫でる俺。
(大丈夫。きっと俺がなんとかするから空音はそこで待ってて)
【回想終わり】
そして目が覚める。しかし変な夢だったな。会話も目茶苦茶で成り立ってないのに空音だけは妙にリアルで夢の様に思えなかったんだよな。
シャワーして朝食を取ると学校へと向かうと、見覚えのある後ろ姿が……空音だ。なんか声掛けづらいけど、謝んなきゃだよな。
「あっおはよう空音。昨日は……」
声をかけたとたんに走って行ってしまう空音。はぁ~やっぱ怒ってるよな。どうしたら良いんだよ。
教室に行くがそこには空音の姿はなく、仕方無く屋上へと向かうとそこには魔王と空音が話していた。
「あの先生……わ……って…かも………」
ん?よく聞こえないな。もうちょっと近づいて……ガチャン……魔王と空音がこちらを見ている。
「ごっごめん。あのその…………」
俺の横を素通りして出ていってしまう空音。やっちまったかな。
「なんかお前ら様子がおかしいが喧嘩でもしたのか?」
「いや、あのえっと………はい」
訳を話すと魔王が笑い始める。
「ハハハハ………お前らそんな事でギクシャクしてたのか。青春してるよな本当にーー」
まあ俺の中身はオッサンだけどな。
「俺、空音に謝りたいんだけど、どうしたら良いですか?アドバイスしてください」
「空音はそんな事じゃ怒らないと思うぞ。まあ時間が解決してくれるさ。気にすんな」
いや気なるが……まあでも気にしすぎも良くないか。
「ありがとうございます。あんまり気にし過ぎずに接します」
教室に戻るが相変わらず目を合わそうとしない空音。放課後、空音が帰るのを見計らって先回りする。家の前の交差点で待ち伏せし、空音に声をかける。
「空音、待ってくれよ。俺、昨日の事ちゃんと謝りたいんだ」
「きっ昨日の事って?」
俯いたまま顔を上げない空音。そんなに怒ってるのか?
「昨日のスーパーカネオカでの件だよ。なんか突然悪かった」
顔を真っ赤にして慌てふためく空音。
「えっえっとその……だっ大ちゃんの気持ちは凄く嬉しいんだぁ……でっでも………でもその自分の気持ちの整理がついてないと言うかなんて言うか………その…………大ちゃんも急にいなくなっちゃったし…………」
モジモジと恥ずかしがって中々本題へと進めない空音。
「ごめん。俺、なんか変な事言ったっけ?」
「へっ??」
空音に話を伺うと、どうやら別れ際にいつも真優美に言い訳するときに使う「大切だし、愛してる」と言ってしまったらしく、空音がそれを告白だと勘違いしたらしい。
「もう買い物に来てたおばさん達みんなに見られて本当に恥ずかしかったんだからね」
「ごめん。この埋め合わせは必ず」
「ふふふ。楽しみにしてるね」
「しかし、空音があんな取り乱してるの初めて見たな。翔流の時だってあんなにキッパリ断ってたのに。もしかして俺、脈あったりする?」
「もうっ大ちゃんなんて知らない」
駆け足で帰ってしまう空音。その頬は少し赤みを帯びていた。空音が怒っていなかった事に心底ホッとした。ご機嫌でシャワーから出ると妹の夏希がまたもや絡んでくる。
「お兄たまー聞きましたよぉ」
「何をだよ」
「昨日、スーパーカネオカで空音お姉ちゃんに告白されたんだとかなんとか……そのご様子だと結ばれたと見て間違いなさそうですね。イヒヒ……」
ニヤニヤしている夏希。
「なっななな?どっから仕入れた情報だよ」
「ふふふ確かな情報網だけど企業秘密。しかし、あんな人混みで告白とは翔流お兄ちゃんに負けず劣らず、なかなか大胆よね」
「………」
「私も実は大ちゃんの事が好きだったのぉ……嬉しいとか」
「…………夏希ぃーー」
「きゃーー乱暴しちゃイヤンよ」
たくっ逃げ足の早いやつだ。しかしどこから出回った情報だ?他にも広まってなきゃいいが……そんな事を考えているとお袋が話しかけてくる。
「あら今日は早いわね?そう言えば昨日、カネオカさんで空音ちゃんに告白したみたいだけど、人前は良くないわ。空音ちゃんにも迷惑でしょ?」
おっお袋まで??
「なんでお袋まで知ってんだよ」
「そりゃ~近所のスーパーだもの。すぐにわかるわよ」
夕食を食べている間もニタニタとこっちを見る夏希……かなりウザい。
部屋に戻るとベットに寝そべる。しばらくあのスーパーには行けないな。
しかし、最近いろいろあったけど、コイツのお陰でなんとか命拾いしてるよな。ロケットを見つめていると急に酷い眠気に襲われる。
「ふわぁ~あぁあ。あれっなんか眠く……………」
そのまま眠りにつき夢を見た。