143. Battle 3 LIGHTNING BOLT
「いや、反則であろう!!!!!」
ヒュドラが絶叫した。
「聞いてないし! そんなん我聞いてないし!」
「ふはは、戦いに想定外は付き物よ!」
「想定外すぎるわ!!!!!」
哄笑するヘラクレスにヒュドラがツッコむ。
「こっちは常人のお前を想定しておったのだ! そんな覚醒など誰が予想できるかーーーーッ」
「己も知らなかったんだがな、どうやら己は"神"だったらしい。だが……」
相貌を変えたヘラクレスが、ごふう、と黒い血を吐く。
「お前の毒は、まだ効いている……急がねば」
「いや急がんでいい!! そのまま動くな!! そうすれば我勝てるから!」
「そう簡単に勝ちを譲る相手だと?」
「……思わぬが! ええい、やはり戦うしかないかーーッ」
やけくそとばかりにヒュドラが毒液を吐きかける。しかし、
「ーーフンッッ!!!!!」
ヘラクレスの体から雷が放たれ、その毒液を撃ち落とす。
「……なんじゃそりゃーーっ!!!」
「この己の新たな力、『雷纏』! 身にまとった雷を自在に操ることができる……我が父ゼウスより受け継ぎし力、受けてみせよ!」
ごう、と一本の雷がヒュドラに向けて放たれる。間一髪飛び退いたヒュドラが居た場所が黒焦げになる。
「くっ、貴様も飛び道具を持ってしまったか! 遠距離からチクチク毒を浴びせかける我の計画がぁ!」
「往生しろ、ヒュドラ!」
ばりばり、とヘラクレスの巨体に電気が溜まっていく。
「くうう、このままではやられんぞお! 我も星将の一角、ヘラ様から賜った星器がある! くらえ、●●ーー」
「"雷 拳"!!!!!!!!!!!」
「ぐわあああああああああああ!?!?!?!?!?」
跳躍したヘラクレス、その雷を纏った拳がヒュドラの身体を撃ち抜く。ヒュドラの口元に顕現しかけた剣のようなものが、全貌を現さずに崩壊する。
「うぐおおおおおお、だが我は不死の毒蛇、この程度で滅び去るものかああああ」
「どうかな……!」
ヘラクレスがニヤリと嗤う。
雷がにわかに勢いを増す。
「塵と消えろ、ヒュドラ!」
「うごああああああああああ!?!?!?!?!?」
灼かれていく。灼かれていく。ヒュドラの体が、ヘラクレスの拳が貫通した胸から焦げ落ちていく。
「どこまでも再生するというのなら、再生できぬ塵まで破壊してしまえばよい! なぜ死ぬ前の己は気づかなかったのだろうな、わっははは!」
「脳筋にも程があろうがあああああああ!!!!!!!!」
爆散。
ひときわ大きく輝いた雷が収まったとき、ヒュドラの体はもうそこに無かった。
「嘘、だろ……!」
黄金の庭園で見ていたラードーンは驚きを隠せない。
「ヒュ、ドラ……!」
観客席で見ていた大蟹カルキノスも、呆然とヒュドラが居た場所を見つめるだけだ。
『第三回戦勝者、ヘラクレス!!!!!』
無慈悲なアナウンスが、闘技場内に響いた。




