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僕と彼女の赤くない糸  作者: アクエリアス
第1章 謎の転校生
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第2話 悪夢

 

 現在…

 俺は担任のコバ先に謝られている。


「すまんな…光」

「いえ…先生は悪くないっすよ」


 なぜ謝られているのかと言うと、先ほどの少女の名前は朱宮(あけみや) 夜明(よあけ)


 その彼女を俺にコバ先が紹介したタイミングでなぜか、彼女は怒って職員室から出て行ってしまったのだ。


「それでな…あいつをよろしく頼むけんなんだが…」

「ええっ!?」


 コイツ、あんな態度を取られたのに俺を押し付ける気なのか?

 あんな狂犬みたいなやつを?


「ちょ、嘘っすよね?

 あの態度見たでしょ?

 どう考えても無理でしょ?」


 俺は無理だと、コバ先に言う。


「それでも、頼む!

 気にかけてくれるだけでもいいんだ、

 俺にどんな感じだったか報告してくれるだけでもいい!」


 必死に懇願するコバ先。

 そこまで言うなら、少しくらいは聞いてやってもいいか、と思ってくる。


「わかりましたよ、様子を見てやるくらいなら」

「本当か?

 頼んだぞ、光!」


 俺はコバ先に明日から彼女の様子を見て定期的に報告するようになった。

 あ、マンガ返してもらってない…。



 ー



「ふう…」


 家に着いた俺は、家着に着替えベッドに寝転がる。

 まだ家族は帰ってきていない。

 妹はもうすぐ帰ってくるだろうが、親はもう少しかかるだろう。


「なんなんだろうな、あの子…」


 俺は夜明と呼ばれていた少女を思い出す。

 あんな女は小中と話をしたことがない。

 それ以外で女なんかいただろうか?

 …それ以外だとあの時くらいだが…。


「あークソ…分かんねえ」


 今日は色々あって疲れた気分だ…。

 妹が帰ってくるまで仮眠でもしようか…。

 俺は少し目を瞑ることにした。



 ー



「俺はお前を上に上げることができない」


 なんだこれ…

 中年の男性が俺に語りかけてくる。

 誰だコイツ…いや、

 俺は彼を知っている。

 そして、次に出てくるであろう言葉も。


「俺はお前が上で活躍するビジョンが見出せない」


 俺の、人生で一番の…最悪の日。



 ー



 小さい頃から遊びが好きだった。

 みんなでやる団体のスポーツが。


 最初は鬼ごっこ、次はドッジボール。

 みんなでやる遊びはどれも楽しかった。

 そんなこともあってか、俺がサッカーにハマるまでは時間はかからなかった。

 最初はみんなの中で一番上手くなった。

 次は、少年サッカー団で。

 そうなると、次はクラブチームから誘いがきた。

 そうやって、レベルアップして行った。


 自分でもサッカーが上手くなっていくのが嬉しかった。

 流石に、クラブチームでは1番ではなかったが、レギュラーになってそこそこ活躍していた。


 中学3年生になった春、俺は監督に呼ばれて向かった。

 なんだろう、もしかして上に呼んでくれるのかもしれないと、興奮気味だった。


 結果から言うと、それは戦力外通告だった。


「お前も頑張っているのはわかる、

 だが身体能力の頭打ち、そして身長の伸び悩みが原因だ」


 俺は中学2年から身長が止まっていた。

 そして、運動能力も。


 チームメイトはほとんど俺より身長が高く、

 そして身体能力が少し高い。

 ほんの少しなんだ、ほんの。


 その差をどうしても埋めることができない、

 俺はその日…サッカーを辞めた。


 サッカーを辞めてからは本当に絶望していた、だけど1ヶ月後には他のことをやり始めた。

 他のスポーツ、遊び…だけどやっぱり本気になれなかった。

 やっぱり違うんだ…俺がやりたかったのはこれじゃない、そんな気持ちになってくる。


「あのまま辞めなかったら、どうなってたのかな?」


 そんな気持ちになる時もある。

 だけど、もう遅いのだ。

 俺は、そんな気持ちを押し殺しもう一度目を瞑ることにした。


 ー


「お兄ちゃーん、寝てるのー?」


 俺を呼ぶ声を聞いて、ハッとする。

 やっぱりさっきは夢だ。

 何度も見た、悪夢。


「お兄ちゃーん、いるのー?」


 おっと、返事をしないとな。


「おー、いるよー」


 適当に返事をする。


「お母さんが、今日のご飯カレーだから早く降りてきなさいって言ってるよー」


 どうやら母さんも帰ってきているらしい。

 カレーか、久しぶりだな…。

 カレーを食べてから、明日について考えることにしようと思い、俺は1階に降りることにした。



 ー



 やはりカレーはうまい、最高の食べ物だ。

 しかもカレーは2日目はもっとうまい。

 さらにカレーは…いかん、こんなことを考えている場合ではない。

 なんの話だっけか、カレー…じゃなくてあの女の話か。


「まあ、様子くらいなら見てやってもいいか…」


 あのコバ先が言うくらいなのだ、そこそこ意味があるに違いない。

 まあもっとも、そんな大層な話ではないだろうが…。


 問題は彼女から、出ていたあの『糸』のことだ…。

 あれはなんだ?

 一体どういう理屈だ?

 本人には見えてなさそうだったが…危険性は無いのだろうか。


「考えてもわかんねえ…」


 はっきり言ってこういう時は考えても無駄な場合が多いと俺は思う。

 だからこそ、俺は考えるのだ。

 頭を働かせる、一時だけでも速く動けるように。


「よし…」


 ある程度の方針は決まった、後はどうにでもなれだ。

 そうと決まれば、明日は早い…

 俺は寝ることにした、体力温存だ。

 なにせ、あんな凶暴なやつを場合によってはたしなめたりもしなければいけないからな。


「寝よ…」


 明日からのことを考えると、憂鬱だったが

 俺は眠りについた。

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