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星狩りのレプタイル ー邪眼の蜥蜴と夜空の英雄たちー  作者: 若槻味蕾
第4章「天馬騎士と氷の獅子」
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40. 恋は諦観姿勢


 恋の味ってどんなだろう。

 怪原()()は近頃、そんなことばかり考えている。


 曰く、「甘ずっぱい」と人は言う。ほんのり甘くて、つんとすっぱい。幸福と不幸、両方に転ぶ可能性を秘めた味だ。


 けれど、どちらかに傾くのは『結果』が出てからで。どちらでもなく、一緒にいるときは甘くて、離れているときは酸っぱい。交互にやってくるから「甘ずっぱい」。


 だとしたら、彼女が大切な()()に抱いているこの気持ちは普通と逆らしい。 ふつう好きなひとは家の外にいて、一緒に居る時間はみじかく、帰る時間がとっても長く感じる。


 けれど綺羅はその逆。学校にいる時間は憂鬱でとても長く、おうちに帰る道は、足取りも軽くてあっという間に過ぎていく。


 そのあと、()()()()が帰ってくるのを、今か今かと待つ。これがまた長いのだ。綺羅のほうが学校が近いし、授業が終わるのも早い。


 そうしてやっと帰ってきた()()()()にかけよって、「おかえり」をいう。笑顔で「おかえり」をいう。()()()()も、それに笑顔で返してくれて、やさしく頭をなでてくれる。それがうれしくて、とっても「甘い」。


 じゅんばんが逆なのだ。ふつうの恋が甘ずっぱくて、寝る前につらくなったりするものだとしたら、綺羅のものは「すっぱ甘い」。お外ですっぱい思いをしてから、おうちにかえると、とっても甘いものが待っている。


 その点、綺羅はしあわせなのかもしれない。だけど、これがふつうの恋とちがうことも綺羅は分かっている。


 ほんのいっときのあこがれ。決して結ばれないことが決まっている、たった一瞬の片思い――


 そう自分に言い聞かせ、綺羅は今日も()()()()に、「おかえり」を言う。


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