第4話 コンテニュー
ーー悪戯の神「ロキ」
その名は「閉ざす者」や「終わらせる者」の意で、他にも「トリックスター」や「変身者」などの呼び名がある。
北欧神話に登場する悪戯好きの神で、神々の敵であるヨトュンの血を引いているという……。
そんな自分には全く接点のない神が一体なんの用なのか。
ましてや、ロキは神なのだ。
自分は純粋な人間で、神の目に止まるほど高貴な人間でもない。
ロキの目的がなんなのか全く見当もつかず、天理は、少し恐怖にも近い不信感を抱いていた。
「ふむふむ。不信感を抱くのは当然だけど、そんなに怖がられると僕もちょっと傷つくなぁ…。」
天理が、この神からの招待に何の意味があるのか考えていると、ロキが悲しげに話しかけてきた。
「僕は君が思っているほど邪悪な神じゃないし、別に悪さをするために君を呼び止めた訳でもないから、嫌いにだけはならないでくれると嬉しいかな。」
「あはは…」
と切なそうに話すロキを見て天理は、
(たしかに悪い神ではなさそうだな。)
と、少し安心をした。
「わかった、俺も君が嫌いだと思っているわけではないんだ。ただ、なんの縁もない神さまがこうして俺を呼び止めるほどの用だなんて、一体なんなのか見当もつかなくてさ。なにか悪さをされるんじゃないのかと、疑り深くなってたんだよ。」
ロキは、天理がロキに向けた感情が敵意などではない事を伝えると、少しホッとしたようだった。
「ともあれ、俺がここにいる理由。君が俺を呼び止めた理由がわからなければ、君の用も済まないし、俺の頭もモヤモヤしたままだ。一体君のような神が、俺のようなただの人間を招くほどの用がどんなものなのか…。教えてほしい。」
「そうだね、僕の方から呼び止めておいて訳も伝えずごめんね。僕が君を呼んだのは、君に興味があったから。それだけなんだ。」
ロキの表情が、これまで見せなかった真剣なものへと変わる。
「僕も昔、生まれやこの性格も相まって周りからいろんな事を言われていたからね。君たち人間界を眺めてる時に、ふと君を見つけてね。少し同情しちゃったんだよ。」
まるで、子供を見るような慈愛の目を見せたロキを見て気づいた。その幼い姿から、天理よりも年下かと錯覚してしまっていたが、彼女は神なのだから年齢も見た目通りとはいかないだろう。
「んんー。君いまちょっと失礼なことかんがえなかったかなぁ?
まあ、たしかに僕は君の何十倍、何百倍も生きているけど。」
ロキは天理の思考をよんだのか、歳のことを気にされて少しむすっとした。
「話が逸れたね。とにかく、君を呼んだのは僕個人のくだらない理由で、そんなに大層な目的なんかはないってことだよ。」
「そうか、なんかありがとう。意外にロキはいい神様なんだな。最初の心配は杞憂だったらしい。」
天理はロキの話を聞いて、はじめにロキに対して抱いた感情を反省していると、ロキが複雑そうな表情を浮かべて話を続けた。
「だけど、いくら同情して君を招いたとはいえ、なんの代償も無く君を神の元へは連れてこられないんだよ。」
ロキは何か口にする事を躊躇っているようだった。
「…君は選ばないといけないんだ。」
選ぶ?
天理は、ロキが一体なんのことを言っているのかわからないが、ロキの言葉を黙って待った。
「僕は君に試練を与えなければならない。」
その言葉を口にした途端、ロキの表情が冷たいものへと変わり天理に緊張が走った。
「ーー君には異世界で新たな人生を歩んでもらう。」
やっと書けました…!
第4話‼︎
ここから天理の新たな冒険の幕開けです!
次回からやっとあらすじの先に行けますよっ(笑)