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星狩りのレプタイル ー邪眼の蜥蜴と夜空の英雄たちー  作者: 若槻味蕾
第6章 第3節「追想:新・十二の功業」
153/165

151. Battle 6 至高の林檎

「これでも喰らえぇッ!」


 大地を蹴ったヘラクレスが拳を放つ。


「ハ、受けてやる!」


 ルピオネは一歩も引かず、槍を地面に突き立てて受けの体勢。


『おおーっとルピオネ、『雷拳』を真っ向から受けるつもりだッ!』

『あの体格差ではまず受けきれないと思いますが……』




「ーーーー!」




 がつん、と両者が衝突する。


 かたや雷を纏ったヘラクレスの拳、バリバリと稲妻を走らせ、ルピオネを灼こうと押し込んでゆく。


 だがルピオネの槍も負けてはいない。深紅の闘気をのぼらせ大地に屹立(きつりつ)し、雷神の拳を立ち防ぐ。


「うおおおおおおおおおおっ」


 両者一歩も譲らず、互いに飛び退いた。


「……なかなかやるな」

「貴様こそ!」


 互いにほくそ笑む。


『凄い……ヘラクレスの雷拳を受け切るとは!』

『彼女の新たな力ということでしょうか。人間になっただけであそこまでパワーアップするとは思えませんが……』


 実況が興奮し、解説のケイローンが首をひねる。


「ふ。その疑問にお答えしよう」

「ッ!」


 ルピオネが跳躍し、突きの雨をヘラクレスに浴びせながら語る。


「私はアポロン様の通り道である『黄道』に位置する、

黄道十(エクリプティク)二星将(・デュオデキム)』の一角! その栄誉として、"至高の林檎"を与えられたのだ」


『ーー至高の林檎だと!?』


 ガタン、と木彫りのケイローンが飛び上がる音が会場に響く。


『えっと……それはそんなに凄いものなんですか?』


 実況が聞くと、ケイローンがまくしたてる。


『凄いなんてものじゃない! "黄金の林檎"の中でも幻の、三百年に一度実ると言われている実……! それを食べた者はゼウス様の御子みこと同等の力を得ると言われているのだ!』

『なんですとお!?』


 実況が泡を吹く。


「ゼウス様の御子っていうと……アレス様やアテナ様だが」

「オリンポス十二神と同等の力、ってことか……?」


 観客席がざわめく。


『神々は古いほど強い……そして古き神の血を引くほど強い。その力を血統の関係なしに与える禁断の果実だ。これは天界の勢力図が揺るぎかねんぞ……!』


 ケイローンの声が震えている。


「ふっふふ、どうだ。いま貴様の前に立っているのは、かの十二神と同等の力を持つ存在なのだ。恐れおののくがよいわ」


 槍を構えたルピオネが舌なめずりをする。


「いくら貴様でも敵うまいよ。何せ貴様はもともと半神、人間の血が混じっているのだから!」

「……ふ」


 槍を得意げに向けるルピオネに、ヘラクレスは、嗤う。


「……なにがおかしい?」


 ルピオネの眉間にシワが寄る。だがヘラクレスは、不敵に金髪をかきあげる。


「神か人か、など関係ない。俺は人の身だが、神さえ手を焼いた数々の敵を討ち滅ぼしてきた」


「……それがどうした」


 ルピオネが問う。


 ヘラクレスは答える。


「生まれ持った力、それは本当の強さではないのだ。ただ不撓不屈(ふとうふくつ)、一心不乱に走り続けることで、(オレ)は強くなる。


 (おのれ)のため、そして(おのれ)の大切なもののために。運命を乗り越えようとする意志こそが、(オレ)の強さだ」


「ハ、貴様の精神論など知ったことか。

 人は、神には、勝てん!」


 ふたたび、ルピオネの姿がかき消える。



 だが、



「ーーーー!」



 突き出された槍の穂先を、ヘラクレスは指二本で止めていた。


「そう嘲笑った奴らの鼻を、己は何度だってへし折ってきた。

お前の小さな鼻も、その一つに加わるのかな?」


 ルピオネのあどけない目が憤怒に歪む。


「貴様ァアーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」

「来い! 互いの()()で、決着をつけようぞ!」

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