152. Battle 6 THE SCORPION OF FIRE
「殺す殺す殺す殺す、殺すッッ!!!!!!」
乱撃。
刃先が乱れ、暴れ狂う大蛇のよう、しかし矢のように正確にヘラクレスの身体を狙う。
『ルピオネの突きがヘラクレスを襲う! しかし先生、雷神化したヘラクレスに物理攻撃は効かないのでは?』
「いや、そうでもなさそうですよ」
ケイローンの含み笑いが聞こえた途端、
「ぐうッ!?」
ヘラクレスが脇腹を押さえて崩れる。
「が、あ……!?」
「油断したな! 我が星器"アンタレス"は魂に直接痛みを与えるのだ」
ルピオネが得意げに槍を構える。
「雷の身体といえど、霊体が雷と融合していることに違いない。その霊体に直接ダメージを与えられれば、肉体がなくとも痛かろうよ」
「く……そんな、ものが」
「しかもこの槍は、当てる度に相手の意思力を削いでいく。神の力を保つことも難しくなる。貴様の『雷神化』の時間を短縮できるわけだ」
歯噛みするヘラクレスに向けられたルピオネの槍の穂先は、赤く燃えているーーまるであの蠍座の心臓のように。
『ヘラクレスも物理攻撃が効かないと油断して、槍に当たる前提で攻撃を仕掛けようとしていましたね。新たな力に浮かれてはならぬ、という教訓です』
「手厳しいな、先生……!」
そうつぶやくヘラクレスの顔は青く、ときおり肉体に戻ろうと明滅する。
「人に戻って死ね、ヘラクレス!!!」
矮躯のルピオネが飛び上がり、身の丈よりも大きな槍を構える。その刃先がいっそう赤く燃え、太陽のように激しく輝く。
「ーー"明星の輝光"!!!」
流星のように巨大化した炎の槍を構え、一直線の急降下。膝をついたヘラクレスに突進する。
「ーーーー!」
「ヘラクレスーーーーっ!!!!!」
観客の悲痛な叫びが聞こえる。もはや避ける術はない。
炎の星の前に、英雄の姿が消えてゆくーー




