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殺し続けた罪人
敵国との戦争まっただ中、とある男が1人の女性を殺めた。
通常であれば死刑を免れない。けれど戦争中で1人の戦力も無駄に出来なかった為、国は男を紛争地の最前線へ送り込むことを決めた。
死刑ではないとはいえ、生き残ることが極めて難しいこの処遇は実質的な死刑判決だった。
男はそんな現状を理解し、少ない武器を持って敵陣へ突入する。
逃げることも許されない。そもそもこの地に逃げ場なんて無い。
周りの全てが脅威だった。仲間も次々倒れていく。
そんな中で男は、死にたくない一心で敵を屠り続けた。
殺らなきゃ殺られる。ここにあるルールはそれだけだった。
そして数年の時が過ぎ、戦争はこちらの勝利で幕を閉じた。
最後まで勝ち続けた男は、たくさんの敵を屠ったとして国から表彰された。
1人の人間を殺して罪人になった男は、たくさんの人間を殺して英雄となりました。