第10話 空音の死
真優美が旅行へ向かう日。家の玄関で優大と共に見送る。
「行ってらっしゃい気をつけてな」
「いってらっしゃいママ」
「じゃあ宜しくね。優大も良い子でいるのよ。小まめに連絡するから気にしててね。じゃあ行ってきます」
大急ぎで出ていく真優美。さて優大の朝食はどうするかな。
「くしゅん……クマぁおはなが出ちゃった」
「大丈夫か優大?」
掃除洗濯を終えて優大を寝かしつけていると電話が鳴った。
「はい。目黒ですけど……あれ、お袋。久し振りどうした?」
何やら慌ててる様子のお袋。お袋の口からは思いもよらない言葉が飛び出る。
「大地、落ち着いて聞いてな。昨日、昨日ね空音ちゃんが……病気で亡くなったしまったみたいでね……」
「えっ?」
空音が……死んだ?いやそんなはずは……。
「いやいや……なに冗談言ってんだよ。今日はエイプリルフールじゃないし、全然面白く無いって。あっあの元気印がトレードマークの空音が死ぬなんて……」
「大地……あんたは空音ちゃんと仲良かったし、現実を受け入れられないのは良くわかる。だけどこれは本当の事なの。明日が通夜で明後日が告別式だからどっちかだけでも出てあげてね」
「…………」
「後で時間と場所はメール入れとくから来れる時間わかったら教えてね。ガチャッ」
「ちょっとお袋」
……フラッシュバックする空音の姿。
【回想】
「大ちゃん軽々だね力持ち」
「だぁ~れ~だ?」
「大ちゃんに褒めらるとなんだか照れるね」
「大ちゃん。高校は別々になっちゃうけど、これからも……」
【回想終了】
……空音………………空音………。
「……ううぅぅ………空音がどうして……嘘だろこんなの……グスッ……グスッ」
気がつくと目からは大量の涙が溢れ泣いていた。フッと誰かに頭を撫でられる。顔を上げるとそこには目を覚ました優大がいた。右手にはティッシュを持っており、顔をぐいぐいと拭いてくる。
「クマどこかいたい?とんでけーしようか?」
「優大。ありがとな。クマどこも痛くないよもう大丈夫だよ」
優大の事を抱き締める。そうだよな泣いてないでちゃんと送らなきゃ駄目だよな。空音を……大好きだった人を……。
葬儀出席を決心し、急いで真優美に連絡する。
「もしもし真優美?実は……」
真優美へ事情を説明すると……。
「それは行かないとダメだよ。まだ私、出航前だけど戻ろうか?」
「優大なら連れて行くから大丈夫」
「そう?でも、なんかあったらすぐに連絡頂戴ね」
「あぁありがとうな。明日からちょっと実家の方に行ってくるよ」
優大を寝かしつけて、実家へ帰る準備を整える。
布団に入ると俺は空音との最後のやり取りを思い出していた。