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僕と彼女の赤くない糸  作者: アクエリアス
第1章 謎の転校生
9/10

番外編2 小林 宏

 

 俺は小林こばやし ひろし17歳、高校2年生だ。

 現在俺は父親の実家に来ている。

 父親は年に1回、こうして実家に顔を出す日を作って俺たち家族を連れてくる。

 もっとも、来年は俺も受験生なので、次は少し間が空くだろうが。


「でも本当に、なんもねーよな…」


 思わずため息が出る。

 父の実家は大阪の端の方の港町だ。

 そこはすぐそこに海がある。

 だが、それだけだ。本当にそれだけなのだ。

 なので、ほとんどの者は遊び場所は高校には町の外なのだと親父は言った。


「ヒロ、ちょっと夜明ちゃんと遊んであげなさい」


 俺は親父にそんなことを言われ、頷き庭に向かう。

 いとこの夜明のお守りを頼まれる。


 あの子は庭によくいたっけな…。

 庭に出ると、サッカーボールを蹴っている少女がいた。

 その子に俺は声をかける。


「おっす、夜明」

「あっ、ヒロ兄こんちわ!」


 元気に挨拶する少女は朱宮(あけみや) 夜明(よあけ)、小学2年生のサッカー少女だ。

 彼女は元気一杯の小学生、元気が有り余っている。


「ヒロ兄、サッカー教えて!」

「またかよ…」


 彼女は去年からサッカーにハマっている。

 事あるごとに俺にサッカーを習いにくる。

 俺は教えるくらいに上手くはない、高校では部活はやってないし、中学でも3年になってからしか試合に出たことはない。


「めんどくせえなあ…」


 そう、俺はめんどくせえのだ。

 ガキに教えることがめんどくさい。


「ちょっとだけでいいからー!」

「お前のちょっとはなげーんだよ」


 この少女のちょっと、と言う言葉を信じて夜まで付き合わされた事がある。

 それ以来、俺は夜明に苦手意識があるのだ。


「だいたいなんで俺なんだよ、地元のサッカー部員に教えて貰えばいいじゃねえかよ」


 それを聞いた彼女は、キョトンとした目で俺に答える。


「だってヒロ兄、教えるの上手なんだもん!」


 俺が教えるのが上手?

 そんなことはないと思うが…。

 まあ、教えてもらうことの方がこいつらは少ないのだろう。

 去年なんて最初はお団子サッカーやってたしな。

 苦笑しながら、俺は彼女に教えてやることにした。


「ちょっとだけだぞ」

「うん!」


 子供はやはりウソつきだった。



 ---



 晩ご飯を食べて、夜明は寝てしまった。

 俺はやっぱり子どもより寝付くのが遅い。

 大人になったと言うことなのだろうか。


「おう、ヒロ」

「親父、お疲れ」


 風呂を上がった親父と居間で少し話す。


「今日は疲れたろ?」

「ガキはやっぱり元気だよなあ」


 そんな事を言っていると、親父はハハハと笑う。


「お前は手のかからない子だったからな」

「めんどくさがりなだけだけどな」


 そう、単にめんどくさいだけで動きたく無かっただけだ。


「でも、お前は先生とか向いてると思うぞ?」

「はあ?」


 突然の親父の言葉に俺は変な声が出る。

 何を言っているんだ、こいつは。


「どこが向いてるんだよ、どこが」

「いや、夜明ちゃんと話してる時とかけっこう楽しそうだぞ?」


 むっ、そんなことはないと思うが…。

 まあ長年見てきた親父が言うんだからそんなのかも知れないな、思う。


「教師なんてめんどくせえ仕事絶対やらねえよ」

「くく、そうかもしれないな」


 そう、教師なんて面倒くさい仕事はしないだろう。

 俺は適当に生きたいのだ。

 そう考えながら、時間が過ぎていく。


 ---


「ヒロ兄、こっちだよー!」


 次の日に、夜明にまた連れ出されながら苦笑し、もう一度あの言葉をつぶやく。


「ああ、めんどくせえ」

小林…一体何者なんだ…。

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