表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/165

107. QUEEN’S BATHTIME

《麗華の城 7階》


 他方、恵奈により侮蔑の視線を贈呈された城の女帝は、


「あ~あ、バカだよねあいつら。よりによって一番警備の厚いウチに攻め込むなんてさあ」


 すべらかな裸体を泡の湯に浸らせ、悪態をついていた。普段ツインテールにしている桃色の髪は、今は頭に巻かれた白いタオルに納まっている。

 ここは麗華の城の7階・大浴場。古代ローマのネロ帝が築いたとされるテルマエさえも彷彿とさせる、直径一〇メートルはある浴槽に広がった泡風呂につかり、麗華はどこへともなくつぶやいている。


手塩(テッ)ちゃんの家とか小さいんだし、あいつらの力なら一撃で吹っ飛ばせるでしょ。なんでわざわざ難しいところから狙うかなあ……しかもおふざけ気分でコスプレまでしてさぁ」


 大浴槽のへりには身体を流す役の侍女がふたり、薄いベールのような白い水着だけをまとって立っている。しかし彼女らは微動だにせず、麗華の言葉に返すこともしなかった。


「それともあたしが一番弱いとでも? だとしたらとんだ不敬と見込み違いよのう……薄汚い畜生どもめが」


 バシャッ。

 麗華が水面を殴りつける。白い泡が穴をあけ、透明な湯があらわになる。


「この不敬、どう落とし前をつけてくれようか……のう、我が愛しき人(アマン)?」


 問うた先、泡の海に座していた一人の男(・・・・)は、ニッと笑ってこう云った。


「御随意に、リュディアの女王よ。あなたさまの御為であれば、この(オレ)は骨を砕き身を尽くす所存」


 男が頭と半身を下げると、ざあ、と泡の海面が割れる。彼の大きさ(・・・)には、この常軌を逸した大浴場ですら耐えかねた。


「フ……期待しておるぞ、ヘラクレス。貴様が(わらわ)に残した"借り"、今宵こそ返してもらおうではないか」


 女帝が嗤う。稲妻の髪の巨漢は、ただ達磨のような瞳を閉じて頭を上げずにいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ