第2話 神の招待
ーー何度もあの目が、あの光景が脳裏をよぎる。
嫌という程見てきた失望の念を宿した目。
その目を見るだけで、何も言わずとも思っていることはわかる。
「なんだよ、お前そんなに大したことなかったのかよ。」
そう思われるのが嫌で、今まで必死に努力してきたのだから。
知らぬ間に背負わされた神童という名の看板とともに。
だが、その努力をやめ、神童という看板を捨てた俺は、もうあの場所にはいられない。
当然だ、物事において長い時間を掛けて積み上げることに対し、壊すのは一瞬であるように、努力をして保つよりもそれをやめて底辺に落ちるのはすぐなのである。
それは即ち凡人未満に落ちるということだ。
そんな自分は、以前と同じ暮らしができる筈がないのである。
たとえ再び努力をしてどこへ行こうが、一度かけられ、発動してしまった呪いにも等しいそれを解くことは出来ないのである。
ーーあいつ、今〇〇してるんだってよ。
その言葉で全ての説明はつく。
一度裏切られた者達の思考は一つに固定される。
それは、何をしても全ては、順当に行かなかった時点で失敗した結果だと思うことだ。
つまり、俺、石上 天理は神童という看板を捨てた時点で、今度は永遠に捨てられない、失敗者という看板を背負ったのであるーー。
ーーー
「それじゃ、行ってきます!」
音羽は、早朝に大きな旅行用バッグを持って元気よく合宿へ向かった。
「おう、いってらっしゃい!」
精一杯の笑顔で見送った。それが兄として最後の務めだと思ったからだ。
音羽が去って、誰もいなかなった家の中は怖いくらいに静かで、普段は耳にすることがない、ドアや壁の隙間から風が抜ける小さな音が聞こえた。
「さて、そろそろ始めるか…。」
天理は、そう言うと、紙とペンを持ちしばらく何かを書いていた。
ーー遺書である。
そう、天理は今日1人になることを知った時点で決めていたのだ。
命を絶つことを…。
とはいえ即座に命を絶つ程の勇気はなく、家の中を少し見て回り、思い出に耽っていた。
時は経ち、思い出に耽るのも一段落ついたところで、これが最後だと改めて思うと胸の奥から込み上げてくるものがあった。
しかし、それよりもこの耐え難い現実と向き合って生きていくことの方が、何倍も辛く思ったため、決意は揺らがなかった。
そして、その時はきた。
天理が住んでいた家は高層マンションの一室だったため屋上から飛び降りることを選んだ天理は、遺書を残し、
命を絶ったーー。
…筈だったのだ。
しかし、目を覚ました天理が目にしたのは見間違えることのない、かつて通っていた高校の教室だった。
そしてーー。
「やあ、こんにちは石上 天理くん。前々から君に興味があったから、呼び止めちゃった!」
そこには見たことのない少女が立っていた。
如何だったでしょうか?
「神童は神のいたずらで強制続行させられました。」第2話!
ここから大きく展開が変化するので、気合いを入れて書きました!
ブックマークをして、次話も見ていただけると嬉しいです(^^)
ちなみに、題名が長いので略名なども募集したいと思っていますので、コメント欄でご意見お待ちしてます!