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短いです。
それは酒場にいた時に来た。
いつものように魔物を退治し、ギルドに報告し、お金を受け取る。
その一部を生活に使い、ある程度貯める。溜まったら次の町へ。その繰り返しだ。
その日も同じように日課をこなし、酒場で少し遅い夕飯を食べていたころだった。
「もしもし、勇者様でございますね?」
「はい!?」
突然背後から話しかけられ、夕飯のパンを落としてしまう。
「あぁ、落としちゃった…」
「あ、申し訳ございません。その分の代金は後程払わせていただきます。で、勇者様でございますね?」
再度確認してくる背後の人物。
「そうですが…?」
振り向くとそこには郵便屋がいた。
「よかった。あなたにお手紙ですよ。はい、どうぞ」
「あ、はい。どうも……」
「あ、それとこちらもどうぞ」
そういうと手紙に封するための封蝋印と蜜蝋だった。
「あの、これは…?」
「こちらは依頼主からのサービスでございます。もし返事をお書きになられたらそちらの封蝋印で封をしてください。そうすれば30分後に受け取りにお伺いします。その際の代金も戴きません。あ、それと先ほどのパン用の代金でございます。それでは失礼いたします。」
それだけ伝えると風のように去っていく郵便屋。
残されたのは茫然と立つ勇者。
「一体誰から…?」
訝しがりながら封を切ると一枚の羊皮紙。そこには、綺麗な文字でこう書かれていた。
初めまして。
偶然にもローアンの海でお手紙を拾ったので返事を書かせていただきました。
私は、アレインの国で商売をしている家の娘になります。
よろしければ、私と文通友達として交流していただけませんか?
お返事待ってます。
内容を見て思い出したのは一年前、当時、都で流行っていた劇の中に出てきたワンシーンを真似してなんとなく海に手紙を放ってみたことだった。
「あの手紙かぁ…。まさか拾われてるなんて!」
さっそく返事を書こう。そう思い立つと、途中で羊皮紙とペンを買い、勇者は足取り軽やかに宿屋へ戻った。