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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
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60話

 執務室の窓から見る、真っ暗な畑に不穏な気配を感じる。


 「始まったわね」「はい!始まりましたね・・・・」

 「ふむ、あれが、いにしえの兵士かの?」

 「そうです」

 「セルジオ、改めて言うがお前良く無事だったな・・・・」

 「俺もそう思う」

 「セルジオちゃん、あれが満ちてるダンジョンで平気なのぉ?」

 「なんか、平気な感じです」

 「当主殿はすごいのだな・・・・」


 面々が三者三様の思いで、王国兵士達の行く末を見守る。



 大石のある場所から噴水の様に高く拭き上がる、いつもと違う禍々しい黒い靄。

 夜にもかかわらず、月光を全て吸い込んだそれは、墨を水に溶いた時の濃淡のような、明らかに異質の気配が地面に降り注ぐ。


 靄は風にも流されず渦巻きとどり、人型らしい物を形取り、隊列を組む。

 その数は王国軍の敷く陣よりも広がり、いつしか2万程の影が屋敷の周りを埋め尽くした。


 黒靄の兵の頭が一斉に一点を向く。


 『オオオオオオオォォォオオォォ!!』

 地鳴りのような怨嗟の声が、セルジオ達の神経を逆撫でし背筋に悪寒が走る。

 「離れておっても、これだけの怨念を放つとは、あれは幽鬼悪鬼のたぐいか?!」

 レシアが呻く。

 「恨み辛みが凝り固まって云千年、もうこじらせ過ぎてコチコチになってるのかしら」

 ニーニャも自分の両腕を摩りながら、セルジオの近くにくっ付いて離れない。

 「やっぱりニーニャさんはセルジオさんのこと・・・・」

 レラがナワナワしながらも、同じくセルジオにくっ付く。

 そうなるとレラにレシアがくっ付き、いつの間にかセルジオの所だけハーレム風になっている。

 (一部を除き彼女達は単に怖いだけである)

 「こわいねぇ、お化け」いつの間にかリリルまでセルジオの足にべっとり張り付いている。


 ・・・・


 宿営では、グレゴリアル直属の部下が夜警をしていたが、迫る影にただ頭を抱えうずくまり、悲鳴を上げながら影が通り過ぎるのを、ただやり過ごす事しかできなかった。


 頭の中にだけ聞こえる進軍する長靴ちょうかの音。


 その影が幕舎や兵の中を通り過ぎ、目的の場所へと歩み行く。

 何者も阻むことができない、幽鬼の進軍である。


 神官風の人物が聖印の刻まれた経典とスタッフを掲げ詠唱をおこなっているが、聖印が目の前でズブズブと腐り落ちる。


 そして死霊が彼の耳元で囁く。

 『いまさら静まれと言うか? 起こしたのはお前等ぞ、悔いて我らの本意を知れ』

 呪言を直接耳にした聖職者がゴバッと大量に吐血し倒れ伏す。


 狐目の男の幕営を渦巻くように取り囲む怨霊。

 次々と、見えないが其処にあると感じる事が出来る剣で、心やましい兵士を滅多刺しにしていく。


 兵一人に対し、幽鬼の兵が10人以上で取り囲む。

 嘆願しても聞き入れるはずもなく、虚ろな目を向け見えない剣で責め立てる。


 その痛みは体ではなく心を切り裂く、許してくれと泣き叫ぶ兵士の声が延々と宿営地にこだました。


 ただ恐怖と痛みを与える続ける幽鬼の呵責、朝日が昇る頃、まともに立てる兵は一人もいなかった。

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