表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雑箱

「なろう主人公は何故、異世界に居続けるのか」

作者: 銀鮭

 私は理系の国立大学生である。バイトの勤務態度は極めて真面目で、人間関係は大学内、バイト先、家庭内どれを取っても良好に見える。

 だけれども、私は社会不適合であることは間違いない。



 1


 すこし、いや、かなり長くなるが、昔話をしよう。私の今に至るまでを簡潔に書くが、簡潔にしてもある程度にはなるものである。そして、私が疑問の回答にたどり着いたのは私の過去があっての話である。



 小学生の頃、私は虐めっ子であり虐められっ子であったと思う。当時の自分自身はどちらの自覚もなかったが。

 虐めっ子であったと言うのは、私がすぐに暴力に頼る性格であったからである。虐められっ子であったと言うのは、クラスで仲間外れにあっていたからである。


「そんな性格であれば当たり前だ」そう呟いた読者、読者がいるかわからないが、そうだろう。


 では、こう書こう。


 私は土方だった父親を馬鹿にされ殴りかかった。私の父を馬鹿にした彼(Aとしよう)の父は某有名大企業に勤めており、それが誇りであったらしい。ともかく、私に殴られたAは泣き、これだから貧乏人はと叫んだ。私は追撃をしようとしたが、居合わせた(休憩中の廊下なので大勢の同級生だ)人に羽交い締めにされそれは叶わなかった。


 羽交い締めにされている間にもAは私に侮辱の数々を口にする。所詮は小学生の言う程度のものだが私も小学生であり、思い通りにならない私は泣き暴れ、場は更に混乱し、やうやく遅れて担任の教師が来た。


 私は職員室に呼ばれ、Aは保健室に連れてかれた。


 説明を求められ、私は「Aが悪い、馬鹿にしてきたから殴った」と言った。なんと簡潔で分かりやすく、馬鹿な言だろうと今こそ思うが、当時は自身の正当性を疑ってなかったし、なんなら羽交い締めにされたことに不満さえあった。私が取り押さえられる理由が無いではないか。


 そんな私を待つのは恐ろしい未来であった。大方の想像のつくものであるが。


 Aの主張はこうだ。「いきなりアイツが殴ってきた。僕はなにもしていないのに!」

 周りの、一部目撃者の主張はこうだ。「私くんがいきなりキレて殴った」

 後に残っているのはAが私に殴られて出来た痣だけだ。


 これを始終みてたわけでもない教師に正しく裁けと言うのは無理がある。


 私の言を信じると、現状被害者確定である(殴られた事実は誰の目にも明らかであるため)Aを嘘つきだとすることになる。第三者が目撃したのは途中からだから、これを証明はできない。これは教師に私の立場で何かを求めるのは不可能だ。なので、その教師は私の言はとりあえず無視し、暴力に関する裁定のみ下すことにする。「なんにせよ、殴った方が悪い」


 その日の夜、私と私の母はAの家に慰謝料と見舞いの菓子を持って頭を下げにいった。形だけ謝る私には、母も同級生も教師もすべてが敵に見えた。


 だが、これがこの事件の良策の一つであるのは間違いないので私は教師にはなりたくない。



 こう書いてなんだが、私が人の悪口を言ってないわけではない。おそらく、私の心ない悪口により深い傷を抱えた者もいるかもしれない。この場で簡単な謝罪をするが、私にとっては「文句があるなら殴る」が手段だったのだ。そもそも、怒らせたいとかいう悪意があったわけではない。(よりたちの悪いものでもあるが)


 たとえば、足の遅い者に足遅いと言い、デブにデブと言い、発育のいい女子(多感な時期)に巨乳と言うのは問題はなく、問題があれば殴ってくるなり言い返してくるなりしてくるもので、言われたものが夜枕を濡らしている可能性は微塵も考えていなかったのである。



 その事実に気付いたのは習い事の合宿でのこと。デブにいつものようにデブと言い、言われたデブ(代名詞としてそのままデブとさせてもらう)は笑顔で返事を返した。当然、そこに問題はないと当時小学5年の私は判断した。次の日の朝食、そのデブは食が細かったので私は熱でもあるのかと純然たる心配をした。ここに、デブと言った私の本質に違いはなかった。


 小学6年の先輩が、怒るでもなく諭すように私に「お前は昨日体型をいじったろう。だからいじられないために食べないんだぞ」と、当然のように二人きりの場面で(露骨に私を呼び出したわけでもなく)言った。この一言の助言(・・)は私の世界を破壊した。悪口の類いに強烈な罪を感じるようになった。私の一言には他人に影響する力があると思い知らされた。


 この先輩は、私の短い人生のなかで最も尊敬する人間の一人であるが、同時にある種恨んでもいる。知らなければよかったこともある。



 2


  私はここまで書いたように、「言いたいことは直接本人に言う」人間であったので、陰口というもの、引っくるめて集団虐めとでもいうものが出来なかった。


 今どきにありがちな話を一つ。


 ―クラスラインを作ったが、クラスには嫌われものが一人いた。なのでクラスラインにも関わらずその嫌われものはいななかった。

 ある日、その嫌われものが入っていない、グループ人数とクラスの人数が合わないことに気づいた私は、その嫌われもの本人にはぶにされている事実を伝えた上で、クラスラインに招待した。―


 これは高校時代に私が実際に行ったことだが、結果は、次の日に嫌われものが2人のクラスラインが作られ、私とその嫌われものはそこそこの仲になっただけという笑い話である。


 陰口というものに理解がない。嫌悪感さえ抱く。おそらく日本人の中では突出して。(ここに書いて投稿することが当時の同級生の陰口である、と考える人間は私以外にいるのだろうか?)



 小学生の頃に戻すが、なので、自分が言われれば(聞こえるように言う陰口とは陰口なのか疑問だが)殴る私は学校からしたら大問題児であった。私からしたら陰口が横行するクラスの方が問題だが、バレなければ、表出しなければ問題では無いのである。また、それを問題とすると今の社会は崩壊するだろうが、今はどうでもいいことだ。


 何度も何度も呼び出しをくらい教師に訴えかけをしていれば、糞ガキの言でも多少は伝わるものである。「陰口言う奴殴ってなにが悪い。直接言わず、人数有利で陰から石投げて卑怯ものめ」


 直接なら石を投げていい道理もないし、石投げられて投げ返すのもあまりよろしくない。今ならそう言える。


 ある日、教師はこう言った。「私くんは体格に恵まれているから直接言えるかもしれないけど、できない子もいる。曲がったことが嫌いなのもいいことだ。大人と真面目な話ができるくらいには思慮深い。ならば、一足先に大人になって馬鹿なことを言ってるなと彼らを許してあげて欲しい」


 その言葉を私は理解し、大人(・・)になった。それ以降、一度もケンカをしていない。暴力という直接的手段を捨てた。



 3


 たぶんそろそろ私が社会不適合者なのがわかると思う。私も最近気づいたことだ。転機はどこだと考えた。他人と私の違いは?


 小学5年のこの2つが全てでないにしろ、原因は間違いなくここだろう。それぞれ別の時期ならよかったかもしれないが、不幸にも同時期に私を変えたのだ。


 特に、後者の「大人になる」をとらえ間違えたのは致命的であった。私は、陰口を聞き流すスキルを得た。ストレスは勿論貯まるが、「陰口をいうのは人間としてまだ未熟であるから」として大人になったのだ。子供の馬鹿なことを聞き流す余裕ある大人。これは、やはり間違いだ。必要ではあるが、足りない。



 グループというものは、陰口で出来ている。というのは極論であるが、真理であると思う。人間が固まるには敵がいる必要がある。専門知識があるわけではないが、直感的にわかることである。陰口の言い方を覚えることが、真に大人になるということだ。


 なぜなら社会は様々なグループの集合であるからだ。



 昔話の続きだ。小6のころの話。


 小学生でもグループは作るものだ。サッカーをやるもの、ドッジボールをやるもの。地区別。親の繋がり。クラスA、B。様々だが、そのなかに一つの女子グループがあった。そのグループは1年から5年まで同じクラスになり続けている女子3人のグループであった。5年間同じクラスにいるだけあって、とても仲の良い3人である。いつ見ても3人でいるわけだ。11年の中の5年もの月日は決して軽くない。真の友情。



 人間とは、日本人とは、特に女とは非常に恐ろしいものだ。



 小6になってそのうちの一人が、別クラスになった。



 4


 あの教師がどのようなつもりで言ったのか定かではない。おそらく、そこに深い意味などないのだろう。たぶん、いい加減喧嘩しないで程度のものだろう。大人になるという意味を過大解釈したうえ、とらえ違えたのはあの時の私だ。つまり、大人になるということはこういうことである。いまだに大学生の私は大人になれないし私以外の大人(・・)を知らないが、彼女らは小学6年生にして大人であった。TOKIOのだれか一人でも「こいつだけを悪者にするな」と記者会見で叫ぶことはなかった。「芸能界ではよくあることだ、なんなら俺もやった。アイドル目当てでふらふらよってきたその未成年にも問題あるし、美人局かよ」※被害者の女性を誹謗中傷する目的のある文章ではありません※


 彼らは、ファンの皆様関係者の皆様にメンバーとして頭を下げる大人である。こいつは許されないことをした、最低だと。30年の一つの歴史の通過点である。



 グループから外れたものに慈悲はない。そして、他のグループは殴り付けるものである。2つのグループに所属して、両の場所でどちらでも片方の陰口をいう人間は珍しくない。上司の前では従順で、居酒屋では同期と上司の愚痴をいい、家では妻に同期の愚痴を言う。その妻はどこに愚痴を言っているのだろうね?まさか子供?はは。



 終


 大人になることはこういうことである。言うも言われるも。社会とは、社会人とは。


 直接は大人的でない。陰口は大人的だ。


 自分が言われていることなど皆知っている。その上で仮面をかぶり、友情とする。なんと、社交的なことか。石を陰から投げ、自分にぶつかり足ものに落ちたそれを別のところに投げる。投げ返せば石の大きさがでかくなってまた投げられるから。陰を見てはいけない。そこにいるのが誰かは知らないふりをするべきである。投げる方法を知らないなどと綺麗事をいうなよ?石に埋もれて死ぬぞ!さぁ、投げるんだ!それみろ、死んだ・・・


 石を投げられたくなければ他人と一切(・・)関わらないことだ。可能であると思うよ。たぶんきっと。

 ちなみに、私は投げる方法を知らないので、投げてるふりをすることにした。石は真上に飛んで再び足もとへ。頭が痛くなるという小さな問題はあるけど、なんとか大人の皮は被れる。



 なろう主人公は異世界で曲がったことをする国王を正面から叩き潰し、それが是とされる。彼らは子供であるため、正面から。悪と正義の二極化のもと。


 彼らはもとの世界で不登校であるがゆえに、社会に馴染めないものであるがゆえに、異世界では活躍できるのである。それはそうだろう。君ならこうなる。「盗賊被害を市長に相談。ありとあらゆる手を尽くし市長に動いてもらう。盗賊はいなくなったが、君は暗殺された。市長と盗賊は繋がっており、小銭稼ぎを邪魔した君は暗黙の見せしめとして殺されたのだ」なにもしないかもしれないが。


 なろう主人公は市長には相談なんかしない。アジトに突っ込み全滅させる。ついでに市長も殺す。市長が唐突に消えた街はどうなるか知らない。市長が悪に多少の自由を与えていた結果、それが悪人の暴走に対しての抑制になっていたかもしれないが、悪くはならない。また出ても上から叩き潰す。盗みしか生き道がない人間もいるだろうが・・・まぁ、平和になる。


 ならば、主人公たちは異世界に居続けるのは当然である。彼らが活躍できるのはこちら側ではなくあちらである。


 私も異世界に居続ける。正面からの手段を失った私は主人公にはなれないが。それでもなろう主人公が世界を変えるのを待つくらいは許されてもいいだろう。気にすることはない、笑い話だ。



 P.S.具志堅用高が20代のアイドルにバラエティー向けお馬鹿キャラだと思われている。お馬鹿キャラというグループに所属しているから、馬鹿にしていい。40、50の司会者が具志堅をちゃかし、それを見て手を叩くアイドルとお茶の間の子供。それを見て笑っている具志堅用高が、いまだに石に埋まっていないのは彼が巨人であるからなのか、それともとうに埋まっているのか、見えない所でどこかに投げているのか。なんにせよ、だからといって投げていいものではないが、それは今の法律で禁止されていない。

私≠筆者であり、当然昔話はフィクションである。

それはそうだろう。私なんていう人間がいたとしても、日本で生きられないだろうから。


TOKIOと具志堅用高も想像上の異世界の人物である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 普通に社会に適合してないか?
[気になる点] んー。… あまりいい言い方ではありませんが。 タイトルと内容が一致していない感が否めません。 なんだろう…後半を無理矢理タイトルに合わせてくっつけたような。 別段、タイトルなんて作者…
[良い点] なかなか面白かったです。 ただグループは「陰口」ではなく「共感」で出来るのだと思いますよ。 同じことで笑い合える。 同じことで怒りを覚える。 怒りを共感して欲しいから陰口や愚痴を言う。 共…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ