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126.神々の思惑・答

「怖いからだよ、テュポンが」


 藤色の目と髪をした青年神……ヘルメスは、天使に向かって答える。


「怪原家の誰かを殺せば、直接手を下した者のところにテュポンが仇討ちに来る。僕たちはそれを恐れているんだ。だから誰も動かないし、全部英雄にやらせてる。天界軍を指揮するアレスでさえテュポン捜索にはかかわっていない」

「お言葉ですが、それはあまりに無責任かと……」


 天使の問いをヘルメスは鼻で笑う。


「何とでも言えばいい。私もテュポンは恐ろしいのだ。アレを目の前にして怖気づかない生き物はいないだろ。神王ゼウス様でさえな」

「しかし、ゼウス様は十五年前を含め、2度テュポンに勝利されています。たとえ同格の脅威であるとはいえ、そこまで恐れる必要は……」

「うん、父上はそこまで無責任ではないし、テュポンと戦う覚悟も力もある。だからテュポン案件の指揮は全て父上が行っている。……だが、どうも父上はこの件には消極的なんだよね……自分では手を下したがらないし、怪原家にも大した戦力を送っちゃいない。

あのエキドナに懸想でもしてるんだろうか、ハハ」


ヘルメスの苦笑を天使はバツの悪そうな顔で見るしかない。


「しかしまあ、これからはそうもいかなくなるだろ。なにせ第二のメデューサの誕生だ……怪原理里は明確に世界の脅威になった」


 広い寝台の脇に置かれたテーブルから、ヘルメスはブドウを一粒ちぎって眺める。


「メデューサが相手なら……こちらが切るカードは(ペルセウス)しかいない。神話の戦いの再現さ」


 つまんで掲げたブドウの粒を、ヘルメスは握り潰す。


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