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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 一章 墓守始めました
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8話


 青年は夢をみた。


 地鳴りが聞こえる。


 地が揺れるほどの行軍の足音。

 由緒ある錦旗を掲げた多くの兵士と、骨の兵士の大群が戦っている。


 隊列は入り乱れ、乱戦と成った戦場の兵士等押されている。

 大きな城の城壁に、何万もの骨の兵士が蟻の様に群り、城のあちこちで火の手が上がっていた。


 城壁上の兵士も善戦しているが城が落ちるのも時間の問題に見えた。

 城壁に骨の兵士が無尽蔵に取りつく。

 骨の兵士は砕かれても蘇り城壁に向かってゆく。


 城壁では死者の兵士は仲間を足場にし、虫が集るように城壁全面を覆い上っていく。

 

 切り裂かれ、串刺しになり倒れる兵士達。

 彼らは数に呑まれてゆく。

 そして殺された兵士は虚ろな瞳に狂気を宿し蘇り、骨側の戦列に加わり戦力を増していく。


 次第に磨り潰されていく生身の兵士。


 そんな、彼らの行く末を現すような暗雲が天を埋め尽くしていた。


 ・・・・


 上空の陰りが厚さを増し、嵐に見られる真っ黒な雲が強風で流されている。

 雲の切れ間に閃光が煌めく。


 ゴロロロロロ・・・・

 雷雲が時折明るく光る。

 次第に感覚の狭まる雷鳴。



 そして、天が裂けた。


 バリリリ ドォオオオン・・・・!

 白亜の城の塔に曇天から太い稲妻が落ちる。


 稲妻は次第に多くなり、いくつもの光の柱が尖塔を打ち砕いていく。


 「あっ」


 セルジオは思わず声を上げた。

 城と、その周辺の地面が無数に裂け、ゆっくりて地の底に落ち、消えていく。

 幾つもの塔が、杭を倒す様に次々に崩れ、城壁を巻き込みながら轟音と土煙を吹き上げた。


 ドドドドドドドドドドド・・・・


 激しい地響きのあと、土煙がもうもう立ちこめ、城影は見えなくなり、城下ごと擂鉢状に沈んた。


 近くの川から大量の水が流れ込んでいる。


 城の在った場所は渦巻く真っ黒な濁流に呑まれ、巨大な濁った湖が出来上がっていく。


 『知ってる、嘆きの湖だ』


 周囲の山の形、湖岸の形状、セルジオの知る村の近くにある湖の姿だった。


 気が付けば、全てが飲み込まれただ静かな湖がそこにあった。



 声が聞こえる。


 「我は夢現ゆめうつつのダンジョンの管理者である。

 当代墓守に告ぐ。

 かつて虐げし墓守にまずは謝罪を。

 血脈が残りし事に感謝を。

 そして、助力を切に願う。


 死が限りなく濃くなり、我が居を埋め尽くした。

 器の在る魂はすべからく絶えようとしている。

 故に墓守が墓を作り、縺れた魂の糸を解きほぐす事を願う。


 メダリオンは許されし者の証

 埋葬されし者の持ち物は墓守に与える。

 弔うべき魂は四百万超、切に請う。


 この約定、努々忘るる事無かれ・・・・」


 湖は靄に消え、霞が人形になる。只黒く、静な死人だった。

 

 象を結んだ、王冠を頭に掲げる骸骨の王が膝を付き、深々と頭を下げる姿が見えた。


 『最初から弔うつもりだけど、すごい数・・・・』


 セルジオは何故か恐れはない。変な夢だと、まどろみの中で思った。

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