表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
91/256

62話

 食堂の奥、パーテーションで区切られた一角に王国軍隊長:グレゴリアルが居た。


 肌艶のよかった偉丈夫な彼の姿は見る影も無く、目の下に隈ができ俯き加減にテーブルに手をついてセルジオの来訪を待っている。


 テーブルには暖かいお茶の湯気がたなびくが、彼はそれに口にせず、目を閉じ、ただ静かに彼をまっていた。


 ギィ バタン・・・トントントン・・・ミシ・・・足音が裏口から近づき止る。


 「俺に何か御用ですか?」


 「・・・・お待ちしておりました、セルジオ殿。 少しお話をさせてもらってもよいですか?」

 グレゴリアルの拳が強く握られる。

 「貴殿は、このような状況になると予見できて、いたのだろうか?」

 責めるような視線をセルジオに向ける。


 「・・・・えぇ、あ、はい。たぶん彼等が怒るだろうとは考えてました」

 農作業を熟し、手拭で汗を拭きながらセルジオが返答する。


 「では、何故・・・・」

 グリゴリアルが怒気の篭った声で食い下がる。


 「死者を敬い、冒涜するなと伝えました・・・・そして荒らすなとも」

 墓所の様子を思い出し、セルジオの声も素っ気なく成る。


 軽い足音が近づき、テーブルにティーセットとお茶菓子を置く。

 レェブラーシカはセルジオのお茶を持って現れ、一礼し去っていく。


 グレゴリアルはぬるくなった茶を一口すすり、深いため息をつく。

 「はぁ・・・・全ては身から出た錆と言う事か」

 怒気はまだ篭っているが、それは自戒に近い物に変わっていた。


 静かな食堂に朝方の小鳥の声が、二人の気持ちとまったく違ったのどかさを作り出している。

 

 彼はゆっくり立ち上がり、ビシリ!と王国式最敬礼をした。

 そして方膝を付き、下腹に力を込め口上の述べる。


 「この度の非礼の数々、まずは謝罪をしたく参じた。

 そして、ダンジョンの管理移譲の件を白紙撤回したく、先触にて伝えたく思う。

 そして・・・・

 ダンジョン内の兵士の回収を貴殿に依頼したい・・・・


 何卒なにとぞ、何卒受けては頂けぬであろうか?」


 「・・・・」


 グレゴリアルは頭を上げない。

 セルジオのお茶の湯気が緩やかに漂う。



 「はぁ・・・・わかりました。

 で、何名ほど連れ戻ればよいのですか?」


 セルジオの返事は軽い。

 ちょっとした荷物持ちを頼まれた程度にしか考えていない、そんな風な返答だ。

 状況を知らないセルジオにしてみれば、『数名だったら大した事無いか』といった程度にしか考えていない。


 「う、受けてくれるのか?!

 感謝する! セルジオ殿の慈悲に感謝する!!


 戻らぬ者は把握しておるだけで、523人。

 冒険者の数があいまいである為、目下確認中である」

 少し血の気のもどった隈のあるやつれ顔を上げ、セルジオを見つめる。


 ゴン。


 セルジオの額がテーブルに落ちた。

 「・・・・たぶん生きてない? 遺体?、増えてるじゃん。ハハハハ、ハ~ァ」

 乾いた笑い声を上げるセルジオだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ