第4話 未来探偵カケル
目が覚めるとそこは自宅の寝室。
「んっ?あれ?」
どうやら優大の寝かしつけしてる間に一緒に寝落ちしてしまったようだ。時計をみると既に夕方になっていた。
「いけない優大が起きる前に食事の準備とかしとかなきゃ」
「クマ……ポンポン空いた」
「あっ起きちゃったか……こりゃ簡単なもんしか出来ないな」
優大と夕食をしていると真優美が早めに帰ってきた。
「あれ?今日の夕食まさかこれだけ?今まで何やってたんだよ。まさか寝てたんじゃねぇよな?罰として今日、マッサージさせるからな」
チクショーよりによって最悪なタイミングで帰って来やがって本当にツイてない。
結局、優大の寝かしつけが終わり、真優美のマッサージをする羽目になった。しかしこの日はツイていた。
マッサージの時間に人気ドラマ【未来探偵カケル】の時間が重なっていたのだ。結構面白いんだよな。
主人公『カケル』は未解決事件専門の探偵である。
カケルは瞬間記憶能力と過去誘発剤投与により一定時間過去の自分に戻れる力を持っており、事件の真相を探る。
今日は連続児童失踪事件の調査編だったはずだな。
カケルは過去に戻り、犯罪組織を突き止めるが、ひょんな事から事件に巻き込まれてしまう。
「あらボウヤ。ここにいる事はわかっているのよ」
「まさか、あの女が組織の一員だったとは、どうしたら」
緊迫した空気が漂う。マッサージしながら俺が真優美に声をかけと……。
「マッサージはあとどこをやる。頭?足?」
「うっさいな。今、良いとこなんだから黙ってろよ。終わるまで肩で良い。もう話しかけないで……」
不機嫌そうな真優美が俺に言う。
「…………」
再びドラマに戻る。
「早く出てきた方が身の為よ。間もなくこの倉庫は爆発する」
「クッ俺はどうすれば┅…」
「残念ねボウヤ。さよならの時間。私の事を怨まないでね」
「絶体絶命。カケルの運命は如何に………」
今週の未来探偵が終わると真優美がご機嫌に声をかけてくる。
「マッサージありがと、もう良いよ。うーん来週も気になるぅ」
座ったまま背伸びをする真優美に俺が話をする。
「未来探偵カケルって面白いよな。真優美はもしタイムスリップ出来るとしたら過去に戻りたい?」
「チッチッチッ……違うんだな。これだから素人困るんだよ」
真優美が飽きれ顔で言う。
「ん?俺、何か変な事言ったか?」
「未来探偵はタイムスリップじゃなくてタイムリープだよ」
「タイム?……何だって?」
「タイムリープ。良いかタイムスリップは自然現象。時空の狭間に空いた穴みたいなもんで神隠しなんかが良い例だな。タイムリープは………お前なんかにこれ以上説明しても時間の無駄か」
「なんだよそこまで言っといてやめんなよ」
「たまには自分で調べなよ。本当に学のない奴はダメだな」
「だいたい真優美はなんでそんな事知ってんだよ。学校じゃ習わないだろ」
「そりゃ私は未来探偵の会員だし、公式ハンドブック読んでればこれぐらいはね」
得意気に言う真優美だが、たぶん結構会費とか掛かってんだろうな。俺の小遣いは安月給とか言って間引く癖に……チクショウ。
ハンドブックは真優美がいない時にでもこっそり見てみよう。静かに決意する大地であった。