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星狩りのレプタイル ー邪眼の蜥蜴と夜空の英雄たちー  作者: 若槻味蕾
第4章「天馬騎士と氷の獅子」
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69. S anthem of Y-CITY


 柚葉市中央部、滝ケ原公園。気絶した理里を抱えて綺羅を探していた珠飛亜は、突如出現した青い炎の獅子に絶句していた。


「なに……あれ……」


 目の前で手塩が獅子に踏み潰された――というより炎でできた足に取り込まれた。助かってはいまい。


(っ、ボーっとしてる場合じゃない!)


 一テンポ遅れて珠飛亜は飛翔する。


(手塩くんが、あんなに簡単に)


 死んでしまった。複雑な思いだ。敵だった、今は味方だった。それより以前は友人だった。そんな彼があっけなく倒されてしまった。

 あらためて、珠飛亜はその犯人、いや犯()を見やる。


「綺羅ちゃん……なの……?」


 間違いなくそうなのだろう。にわかには信じがたい。いくら怪物であるとはいえ、あのか弱い妹が、ここまで巨大に狂暴に変容するなど。


 高さ約百メートル、全長は六百メートル近い。が、それだけ巨大な生物が歩いているのに地面には足跡が残らない。かわりにその足形に道路が凍っている。


 綺羅はもともと『具現化型』の能力者であり、この『青い炎の獅子』の巨体も彼女の意思のエネルギーが蜃気楼を得たものにすぎない。いわば幻影、ただし触れれば凍る幻影だ。


『GGGGGGGGG……』


 その巨大なまぼろしの怪物は、台風が息をするように唸る。


 珠飛亜たちを見つけた様子は無いが、怪物は何かを探しているように見える……しきりに辺りを見回して吼えている。


(どうしよう、これもうわたしたちがどうにかできるレベルじゃないよね?)


 珠飛亜の心に陰がさす。

 仮に吹羅(ひゅら)を連れてきて、これのどこに触れば無力化できる? この巨体から綺羅を見つけ出せるか?


(……いや、弱音を吐いても仕方ない)


 そう、仕方ない。思い直す。それよりも今、自分にできることを珠飛亜は模索する。


(吹羅ちゃんは蘭子ちゃんが迎えに行ってくれてる。スピードならあの子の方が圧倒的に速い。となれば……)


 自分にできることは、


「りーくんを、ゼッタイ守る」


 彼を、守る。誰よりもこの世で大切な、愛する弟を。

 腕の中で眠る理里の童顔を、珠飛亜は決意を込めて見つめた。


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