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星狩りのレプタイル ー邪眼の蜥蜴と夜空の英雄たちー  作者: 若槻味蕾
第6章 第1節「黄道十二星将」
136/165

134. 真実

「うわあ!?」


 どさどさどさ、と理里たちは固い床の上に落ちた。


「いたい……」

「ああ……」


 大丈夫か、と末妹(綺羅)を気遣う気力さえ理里には無い。

 辺りは暗く、周りがよく見えない。部屋の中心にひとつだけ蝋燭が灯っていて、床に数々の点とそれを繋ぐ線が描かれているのが分かる。


「いってえ……ここどこだ」


 落下の衝撃で希瑠が目覚めたようだ。恵奈と吹羅はまだ気絶している。


「……兄さん! 起きたのか」


 理里が少し遅れて驚くと、希瑠は頭を掻きながら起き上がる。


「まだ腹が痛てぇ……テセウスに刺されたのが効いてるな」


 往魔邸潜入作戦の際、希瑠は手塩に敗北して腹に傷を受けた。しかし、手塩はなぜか希瑠にとどめを刺さなかったため、希瑠はどうにか自力で自宅に戻った。家に着いたその瞬間に倒れ、そのまま今まで寝ていたのだが。


「なんだろう、すごく長い夢を見てたような気がするぜ……」

「希瑠おにいちゃん、おきたの……」


 綺羅はどうでも良さそうだ。


「ごほん。そろそろいいかな」


 聞きなれない、かすれた声が響く。

 カルキノスが少し苛立ったようすで立っていた。


「ああ……? お前、誰だ」

「俺の胸から出てきた奴……」


 理里はそうつぶやく。


「あ? お前何言って」

「そう、僕は彼の中から出てきた。彼の、心の中からね」


 カルキノスは興味なさげにあさっての方を見ながら言う。


「……イマジナリーフレンド的な何かか?」

「違う。聞いたことはないか、『魂の中は無限』だって」

「ああ、確かアンドロメダが……」


 理里は、アンドロメダに食事を持って行ったときの事を思い出した。


「星座の英雄は、魂……つまり霊体の中に自分の星を持ってるんだってな。それを自分のエネルギー源にしてるとか」

「そう。僕は君の魂の中に居た、怪原理里」

「なんだってこいつの中なんかに……いや、そもそも何者なんだよお前は。ここはどこだ。逃がしてくれたのは嬉しいが、オレ達をどこに連れてきたんだよ」

「質問は一つづつにしてくれないか、ケルベロス? 答える側が処理に困るだろ」

「なんだと?」

「……希瑠おにいちゃん、こわい」

 

 綺羅がつぶやくと、希瑠はハッと目を開いて押し黙った。


「すまん……」

「カルキノス。話を進めてくれ」


 理里が促すと、カルキノスはうなずく。


「順を追って話そう。

 まず大前提として、僕は君たちの味方じゃない」

「は?」


 理里は目を点にした。


「だったらなぜ俺たちを助けた? 意味が分からない」 

「厳密に言うと、そこに倒れているヒュドラの味方だ。それ以外はどうでもいいと思ってる。ただ、ヒュドラが君たちのことを好きだから、助けただけだ」

「爽やかな顔して意外と自己中だな……吹羅はどこでこんな奴とコネクションを持ったのか」

「……だ、だったら、なんでカルキノスさんはひゅらのなかにいなかったの?」


 綺羅が問うと、カルキノスは苦い顔をした。


「仕事、だったからだよ。彼、怪原理里の中に居るのが」

「おしごと?」

「俺の魂の中にいるのが仕事? 意味が分からない」

「居るだけが仕事じゃない。君の中にある大事な物を守るのが仕事なんだ」

「大事な……物」


 禁断の力。確か、彼はそう言っていた。


「この左目……というわけじゃないんだよな」

「ああ。その左目は、君の力の発露のひとつにすぎない。君が元々持っているポテンシャルはもっと大きいからな。

 だが、僕が守るのはその君自身の成長性ではない。もっと確実に存在する、君の中の『宝』だ」


「?」

「もったいぶるんじゃねえ。要点を早く言えよ」


 綺羅が首をかしげ、希瑠が急かす。

 だが、カルキノスは理里だけを見て告げる。


「ああ、話そう。これを知った時、君は全ての真実を知ることになる。

 なぜ、君だけが最弱のリザードマンだったのか……そして、君の正体を」

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