第39話 交差する想い
教室に戻ると朱音と空音が話をしていた。
「朱音ちゃん、ありがとう。私、もうどうして良いかわかんなくってさ、本当に助かったよ」
「あぁ別に気にしないで良いよ。私、思った事をそのまま言っただけだから。でも、みんな薄情だよね、阿東さんと大地君以外は誰も助けようともしないんだもん」
うーんなんか入りづらいな。
ガタッ……。
扉に当たり空音と朱音がこちらを向く。朱音が俺に向かって話しかけてくる。
「何をコソコソしてんのよ。さっさと入って来なよ大地君」
なっなんで俺だってわかったんだ?朱音の言葉に空音が合わせてくる。
「あっ大ちゃん。さっきは助けてくれてありがとね。私、本当に助かったよ」
空音は少し照れながら俺にお礼を言うが朱音が水を挿す。
「まあ、全然助けられてないし、私がいなかったら完全に共倒れだったけどな。あんたも私に感謝しなさいよ」
「ははは……ありがとな朱音。流石は高嶺の………」
朱音=真優美だったとしたなら【高嶺の棘】って言葉にに何か反応してくれだろうと淡い期待をしていた大地だが……。
「私は【高嶺の黒薔薇】なんかじゃねぇ……次言ったらただじゃおかないからな」
そのまま怒って自分の席へと座る朱音。しかし高嶺の黒薔薇?……棘じゃないのか?
ウチのクラスメートがぞろぞろと帰ってくるが、みんなバツの悪そうな顔をしている。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り響きホームルームの時間。魔王が入ってくる。
「みんなおはよう」
「おはようございます」
「いやー朝から大変だったな空音。ちょうど私もトイレに行っててな。まあ言いたい事は全て朱音が言ってくれたし、私からは何もない。だが自分のした事について各自もう一度考えるようにな……以上」
過去の世界では瑠花以外誰も空音を守らなかった為、この後、魔王に説教されたんだったよな。
過去に戻ってから俺以外の行動でこれまで未来が改変する事なんて一度もなかったのに朱音っていったい………。
それから俺は不思議と朱音に引かれていく事となる。
放課後、帰ろうとしているとクラスメートの【鈴木 政弘】通称 鈴政が声をかけてくる。
「おい、大地。翔流君が更衣室に【集合】だってさ。ハハハ……お前なんかやらかしたのか?」
「ん?翔流が?」
集合ってのはウチラの中では単独で誰かを呼び出す合言葉。翔流が俺に何の用だ?さては今日、振られた事に対しての愚痴を聞いて欲しいか慰めて欲しいのかだろう。
軽い気持ちで更衣室へと足を運ぶ大地。翔流に声をかける。
「どうした翔流。さっきは散々だったな。ん?」
声をかけると鋭い眼光で睨み付ける翔流。明かに様子がおかしい。
「おい大地。お前何ヘラヘラしてんだよ。あぁん?」
翔流の奴、珍しく荒れてるな……まああんな事があった後だし当然か。
「悪い悪い。お前の気持ちも考えず……気を悪くしたなら謝るよ。それで俺に用ってなんだ?」
翔流が壁ドンしながら俺に接近してくる。
「お前、空音が責められてる時、仲裁に入ってたけどよぉ。まさか空音に気があるわけじゃねぇよな?俺を差し置いて空音に手出ししたらただじゃおかねぇからな」
ドスの利いた声で俺を脅す翔流。昼休みに吹奏楽部の男子が全員、翔流に呼ばれたって聞いたけど、これだったのか。
厄介な事に巻き込まれたくないし、適当にあしらって………って昔の俺なら思うだろうな。
「翔流。今のお前メチャクチャ格好悪いよ。そうやって周りを威嚇して牽制して……空音に近づく奴を追い払って、そんなのお前らしくないじゃないか」
「らしくねぇじゃねぇ。俺はこう言う奴なんだよ。テメェも逆らうなら容赦しねぇからな」
何を言っても無駄か………。
「俺も空音の事が好きだ。その気持ちだけは曲げられないし、負けられない。俺は自分の意志で動くし、お前にそんな事言われる筋合いはねぇよ」
怒った翔流が俺の胸ぐら思いっきりを掴む。
「てっ……テメェ……」
「殴りたいなら勝手にすれば良い。それぐらいでお前の気が済むなら安いもんだ」
翔流を睨み付ける俺。
「チッ……勝手にしろよ。俺を敵に回した事、後悔しても知らねぇからな」
更衣室のドアを思いっきり蹴飛ばし出て行く翔流。まあ、いつも言われてばっかりじゃ俺も悔しいからな。たまには良いだろ。
帰宅していると、目の前に朱音が歩いているのを発見する。
「よし、せっかくだから声をかけてみるか」
角を曲がったところで声をかけようとすると……
「朱音。ちょっと話があるんだけどさ……あれ?」
角を曲がった所で煙のように消えてしまう朱音……この前と一緒だ。いったいどんなトリックを使ったんだ?




