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星狩りのレプタイル ー邪眼の蜥蜴と夜空の英雄たちー  作者: 若槻味蕾
第4章「天馬騎士と氷の獅子」
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78. 決意の懇願

「手塩先輩、どうして」


 満身創痍の手塩に理里が問うと、彼は咳き込みながら答えた。


「我々の仲間、ヒッポノオスが暴走したのです。彼はキマイラを利用し、世界を滅ぼそうとしている。私も珠飛亜先輩も彼に傷を負わされた……ごほっ」


 手塩がふたたび血を吐く。


「だ、大丈夫ですか!?」

「詳しいことはあとで話します。今はこの方の手当てをしなくては」





「……慣れてるんですね」


 理里がブラウスをちぎっている間に、手塩は渡された切れ端を傷口に巻いていく。ぱっくり割れた切り口を丁寧にくっつけ、くるくると手際よく。


「戦で何度か経験がありますから。君の父上との戦いでもこうした手当てはしました。ここまでの大怪我なら普通死んでいますがね」

「……」


 相変わらず嫌味なやつだと思いながら、理里は自分のブラウスを破る。


「そういえば、ヒッポノオスが裏切ったってどういう意味です? 世界を滅ぼすって」

「……彼は、()()()()()()()()()()のです」


 手塩は静かに答える。理里に背を向け、包帯を巻く手を止めないまま。


「……月?」

「狂ったということです。月女神アルテミスの寵愛を受けた……狂気に呑まれた者を、われわれギリシャの文化ではそう言います」


 手塩は手を止めない。スムーズに、包帯を傷口に巻いていく。


「……怪原理里。いや、怪原理里くん」

「……はい?」


 急にかしこまった声に、理里は手を止める。すると、手塩は座ったまま身をひるがえし、

 土下座した。


「ちょっ……どうしたんですか!?」


 戸惑う理里に、彼は、思いもよらない『頼み』を告げた。


「どうか、彼を……ヒッポノオスを、殺してもらえないだろうか」


 雪風が、ふたりの前髪を揺らしていた。


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