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お手紙ありがとう。


魔獣の討伐と言うことですが、私にはよくわからないですが、とても危ないということだけは分かります。

どうか、無事でいてください。命を落としてしまったら元も子もないのですから。

出来れば、魔族も人間も争うことがなければいいのにと思います。

それと国の様子を教えてくれてありがとう!

前にも言ったかもしれないけれど、私は魔界から出たことがないので他の国のお話はとても面白いです。

そちらはとても過ごしやすそうですね。こちらは空には常に雲がかかっていて晴れることはありません。

でも寒かったり暑かったりはしません。魔界でも人間界に近いからかな?

奥地に行くと黒い溶岩が絶えず流れていたり、灰色の吹雪が止まない永久凍土の土地があったりします。

私の住んでいるところは黒い森が周りを囲み、樹海になっています。

近くには魔王様のいる町があります。そこで普段は商売をしたりして生活してます。

こちらにはあんまり甘いものがありません。だから、君の贈ってくれた飴はとても甘くて美味しかったです。

こっちには特に名物になるようなものはありませんので各地で交易して手に入れたものしか送れません。

あんまりいいものじゃなくてごめんね?

今度はこれから魔界に来るのであれば暑い国を通るだろうと思って水で編んだマントを送ります。

暑さで体調を崩さないように気をつけて。

君の無事を祈っています。



「これが……」


勇者が手紙についてきた袋を開けると黒色の艶のあるマントが滑り出る。

触ると滑らかでひんやりと気持ちいい。


「また、すごいものが来たな。それ、魚人族が作る水織物だろう?こっちじゃ滅多に手に入らないぞ。」

「そんなにすごいものなんだ……」

「まず、魚人族と取引なんてほとんどできないからな。ただ、なんで黒色なんだ? 確か透き通るような青だったと思うんだが……」


マントを見て首を傾げる聖女。


「素材の違いとか? 魔界の海って黒かったりして」

「かもな。着てみたらどうだ?」

「うん」


マントを羽織ると中は丁度いい温度へと保たれているようで非常に快適だった。


「すごいね。これ、ここだと寒いかなって思ったけど着てみると丁度いいよ!それに、なんだか身体も軽い感じだし!」

「マジかよ……できた嫁だな、おい!」


茶化すように聖女が言ってくる。


「よ、嫁じゃないよ! 友達だよ!」


その言葉に狼狽える勇者に


「うるさい。そんないいものお前だけが貰えるなんてずりーぞ!それに、どうせ憎からず思ってるくせに」


その言葉に頬を赤くする勇者、


「そりゃあ、いい子だってのがわかるけど……魔族の子だし、顔も知らない相手なんだよ?」


勇者の言葉に嘆息して


「おいおい、今更そんなこと言うのか? お前はそんな胆の小さい男だったか? 嫌われたくなかったんだろ? ならもう決まったようなもんじゃねーか。……まぁ、好きにしな。嫁にするもしないもお前の自由だからな。とりあえず、その子泣かすなよー?」


手をひらひら振りながら部屋を出ていく。


「勝手なこと言って……」


聖女が出て行ったあと、手元にある手紙に再度、目を落とす。


「そりゃ、いい子なのは分かってるし、僕も今まで生きてきた中では好きな子だと思うけどさ……」


まだ見ぬ手紙の子への思いはとても手紙で伝えていいようなものではない、そう思っていた。

それに……。


「もし全身が溶岩とかだったりしたらそれだけでアウトだもんなぁ……」


溶岩の塊や氷山が迫ってくることを考えると少し、怖くなってくる。それでも


「いい子だからなぁ」


これまでの手紙を思い返し、少しだけにやけながらペンを取った。

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