46. 賢王出陣
数分後、『炎の中心』を除いて爆発的な炎の勢いは収まった。が、上空からその一部始終を見ていた男は生きた心地がしていなかった。
「と、取り返しのつかないことをしてしまった……!」
卜部籠愛ーーヒッポノオスである。天馬にまたがる彼の顔は青ざめていた。
柚葉市の人口は約十三万人、そのうちどれだけ生き残っているだろう。怪原家の一匹や二匹を巻き添えにしたかもしれないが、代償が大きすぎる。
「麗華さんたちは……!」
仲間を思い出し、籠愛は耳元の無線機に手を当てた。
☆
『申し訳ありません、私のミスです……腹を切ってお詫びしたい』
沈んだ声の籠愛を手塩はたしなめる。
「確かに、君が犯したミスの被害は甚大だ。しかし今は責任追及をしている場合ではない」
生徒会室にいた手塩も青い炎の被害を受けたのだが、瞬時に剣の能力で凍結を解除できていた。足元には氷の破片が散乱している。
「今は事態の収束が最優先です。ヒッポノオス、あなたの風で蒼き焔を吹き消しなさい」
鋼のような手塩の声。その揺るがないあり方は、確かに籠愛を奮い立たせる。
『……御意!』
風の音が手塩の無線機を叩いた。
一息つき、手塩は無線の向こうのもう一人にも声をかける。
「麗華さんには、市民の安全確保をお願いしたい」
『もう始めてるよぉ。けど、わたしに助けられるのは意識がある人だけだからね』
「それで充分です。
キマイラの方はお任せください、私も出ます」




