表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/6

第3話 悪戯《あそび》の神

 突然の出来事に、天理の思考は完全にフリーズしていた。


 当然だろう、たしかに自分は命を絶ったはずなのだ。


 なのになぜ、いまだに意識があるのか。


 なぜ肉体が無傷なのか。


 そして、たしかに自分の家に居たはずなのに、どうしてやめたはずの高校の教室にいるのか。



 ーー何より、この少女は一体誰なのか?


 挙げればきりがないほど疑問が湧いてきて、天理の頭を埋め尽くす。


 天理が現在の状況を理解できずにいると、少女がこちらへ歩み寄ってきた。


「やあ、石上 天理くん。まだ状況が飲み込めていないようだね?」


 少女はどこか幼さを感じるものの、思わず見蕩れてしまうほど容姿が整っていた。


 肩にかかる程度まで伸びた美しい銀髪は、三つ編みをして後ろでまとめてある。

 左目は水面に写った夕焼けのように澄んだ赤色、右目はまるでサファイヤのように透き通った美しい青色のオッドアイ。

 頬には矢印のような模様が描かれていた。


「君の困った顔を見ているのも楽しいけど、早く要件を済ませたいから僕が説明してあげよう!」


 少女が体を半回転させながら得意げに指を鳴らすと、突然宙に映像が投影された。そこには、自分の亡き姿が映っていた。


「ご覧の通り君はすでに死んでいる。君の自殺は成功したということだ。」


「そうか、やはりここは現実とは別の世界ということか。俺がすでに死んでいるとすれば、どうしてーー」


 疑問の答えを求めて言葉を続けようとすると、少女がそれを遮るように話し始めた。


「あーー、君が何を聞きたいかはわかってる。面倒だけど、君が疑問に思っていることを順を追って簡単に説明していこう。」


 少女は気だるげに教室の前にある教卓まで足を運ぶと、黒板に置いてあったチョークに触れた。

 すると、少女が触れたチョークは、ひとりでに動き始め、黒板へ文字を書き始めた。


「ふーん、意外だねー。僕がさっきからしてる事って君たち人間からすると有り得ないことだから、少しは驚くかと思ったけど。その辺り冷静なんだね、君は。」


「まあ、冷静というよりも状況の理解が追いつかなくて、思考停止しかけてるだけだ。驚いてないってよりも、驚けるほど頭が回らないってところか。」


「そうなんだー。そう言ってる割に、自分のことは客観的に見てきちんと分析できてるみたいだけど。まあいいや。じゃあまず一つ目の疑問から。」


 天理は少女に何も言っていないが、少女は天理の心が読めるのか、天理の疑問に対して答え始めた。


「まず、何故死んだはずの君に意識があるのか。これは簡単だ。僕が死後の君の魂を呼び止めているからだ。」


 薄々感ずいてはいたが、今の天理は幽霊のような状態ということらしい。


「そして、二つ目の疑問。これは三つ目の疑問の答えでもあるが、君の肉体が無傷なのは、この世界に呼び込む時に、僕が君の魂に仮の肉体として生前の君の肉体を創り与えたからさ。」


「そして、三つ目の疑問は今言ったこととほとんど同じ理由さ。この世界は僕が作ったものだ。現実世界とは隔離されている。当然僕の意志でどんな場所でも、人間でさえも創造可能さ。まあ、この風景にしたのは僕の趣味みたいなものなんだけどねー。」


 恐らく彼女は天理の心が読めているはずだ。

 すべてわかった上でこの風景を選び、天理を招いたのであろう。


 そして、彼女はそれを面白がっているのである。


 天理は、この少女の残酷で狂った心のあり方に恐怖すら感じていた。


「そして、最後の疑問。」


 最後の疑問ーー。

 それは恐らく、この少女の正体が一体何者なのかというものである。


 少女は、少し考えるような素振りを見せたあと、何か企んでいるかのような笑みを見せながら答えた。


「僕はロキ。悪戯(あそび)の神をやっているんだ!」

こんにちは、Zonoです!

やっと物語に進展がありましたね(笑)

次回も気合いを入れて書いていきますよっ!

ちなみに作品更新のペースは、1日1話を目標に頑張ります(^^)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ