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星狩りのレプタイル ー邪眼の蜥蜴と夜空の英雄たちー  作者: 若槻味蕾
第4章「天馬騎士と氷の獅子」
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79. メーデー

「……」


 突然の土下座に理里はあっけにとられる。

 ひたいを地面に付けたまま手塩は続ける。


「本来なら、上司である私が処分を下すべきところ……ですが、私では奴に近づけない。斬撃は防げても空気の弾丸は防げない……

 ですが」


 手塩は語気を強めた。


「あなたの"蛇媓(じゃおう)(がん)"の光なら、遠距離から奴を狙撃することができる。 空気の刃の結界などものともせず、あの裏切り者を仕留めることができる!

 ですから、どうかお願いいたします! そのためならこのテセウス、何でもすると約束する!」


 手塩の声は必死だった。普段の彼からは全く想像できないほど、感情のこもった声で彼は懇願している。

 理里は、まだ理解が追い付かずにいた。


「えっと……とりあえず頭を上げてください」

「なりません。 『うん』と言っていただけるまでは」


 手塩は動くようすがない。


「えっと……ひとつずつ整理しますね。ヒッポノオス……あの長髪の英雄は、綺羅を利用して世界を滅ぼそうとしていると」


「はい」


「先輩は彼を殺してでもそれを止めたい、でもできないと」


「はい」


「それで、俺の蛇媓眼で殺してほしいと……」


「はい」


「……つまり、彼を止められればそれでいいのでは?」


「……はい?」


 手塩が顔を上げた。


「いや、それは違います。私は指揮官として、彼に罰を下さなければ……」

「それ、()()ですか?」


「…………」


 今度は、手塩が言葉を失う番だった。

 理里は続ける。


「いや、俺にはそうとは思えないんですよね。先輩、言葉では『殺してくれ』って言ってるけど……『たすけてくれ』って聞こえるんですよ、俺には」

「……ッ」


 苦笑。


「あなたのような若造に見抜かれるとは……。感情を隠すのは得意だと思っていましたが」

「普段はぜんぜん分かりませんよ? ……けど今回は露骨でしたね」

「わたしもまだまだ修行が足りないようだ」


 手塩は頭の後ろを掻き、姿勢を正す。

 その両目には、既に普段の強固な意志が戻っていた。


「そうです、私は彼を救いたい。

 むろん今回の事件の責任は取ってもらわねばならないが……彼はあまりに哀れだ。しかし私には救えない。

 君には救えますか?」


 手塩は試すように問う。

 その問いを向けられた、蜥蜴男(リザードマン)は……


「……ええ、まあ。

……ひとつ確認したいのですが、彼は――――とか、できます?」


 ひとつだけ質問をする。その問いは手塩が想像もしていなかった内容だったが、


「……確かに、あなたと対峙するならそのような対応をすると言っていましたが」


 それは事実だったので肯定した。

 すると理里は、


「……なら間違いない。

 あんたの友達、きっと俺が『助けて』みせます」


 尖った歯を見せ、笑った。


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