68話
食糧や治療を行う人員の問題。
慰安所を救護所に急遽変更する案。
並行して通常業務を行い、今後の為に求人を進める件。
いずれもセルジオにとって、興味を引く面白い話ではない。
返り血を浴びるし、足元に気を遣う作業だし、早く寝させて欲しいと思うだけで頭が動いてない。
テーブルでは白熱した議論が繰り広げられている。
彼らも昨晩から殆ど寝てないのに気力に満ち溢れびっくりである。
セルジオは頬杖を時折カクリとさせながら見ていたが、いつの間にか目を閉じていた。
――――――
セルジオは気が付くと毛布を掛けられ長椅子で寝ていた。
目を閉じているのに周囲の様子がみえる。
坂を上り、食堂の入り口に数名の兵士が訪れたが分る。
彼らにもセルジオが分るらしく、壁を抜けまっすぐ歩み寄る。
バン 壁に何かの当たる音が聞こえる。
古の兵士に比べて靄が薄く、輪郭が曖昧だが、そこに何かが居ると解るそれが、壁や戸から滲むように室内に入ってくる。
クディとレシアが椅子を蹴り上げ皆を庇うように立ち上がる。
ジードと元村長が至近距離で見る幽霊に戸惑い息を殺す。
チャリン・・チャリリン
幽霊は、王国軍の敬礼をする。
靄の中に固形の何かが光り、重力に捉えられポトリと落ちては床で金属音を奏でる。
それぞれが数枚の血で汚れた金貨を足元に落としていく。
初めて見る者たちがその様子を凝視し微動だにしない。
カリカリと予算計算を書類に起こしていく音が聞こえる。
彼女の近くのコップに温かい紅茶が注がれる。
ニーニャとレェブラーシカだけは、あぁいつもの事ねと平常運転で仕事をこなしていた。




