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星狩りのレプタイル ー邪眼のトカゲと夜空の英雄たちー  作者: 若槻味蕾
第6章 第3節「追想:新・十二の功業」
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152. Battle 6 THE SCORPION OF FIRE

「殺す殺す殺す殺す、殺すッッ!!!!!!」


 乱撃。


 刃先が乱れ、暴れ狂う大蛇のよう、しかし矢のように正確にヘラクレスの身体を狙う。


『ルピオネの突きがヘラクレスを襲う! しかし先生、雷神化したヘラクレスに物理攻撃は効かないのでは?』

「いや、そうでもなさそうですよ」


 ケイローンの含み笑いが聞こえた途端、


「ぐうッ!?」


 ヘラクレスが脇腹を押さえて崩れる。


「が、あ……!?」

「油断したな! 我が星器(トーレ)"アンタレス"は魂に直接痛みを与えるのだ」


 ルピオネが得意げに槍を構える。


「雷の身体といえど、霊体が雷と融合していることに違いない。その霊体に直接ダメージを与えられれば、肉体がなくとも痛かろうよ」


「く……そんな、ものが」


「しかもこの槍は、当てる度に相手の意思力を削いでいく。神の力を保つことも難しくなる。貴様の『雷神化』の時間を短縮できるわけだ」


 歯噛みするヘラクレスに向けられたルピオネの槍の穂先は、赤く燃えているーーまるであの蠍座(さそりざ)の心臓のように。


『ヘラクレスも物理攻撃が効かないと油断して、槍に当たる前提で攻撃を仕掛けようとしていましたね。新たな力に浮かれてはならぬ、という教訓です』

「手厳しいな、先生……!」


 そうつぶやくヘラクレスの顔は青く、ときおり肉体に戻ろうと明滅する。


「人に戻って死ね、ヘラクレス!!!」


 矮躯(わいく)のルピオネが飛び上がり、身の丈よりも大きな槍を構える。その刃先がいっそう赤く燃え、太陽のように激しく輝く。


「ーー"明星の輝光ポスポロス・ルーサット"!!!」


 流星のように巨大化した炎の槍を構え、一直線の急降下。膝をついたヘラクレスに突進する。


「ーーーー!」


「ヘラクレスーーーーっ!!!!!」


 観客の悲痛な叫びが聞こえる。もはや避ける術はない。


 炎の星の前に、英雄の姿が消えてゆくーー



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