第32話 あの日再び
授業が終わり……放課後、帰ろうとしていると何やら重そうな機材をフラフラしながら運んでいる空音が目に入る。この光景は記憶にある。
「空音フラフラじゃん。良かったら俺、手伝おうか?」
声に気付いた空音が笑顔で振り向く。
「あっ大ちゃん。これ超重いんだよ。助かるよ」
ずっしりと重い。過去と全く同じだ。
「明日の演奏で使う機材だろ?これ体育館で良いんだよな?」
目的地を的中させた事に一瞬驚く空音。
「えっあっうん、ありがとう。えっ?大ちゃん軽々だね力持ち」
「まあ、男ならこれくらいはな」
力こぶを見せつける俺。
「ふふふ……大ちゃん助かるよ」
「そう言えば朝の賭け何にするか決まったか?」
暫く困った顔をしたあと空音が答える。
「その件なんだけど、ルバーブのジャムってイチゴが入ってるものもあるらしいのね。だから一概に間違えとは言えないし、今回は引き分けで良いかなって」
「ずいぶん遠慮がちだな。オイショ、このへんで大丈夫か?」
「ありがとう。助かったよ」
「他には運ぶもんはあるか?」
「あとは小物だけだから大丈夫。ありがとね」
「おう、じゃあ帰るな」
帰ろうとすると空音が呼び止める。
「あっちょっと待って大ちゃん。本当は内緒話なんだけど手伝ってくれたお礼に良い事教えてあげる」
過去と全く同じシチュエーション。もう少しだけ驚かせてみるか……。
「明日の演奏で3年生は最後でソロパートがあるんだろ?空音は確かソプラノサックスだったよな?演奏楽しみにしてるよ」
「ええっ?いやその………大ちゃんどうして私が言おうとしてる事わかったの?それにこれは吹奏楽部だけの秘密だったのに……」
驚きを隠せない空音……流石にまずかったか?
「いっいや、例年そんな感じだったかなって……あははは」
「なんか怪しいけど、まあいいや。あっ私、呼ばれてるから行くね。ありがとうね大ちゃん」
そっか明日は俺の初恋の日。あの素晴らしい演奏をもう一度聴けるのは嬉しいけど、複雑な心境でもあった。
家に帰宅すると再び夏希が茶化してくる。
「空音お姉ちゃんってばますます綺麗になっちゃって本当にお兄ちゃん羨ましいな」
「あのなぁー勘違いしてるみたいだから言っとくけど、空音は俺の彼女じゃない。今朝来たのもこの前、お見舞いに行った時のお礼に来ただけだし」
夏希が納得出来ないと言った表情で食い付いてくる。
「えぇ~そうなの?そんなのつまんない」
「つまんなくても良いの」
「でもお兄ちゃんは好きなんでしょ?空音お姉ちゃんも全く気がない訳じゃないと思うけどなぁ」
「なぁーつぅーきぃー。お前って奴はー」
「キャーお兄ちゃんがまた怒った。あんまり怒ると嫌われるわよ」
「うるせー」
翌日を期待し、就寝する俺。




